6.紅い死の微笑み

辺りが暗くなり、街に明かりが灯る。炭鉱から出てきた労働者達は酒を盛り騒いでいた。
その中でキリコは手品を披露して労働者達を楽しませていた。
「おい!リュック!お前の彼女は芸達者だな!」
親方はリュックの肩を叩く。
「いや、彼女だなんて…違いますよ。旅をしてきて宿がないから泊めただけで…」
「ならこのまま街にいてもらえ!お前の嫁に迎えてやるんだ!俺が口説いてやろうか?」
「親方やめてくださいよ~!」
その中にグレッグの姿がなかった。キリコは気になり、グレッグの家に向かう。
「どうしたの?キリコ!」
ノスタルジアがその後を追った。
「これを機に職場の仲間ともう少し解け込む必要があるわ!」
「随分お節介ね?どうせ不浄をやっつけたらこのセカイは終わるのよ?何も変わらないわ」
「そうだけど、あたいはほっとけない性分なのよ!それにあいつ口下手だからみんなに誤解されてる部分があると思うの。だからみんなの前であたいが説明してわからせてあげるのよ!」
「ふ~ん…無駄だと思うけどね」
ノスタルジアは素っ気なく振る舞うがキリコの行動を嬉しく感じていた。
グレッグの家に着くと部屋にはその姿がなかった。
「グレッグ~!どこにいるの?ぶたないから出ておいで!」
キリコは大きく叫ぶが反応がない。
「あんな大きな体を隠しようが無いわ。きっと外にいるんじゃないかしら?」
ノスタルジアの言葉にキリコはウサギ小屋へと向かう。するとグレッグはそこにいた。
「なんだ、ここにいたんじゃない。こんな暗いところで何してるのよ?ウサギも寝てるんじゃないの?」
「……」
グレッグに反応は無く小さく震えている。
「ねぇ、どうしたのよ?」
キリコがグレッグの肩を引っ張るとその手にはボロボロになったウサギの姿があった。
「え……?」
「ひぐ…うぅ…ウサギ…死んだ…死んだ…」
振り向いたグレッグは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「誰がこんな事したのよ!?」
ウサギは何か棒のようなもので叩かれたり、刃物でズタズタに切り裂かれていた。
「わがんねぇ~…誰がやったがわがんねぇ~…ウサギ死んだ!!ひぎぃぃぃぃ!」
グレッグはウサギの体を手で包み込むと頬を擦り寄せて大声で泣いた。

「酷い事する人間もいるのね!」
ノスタルジアがそう言うとグレッグは一瞬泣きやみ
「人間?」
と聞き返した。
「どう見ても獣がやった傷じゃないわ。人間が意図的に殺したのよ!」
「…食うためか?」
グレッグが聞き返すとキリコは首を横に振る。
「食べるならここに死体があるのはおかしいわ。ただ殺したのよ。理由はわからないけど…」
「ただ…殺した?なんで?食べないなら…殺す必要ない…なんで?」
「だからわからないわよ!でも殺されたのは確かだわ。無抵抗なウサギをなぶり殺しにしたのよ…可哀想に…」
「俺…わからない…なんで殺されたのか…わからない…」
グレッグは何度も涙を拭い顔をウサギの血で汚していた。それも気にせずに次から次に溢れてくる涙を拭い続けた。