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8.羆

羆の圧倒的な存在にクロウは驚愕した。「何を食ったらこんなにでかくなるんだ!?」羆の咆哮か、或いは山嶺から吹き荒れる風の音なのか腹の底まで響くような轟音が全身を震わせた。羆の前足が地面に降ろされると振動で地面が大きく揺れ雪の煙が白く舞い上がっ…

7.羆

立っていることも困難な程の猛吹雪の中、大鎌を構え羆の後ろ姿を捉える。「シュクレン、震えているな?恐怖に打ち勝て!羆の急所は眉間だ。そこを狙うんだ。体には分厚い脂肪を蓄えてやがるから斬るのは可能だが体力の浪費が大きい。それに反撃を受ける可能性…

6.羆

シュクレンは槻山家に村落の女達とその子供と避難していた。外は凄まじい猛吹雪で暗闇に包まれ、戸板がバタバタも激しく音を立てている。その音に震えて女達は身を寄り添っていた。誰もが不安に駆られ押し黙り、眠れずにいた。異変は既に起きていた。風が止ん…

5.羆

「シュクレン!すまないな、どうやら町までは送ってやれそうもない…」武三は落ち着いた口調で話す。「…大丈夫。一緒に避難してる」「ああ…」その日の午後から再び吹雪いてきた。夜になると漆黒の闇に包まれ何も見えない程の猛吹雪となった。まるで獣の彷徨…

4.羆

シュクレンがその惨状の現場から離れ、人気の無い場所に移動すると空を飛んでいたカラスが降りてきた。死神カラスのクロウはシュクレンの右肩に留まる。「…クロウ」「危なかった!危なく撃たれる所だったぜ!」「…私が止めた」「ああ、助かったぜ!不浄に遭…

3.羆

村落に着くと男達が集まってきた。「どうだ!?やったか!?」各々に期待のような笑みが浮かんでいる。しかし男達の問いに武三は首を振る。男達は落胆の色を浮かべると大きなため息を漏らした。「…そうか。ん?その娘は?」男達の視線がシュクレンに集まる。…

2.羆

夜。風と雪が山小屋の壁を叩きつける。古く隙間だらけの壁がギシギシと不気味な音を立てていた。隙間から風が入って火が揺らいでいた。「穴持たずなんだ」武三が呟く。「…アナモタズ?」シュクレンが火を見ながら訊く。「体が大き過ぎて冬籠もりする穴が見つ…

1.羆

まるでそれは悲鳴のような風だった。高くそびえ立つ厳寒の山嶺から吹き下ろされ叩きつける雪は剃刀のように鋭く、冷たさで頬が切り裂かれるような痛みを感じた。林の中に身を潜めていた男が猟銃を構えて白い闇を凝視している。その先には灰色の影がうごめいて…

17.紅い死の微笑み

トンとカンの体が小さくなり、ガラス玉のような魂が残された。キリコはそれを踏み潰し粉々に砕いた。「本当に滅するべきはあんた達だったんだわ!!」鉱山が轟音と共に砂のように崩れていき、街に溢れていた人達も建物も砂となり闇の中へ解けていく。「また一…

16.紅い死の微笑み

「もう完全に消えたわ…。これでこのセカイも終わりね」キリコは倒れているリュックの所に行く。「キリコ…君、強かったんだね…ゴホッ…そして、思い出したよ…僕も…死んでいたんだね…」リュックの目から涙がこぼれ落ちる。「そうよ。残念だけど…何度も何…

15.紅い死の微笑み

「思い出した?あんたは死んだのよ!何度も夢を繰り返す内に狂っていった。あんたはあたいが消してあげるわ!!ノスタルジア!!」キリコが右手を差し出すとノスタルジアが留まり白金の槍へと変化していく。「ぐ…ぐおおおっ!!」グレッグは雄叫びを上げると…

14.紅い死の微笑み

リュックの手からは皮膚を突き破り骨が露出していた。激しく出血している。「ゲハーッ!」グレッグのハンマーが横のスイングでリュックに迫る。咄嗟に両腕で防御するが体ごと叩き飛ばされて岩に叩きつけられた。「ガハッ!」全身が痺れている。そして両腕は動…