迷信

 偏屈で有名な爺さんが亡くなった事は小さな田舎町ではセンセーショナルに報道された。
 亡くなった状態が異常だったからだ。

 頭部が亡くなっていたのだ。それも鋭利な刃物で切られたという訳ではなく千切れた感じだったらしい。

 熊の仕業かと推察する者もいたが、偏屈で町で会う人に言いがかりをつけては『殺してやる!』と叫んでいたのだ。誰かに殺されたとしても不思議ではない。
 当然町の人は疎ましく思い誰も爺さんの家に寄り付く人はいなかった。身寄りもなく、孤独に暮らしていた爺さんが孤独死しても葬儀に訪れる者はいなかった。
 警察が無くなった頭部を探したが遂に見つかることはなかった。

 49日も過ぎた頃から奇妙な噂がたち始めた。

 死んだ爺さんの頭部が枕元に転がっており、それは目を動かし叫ぶのだ。
「殺してやる!」と。

 すると何日目かに本当に亡くなったと言うものだ。しかも爺さんと同じように頭部が無くなっているのだ。
 これは爺さんが自ら頭を体から千切り同じように町の人を殺しているのだと。
 爺さんが町の人間を祟っていると噂が立ち、頭部が枕元に現れるのを恐れていた。
 町に新しく出来た葬儀屋は毎日毎日忙しそうにしていた。

「祟り?そんなのあるわけないでしょう!もう勘弁してほしいですよ…!」
と葬儀屋の人は訝しんでいたが、爺さんの頭部が現れた家は必ず死人が出る事が偶然とは言えなかった。

 夜中、トイレに目を覚ます。暗がりの中電灯の紐を探し立ち上がった瞬間、何か重い玉のようなものを蹴った。冷たく、ザラッとした感触。直ぐにそれは人の頭だと思った。
 部屋の電灯を付けるとそこには何も無かった。あれは爺さんだったのか?だとしたら…。

 突然、何かで頭を叩かれた。意識が遠のく。
「おい、早く頭を千切れ!田舎の人間は直ぐに迷信を信じるぜ」

 それは葬儀屋の声だった。

【蕎麦】自家製蕎麦ソバビリーの温肉南蛮

日曜日。

ふと思い立ち名取市へ赴いた。

なんでもお爺さんが経営する食堂があり、値段が本当に安いらしい。

このご時世普通のラーメンでもワンコインでは食べられない。それなのに半チャンラーメンで600円という価格崩壊だ。それに昔ながらの中華そばを求めてしまうのも年のせいだろう。

遠路遥々やって来ました。中華そばを食べたいがためにここまでやってくるとは我ながら変態の極みである。

その店はここから少し歩いた場所にある。

『玉喜ラーメン』さんです。

このレトロな雰囲気はただならぬものを感じますね!!

さて…

日曜は休みのようですッッッ!!

オーマイガー…途方に暮れた。

腹を減らしたままトボトボと駅に戻ります…ここまで来たのに…運がないというか…まぁ、いつものことだろう。

この近くに食べるところは…あの店に行こう!!

と向かったのが

『自家製蕎麦ソバビリー』さんです!

あの言わずと知れたG系インスパイヤの先駆けラーメン☆ビリーの系列店。

まず店に入るとすぐに手指の消毒をし、奥のレジに向かってオーダーします。種類は多くないのであまり悩まずに温肉南蛮を注文。

呼び出し器を預かり席で待ちます。

腹減ったなぁ~…。

あまり混雑はしてませんでしたが結構待ちますね…空腹時の時間の流れというものはどうしてこんなに長く感じるのか…。

と呼び出し音が鳴りホップステップジャンプで提供口へ。

グッヘッヘッと盆を抱えて猫背になりながら席へ戻る。

おお!大迫力なビジュアル!田舎そば真っ青な極太そば!!そばというよりもうどんだこりゃあ!

