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13.紅い死の微笑み

リュックは岩に激しく叩きつけられて全身傷だらけだった。両手の爪は剥がれ、腕の骨も折れている様子だった。「うう…いってぇ…」リュックが目を開けるとランプの光が岩肌を照らしており、そこにはぬらぬらと光る血液が飛び散っていた。酷く鉄臭い匂いが鼻に…

12.紅い死の微笑み

キリコは岩を掴み一つ一つ避けていく。しかし、すぐに大きな岩に塞がれてしまった。「ダメだわ…あたい1人じゃとても無理よ…」「他に入口はあるだろうけど、ルートがわからないとかえって危険ね。街のみんなに声をかけて手伝ってもらう必要があるわ」ノスタ…

11.紅い死の微笑み

リュックが目の前の石を避けると光が差した。「ま、眩しい!外だ!出れたぞ!やったぁーっ!」すると光の向こうから手が差し出された。「リュック!!良かった!無事だったのね!地面が揺れてまさかと思って来てみたら落盤事故だったわ!みんなは!?」キリコ…

10.紅い死の微笑み

ランタンの光がゆらゆらと岩壁を照らす。グレッグがゆっくり歩いてくる。炭鉱夫達に戦慄が走り各々武器を構える。「早くアイツを殺すんだ!!落盤を起こしたのは俺達を殺すためなんだよ!!ティンはアイツに殺されたんだ!!」「なんだと!?何のために!?」…

9.紅い死の微笑み

入口は完全に岩で塞がっていた。「ちくしょう!まるで動かねぇ!」ランタンの光だけが頼りだった。光に照らされ粉塵が舞っているのが見える。「これは外部からの救助待つしかねぇな」親方が溜め息をつく。「親方!ここに少し隙間があります!」炭鉱夫が指差し…

8.紅い死の微笑み

結局、一日探してもウサギ殺しの犯人の手がかりは見つからなかった。「ウサギを殺した奴が不浄…なんて事あるかしら?」キリコがノスタルジアに訊くとすぐに否定した。「そんなのでこんな大きな不浄セカイを作り出すとは思えないわ。もっと強く純粋な想いが無…

7.紅い死の微笑み

翌朝。グレッグは憔悴しきり街を彷徨っていた。その様子をキリコとノスタルジア、リュックが見ている。「気の毒ね…大切に育てていたウサギが殺されたのよ…」「一体誰がそんな事を?」リュックは怒りで拳を握り締めていた。「さぁね、わからないわ。グレッグ…

6.紅い死の微笑み

辺りが暗くなり、街に明かりが灯る。炭鉱から出てきた労働者達は酒を盛り騒いでいた。その中でキリコは手品を披露して労働者達を楽しませていた。「おい!リュック!お前の彼女は芸達者だな!」親方はリュックの肩を叩く。「いや、彼女だなんて…違いますよ。…

5.紅い死の微笑み

「俺、体デカい、だから暴力嫌い」グレッグは大きな体を竦めて言った。「はぁ?意味がわからないわ。そんなデカい体してるのならみんなビビってしまうはずじゃない?」「お前わかってない、こっち来い」グレッグはキリコを促すと歩いていく。「ん?」グレッグ…

4.紅い死の微笑み

炭鉱街の中心へと歩を進める。「凄い人込みね!」「みんな坑道で働いてる炭鉱夫だよ。交代で働いてるから今が一番出歩いてる人が多いよ」「リュック!ちょっと手伝って!」途中、上の建物から女の声がした。「あ、スロウさん!」「ん?誰?」「親方の奥さんだ…

3.紅い死の微笑み

「しっかしすごい町ね~よくあんな断崖絶壁に家を作ったわね!?」キリコはキョロキョロと辺りを見回す。断崖絶壁から張り出すように家が何軒も並んでいた。「あれは元々坑道だったんだよ。そこに杭を打って家を作ったんだ。この辺は坑道だらけで地面に家を建…

2.紅い死の微笑み

「ねぇねぇ、あたいお腹空いてる上に泊まる所ないんだ!君の家に泊めてくんない?」キリコがリュックに顔を近付けると視線を逸らし後ずさる。「ええ!?ぼ、僕の家に!?まぁ…いいけど…もうちょっと待ってくれる?まだ仕事中なんだ」リュックはそう言うと足…