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7.夏の思い出

「お願い…お願いだから…この生活を…奪わないで…シュクレン!友達だろ!!」「…トモダチ。でも…これは…決まりだから」シュクレンは大鎌を亮太に振り下ろす。その時。「亮太~っ!」お婆さんが亮太をかばい、シュクレンの大鎌を背中に受けた。蝉の羽根が…

6.夏の思い出

「この思い出だけは…この思い出だけは消したくない!ばあちゃんとの思い出は大切にしたいんだぁーっ!!」亮太の叫びと共に突風が起こる。その風は刃となりシュクレンの服を斬った。「…くっ!」「どうしてシュクレンはこのセカイに来たの?おれはここでずっ…

5.夏の思い出

「シュクレーン!そいつから離れろ!不浄はそいつだ!!」空から猛烈な勢いでクロウが降りてくる。そしてすぐにシュクレンの前に降り立つ。「…クロウ」「このセカイを構築したのは奴だ。記憶が戻ってきたようだぜ!記憶が戻った不浄ってやつは総じて…」「嫌…

4.夏の思い出

シュクレンは布団に入る。それはとてもフカフカして温かいものだった。「…不思議なセカイ…」「随分ご丁寧な接待されてるようだな!」窓の外に死神カラスのクロウがいた。シュクレンは起き上がるとすぐに駆け寄る。「…クロウ」「おそらくは不浄はあの少年だ…

3.夏の思い出

コップを傾けると冷たい感覚が喉を過ぎてコクのある甘酸っぱい味が口の中いっぱいに広がった。それは初めてなのにとても懐かしいような不思議な味がした。「…美味しい」「だろ~!ばあちゃんの作るカルピスは最高なんだ!」お婆さんは皺だらけの顔をさらにし…

2.夏の思い出

「…よこしまなかぜ?」「うん、風が厄災を運んで来ると信じられていてその風をあの鎌で切る事で清らかな風になるんだって。その邪な風の正体というのがかまいたちって妖怪なんだってさ。ばあちゃんが言ってた」「…ばあちゃん?」「うん、おれのばあちゃん!…

1.夏の思い出

蝉がけたたましく鳴き、凶暴なまでにジリジリと照りつける太陽。アスファルトからは熱気が陽炎となりゆらゆらと立ち上っている。宇宙まで突き抜けるような青空が広がり、その空に伸びるように大きな積乱雲が膨らんでいた。木陰で少女が一人仰向けに寝ていた。…

6.死の迷走

純一郎が発進して猛加速し迫る。「お、俺は…帰るんだ!家族のいる家へ!!帰るんだぁ────っ!!!!」「…純一郎…思い出して」跳躍してトラックの猛進を回避し体を回転させながら鎌を振るとトラック前部のピラーが切断されルーフが吹き飛んだ。運転席が…

5.死の迷走

「ギギギグァ…か、帰るんだ…家へ…!!俺の家へ!!」純一郎の顔が苦痛で歪み、裂帛の叫びと共にエンジンが轟音を上げる。一気に加速を始めシュクレンに襲いかかる。「シュクレン!寸前で横に飛べ!そして後ろからキツいのを食らわしてやれ!」トラックが目…

4.死の迷走

どこからか現れたカラスが再びフロントガラスを叩く。「あの時…女は突然剃刀を出したんだ…それから…?それからどうしたんだっけ…ああぁ…」純一郎が頭を押さえて何かを思い出そうと激しく頭を振るとトラックは更に激しく蛇行を繰り返す。「そうだ…思い出…

3.死の迷走

「おかしいな…俺もお前みたいに記憶喪失かよ!何かおかしいな…疲れが溜まってるのかもしれないな」純一郎は運転席に貼られている写真を見る。子供を抱いて笑みを浮かべている女性が写っていた。「…それは?」シュクレンは興味深く身を乗り出す。「これは俺…

2.死の迷走

暗い道は曲がりくねり複雑な曲線を描いていた。ヘッドライトの先は真っ暗闇で鬱蒼とした森を照らしている。時折、ライトに照らされた木の影がトラックに合わせて動き不気味さを醸し出していた。「しかし変わった名前だな!ロシアあたりから来たのか?あんな所…