出汁はかなり濃厚な味わい!ちょっと塩分の角が立ってて出汁の風味とも言い難いが悪くはない。結構ショッパ系かな。好き嫌いがはっきり分かれる味だと思います。

蕎麦はかなり太い!!いや、これは本家ビリーのラーメンよりも太いぞ!

丸亀製麺のうどんに匹敵する太さ。

まずは一本…ズルル。

モニュモニュ…。

うん、蕎麦の喉ごしは全く楽しめませんね。まぁ、太いから喉ごし云々は的外れだ。

食感はなるほど蕎麦だ。固さはさほどでもなくモチモチというわけでもない。若干の粉っぽさを残し噛めば蕎麦の香りを楽しむことが出来る…と思ったがさほど香りはない。

濃い目の出汁に負けてしまってる感は否めず…だがそれ以上に蕎麦の太さが際立ち腹ペコには大満足だ。とにかくたくさん食べたい人向け。

細く長いのが蕎麦だがこちらの蕎麦は太く短い。豪放磊落な人生を謳歌するが如くがっついて食うのだ。

まるで私のようだ!と思ったが私は細く短く白い白石温麺のような人生なので鼻からため息を放出した。

大きめにカットされたネギが嬉しいね。これも甘くて美味しい。普段は脇役に徹するネギだがここでは主役に抜擢されてもおかしくない存在感だ。ネギだけが際立って美味い!!ネギだけが美味すぎる!!

肉はビリーにしては小ぶりで普通な感じ。甘く味付けされてて出汁との相性はとても良い。でも肉盛りというほど量は多くなくて少し残念な感じ。

最後の一口まで楽しめた。正直、蕎麦通を唸らせるほどかというとどうかはわからないが近所にあったら通いたくなるような味でした。

しかしありそうでなかった極太の蕎麦を提供してくれるなんてさすがはビリーだなと思いました。全く新しいコンセプトの蕎麦が爆誕したわけですね。

ごちそうさま!また来ようっと♪

【エッセイ】どんと祭の唄

どんと祭とは?

宮城県には『どんと祭』という神事がある。

これは正月にやってきた年神様を御神火を焚いてお見送りをするためである。正月飾りを神社に持ち寄りお焚き上げし一年の無病息災を願うというものだ。

私はてっきり全国で行われているものだとばっかり思っていたが、実はどんと祭というものはかなりローカルな地域でしか行われていなかったらしい。

どんと祭を盛り上げる秘策!それは!?

小学生の頃に『こども会』というものがあり、クリスマスの行事に参加していた。

集会所の傍らで大人達がどんと祭について話し合っていた。

「来年なんだがどんと祭盛り上げる方法ねぇが?」と地区長が神妙な面持ちで訊く。

皆は柿ピーをボリボリ食べながら「そうねぇ…」と呟いた。

どんと祭は夕方に火を点けるのだが大体はその日の午前中に正月飾りの山が形成され消防団員は火を放ち遅くまで火の番をするのだ。


一番の盛り上りを見せるのが『裸参り』というもので男達が褌一丁で火の周りを周回するというものだったがそれに勝る催しをしたいと考えているようだった。

そもそもどんと祭など一年に一回しかない。

いっそ牛や豚を一頭買い付けて、どんと祭の火で肉を焼いて食ったらいかがなものかと思ったが、年神様を送り出す神聖な火で肉を焼くなど罰あたりもいいところだから発言するのは差し控えた。

誰も言葉を発せずに柿ピーを咀嚼する音だけが部屋に響き異様な緊張感に包まれていた。

まるでこれからどこかに討ち入りに行くのではないかという雰囲気ではあったが、どんと祭をいかにして盛り上げるかという実にどうでもいい会議である。

それよりはどうしたら早く正月飾りを燃やし尽くし早く家に帰れるかを議論した方が建設的と言える。

正月くらい家でのんびりしたいものだ。

誰もが視線を泳がせ、この不毛な会議を打ち切らせないかとやきもきしていたら颯爽と手を挙げる者がいた。

地区長の息子ナオキである。

「ん?どすた?」とおじさんが訊くと地区長の息子ナオキはまるでナイフが的中した黒ひげ危機一髪のようにピョイッと立ち上がった。
そして、やけに通る声でこう言い放ったのだ。

「歌を歌ったらいいと思います!」

この発言に大人達は目を丸くて池を泳ぐ鯉のように口をパクパクしている。何か言いたげだが言葉が出てこないといった様子だ。

「ほう、歌か?」
地区長の言葉に地区長の息子ナオキは力強く頷いた。
すると一斉に「おおお!」という歓喜の声が上がったが、ただ単に面倒くさくなり早く切り上げ帰りたくなったに違いない。

「で、何を歌うのや?」と訪ねられると地区長の息子ナオキは小さな紙をポケットから出した。小さなポケットに入れるためか入念に畳んでおり広げるのに手間取っている。

そこから手品でも披露して鳩を飛ばすのかと思いきや勢いよく広げた際に折り目からバリッと破け地区長の息子ナオキは「あ…」と呟いた。

「ぼくが作曲してきました!」とこれまたよく通る声で言い放ったのだ。どうやらあの紙に歌詞を拵(こしら)えてきたらしい。

これには大人達も感心せざるをえない様子でお互いに顔を見ては養鶏場の鶏が餌をついばむがごとく頷きあっていた。

「じゃ、歌ってけねか?」と言われると地区長の息子ナオキは周りを見渡し息を吸う。

誰かの喉がゴクッと鳴った。

誰もが柿ピーを食べるのを止め地区長の息子ナオキに注目していた。

そして大きく息を吸うと床に足を叩きつけリズムをとり始めたのだった。

~どんと祭の唄~

作詞作曲:地区長の息子ナオキ

どんとどんとどんとどんとどんとどんと
どんとどんとどんとどんとどんとどんと

(太鼓のリズムのように)

どんとサァーイ♪
どんとサァーイ♪

どんとどんとどんとどんとどんとどんと
どんとどんとどんとどんとどんとどんと

どんとサァーイ♪
どんとサァーイ♪

「終わります!」とよく通る声で宣言すると大人達は我に返りまばらな拍手をした。

地区長は耳が真っ赤で酒が回ったのかチンパンジーのようになっている。

「グォッフォン!ヴェッヴォッ!ええ~…まぁ…いい歌だってけどや…また別な機会に考えっぺ!」と地区長は両手をシャンと叩くと一斉に柿ピーの袋を開ける音が広がった。

こうしてどんと祭は例年通り粛々と行われ、地区長の息子ナオキのどんと祭の唄は披露されることはなかった。

あれから地区長の息子ナオキのどんと祭の唄は披露されることはなかったが、誰もが心の中に残りどんと祭のたびに口ずさむようになったとかならないとか。

【スイーツ】道の駅上品の郷のミックスソフトクリーム

とある日に上品の郷でソフトクリームを食べた話。

 

支那そばや石巻で美味しいラーメンを食べたあとはそのまま北上して河北町へと行きます。

道の駅『上品の郷』です。

上品と書いて『じょうぼん』と読みます。

上品の郷は個人的にお気に入りの道の駅でかつては併設されているレストラン栞でランチバイキングを楽しんだものです。

キャラメルプリン食べ放題!でした。他にも一杯あるんですけどそれが一番好きでした!!

それがにっくきコロナウイルスの影響で無くなりましたが刷新したフードコーナーはなかなか賑わっています。

こちらの道の駅には温泉が併設されているされており県内では珍しい鉄泉となっています。

新鮮なお湯は透明ですが酸化が進むと茶色に変化しますのでその日によって色が違います。使ったタオルはきちんと洗わないと翌日錆びだらけになります。

入浴料は平日550円でかなり安い。休日は750円です。

私の経験上温泉施設は1000円でもいいと思ってる。あまり安いと民度が低くなりますので…。洗面所の場所取りやトイレから浴槽へのダイナミック入浴!など。

でも本当は体を洗う前に一旦入浴してから洗った方がお肌にはよろしいとか。冬にはヒートショックなどもあるので頭や体をシャワーで流してから入りたいものですね。

無料休憩所でのんびり人の流れを眺めて休日気分を味わいます。ここ最近こういう流れで休日は心の中を空っぽにしてしまいます。

いろんな人がいるなぁ~こんなに人がたくさんいるのに自分の人生に関わる人は皆無なんだよなぁ…。不思議だよね。

 

私自身コミュ障ですし…いなくなった時の喪失感がとても辛いので避けてる部分もあります。

併設されているコンビニで肉まんと缶コーヒーを買いましておやつを堪能…って30分くらい前にラーメンを食べたばかりなのに…!

こんなんじゃいつまでも経っても痩せれない!

このままボンレスハムかドラム缶になっちまう!

頭は空っぽなのに腹は満タンです。

そしてメインのソフトクリームはフードコートの奥にあります。券売機で購入。

350円払っておばちゃんに渡します。

んん…正直に言うと私の方が捻り方が上手いと思うな。すたみな太郎で高さ約40センチのソフトクリームを作ったことがある。

チョコミックスです。こちらのソフトクリームはひじょ~うに美味しいですっ!!滑らかな舌触りと濃コクな味わいがたまりません。一緒に舌まで溶けて無くなりそうです。

そうしたら余計なことまで喋らずに済みそうです。口は災いのもとと言います。

たった1日しかない休みを十分に堪能し一週間のエネルギーを補充しました。

【孤独飯】レストランカープルのハンバーグ

世間はあと少しでクリスマスだという頃のお話。

私は日々の労働を終えて空きっ腹で帰路についていた。

なんとなくラーメンという気分ではない。例年クリスマスには一人でラーメン☆ビリーでラーメンを食べているのだ。

鼻息荒くして背中丸めて極太麺を啜っていると脳内ではかぐや姫の神田川か赤ちょうちんが再生されているものだ。

クリスマスも近い。ここは一つシャレオツなお店にするかと車を走らせた。

向かったのは南中山である。泉の長命ケ丘から愛の鐘通りを走り抜けた先にある。

レストランカープル』さんです。

むっちゃオサレな建物なのですぐにわかります。しかし、駐車場は狭いので要注意です。

ちょっとおじさんが一人で来るにはハードルが高いお店かもしれませんね。

店内もめっちゃオサレ…。お一人様ですと人差し指を立てるのが恥ずかしくなりますがマスクが透けて見えるくらいの笑顔で出迎えていただき安心しました。

席に座り周りを見ると家族連れやカップルが…隅のテーブルに一人でポツンと座っていると私の席だけネカフェな感じですね。さて、オーダーは…『ミラノ風ハンバーグセット』にしました。

注文し終えるとドッと疲れが溢れでてきました。浦島太郎みたいに老けていくのがわかる。

ぼんやりとしてるとあっという間に配膳されました。

おお、これがミラノ風ハンバーグ!!

めっちゃ笑顔のポテトがいい感じですね!では早速いただきます!

お!!ハンバーグがフワッフワ!こんな感じなのは初めてだ。おからみたいな柔らかさ。

口に含むとフワッと広がる肉の旨味とソースの濃く深い味わい。

歯が無くても食べられる柔らかさ…お、美味しい!ポテトもいい感じに香ばしくて美味しい。

この不思議な食感のハンバーグはここだけだと思う。とにかく柔らかくて口当たりが優しい。豆腐に匹敵する柔らかさ。

これは他のメニューも気になりますぞ。

お店の雰囲気もなんとなく家庭的で温かい。とても安心する空間。

お一人様なのでここは素早く食べてサッサッと退店。またいつかゆっくりと味わいたいものですね。今度は誰かを連れて……

行けるのか?

南中山ということで若干アクセスしにくい場所ではありますがここにしかないハンバーグがあります。とても良いお店なので足を運んでみてはいかがだろうか?