テトテト散歩~日曜日編

朝目覚める。

今日は雨の予報だったな。そのおかげで仕事は休みになった。

神雨よ!ありがとう!!
私はひとしきり天に礼を述べると布団から出る。

普段は名残惜しい布団も休日となればその魔力も無効化する。

さて、起きてまずは優雅にチーズトーストなんてものを作り平らげ9時から始まるゲゲゲの鬼太郎を鑑賞する。

ああ、日曜日だ。これが日曜日なのだ。愛してやまない日曜日なのだ。
この一日を得るために長く苦しい6日…12日の労働を行ってきたのだ。

ゲゲゲの鬼太郎を見終わると直ぐにアルトCに乗り込む。
向かった先は東松島の『支那そばや 』である。

今日は奇跡的な日曜日営業の日なのだ。

10時ちょい過ぎに到着すると既に人の影が。
10時半になると雨の中で外で待つ人もいる。相変わらず凄い人気だ!


ワンタン麺…1040円

うむ、相変わらず美味しい!ワンタンもモチモチフワトロだ。

でもここのラーメンはやはり具沢山じゃない方がいいかもしれない。純粋に麺とスープを味わう。
かけラーメンが王道なのかも。

腹を満たし高規格道路をぶっ飛ばす。フルスロットル80キロだ。
ビュンビュン追い越され坂道で煽られながら向かったのは日本三景松島。

ちょっと気になる施設があるのだ。

おお、あれあれ!
ん??


テト『ふっふっふっ…やっと着いたな!』

テ、テトさん!?いつからそこに!?

テト『いつからも何も後部座席にずっといたぞ!』

そ、そうなのか!?なら大声で歌っていた事も…

テト『酷く音痴なみくみくにしてあげる♪だったな!』

言わないでくれぇーっ!


テト『すごく温かくていいぞ!』

本当だ!なんか湯がすべすべするね!?不思議な湯だよ。

テト『いかにも温泉って感じがするな!よくここを知っていたな?』

ははは、友達の太ろおさんが通ってるらしくてどんなものか気になっていたのだよ。

テト『太ろお?』


テト『ああ、あの人か。殴った感触は覚えているぞ!』

殴られた感触も覚えてるけどね……。


テト『元気にしてるといいな!』

そうだね。また来てもらおう!

いやぁ、いい湯だったな。実に30分も浸かっていたよ。

30分も…んん?
思い出した!!

テト『びっくりしたな!なんだよ大きな声を出して!』

いや、山形に3分しか入れないウルトラマン温泉があるんだよ!

テト『なにそれ!面白そうだな!行こう!』

テトさんならそう言うと思ったよ!
ではレッツラゴー!!

ビューン!!


テト『結構暗くなっちゃったな…』

もう三時だからね…天気も悪いから仕方がない…。


テト『ここがウルトラマン温泉か?』

うん、百目鬼(めどき)温泉っていうんだ。凄い名前だなぁ…。


テト『でもこんな田んぼの中に温泉が湧くなんて凄いな』

さすがは山形県だよね。温泉天国なんだよ。しかも低価格で源泉かけ流しを楽しめるのだから最高だよね!


テト『では行くお!』

おーっと待ってよ~!
まずは券売機を購入するのだ。

350円を払い…にしても安いなぉ…山形県民が羨ましいけど雪のことを考えるとこれくらいの役得がないとやってられないよなぁ…。

毎年雪が少なくなってるけど。

早速温泉に……っておおおおおおお!?

テト『おお!でかい声出すな!驚くだろう!』

⚠実際は混浴ではありませんが物語の撮れ高の関係でフィクションで混浴にしてます。背景画像はネットでお借りしました。

テトさん…あの…てか…(ババアが邪魔なんだけど…)

テト『とりあえず入ろう!結構熱いな!』

うん、3分を目安に出たり入ったりしてって書いてるね。成分が濃厚だから湯あたりするんだってさ。

テト『ふーん。君のことだから3分では済ませないだろ?』

もちろん!せっかく来たから30分は入るよ!

テト『ふぁ~もう3分だ!』

お!出ちゃうの?
(やった!テトさんのヌードが見れるぞ!)

しかしテトさん綺麗だね…。


テト『褒めたって何も出ないぞ!』

いや!(出てるけど見えねぇ!!くそばばあ!そこどけ!!この心の声が聞こえないのか!?)

ババア『ああん?なんだってぇ?』

いや、別になんでもないです…ははは。

テト『そういえばこの前お姉ちゃんと温泉に行ったらしいな?』

おん?そうだけど。(あの日記は運営の怒りを買って削除されたんだよな…この日記も怪しいぞ…ギリギリを攻めてるし)


テト『ボクだって結構あるだろ?お姉ちゃん程じゃないけど…』

えええっ!?なんでこんな時に大胆なの!?てか(くっそババア!邪魔ばかりしやがってぇ!!そこをどけ!そこのけ!!)

ババア『あらやんだァ~そんなに見ねえでけろっちゃや~おしょすいごだぁ!!』

だぁあああああああああああ!!?見たくもないものが見えるぅぅぅぅぅ!目がぁああ!?

カポーン…


テト『いい湯だったな!とても体が温かくなった!』

そうだね…私は目が悪くなった気がする…。あのババアめ…。


テト『見ろ!いい景色だぞ!』

本当だ…今日も終わりなんだねぇ…楽しい日曜日だったよ。
明日からまた労働の日々が始まるんだねぇ…。

百目鬼温泉はとても良い温泉でした!
普通に30分くらい浸かってましたが…特に湯あたりしたとかはないですね…。

低価格で入れるのが魅力的ですが、個人的には松島温泉の方が好みでした。足湯だけでしたが全身浸かりたいと思いました!!

また機会があれば山形に行きたいですね!
撮影時間はたった1時間でしたし…。

また行こうっと!

お借りしたモデル

重音テト…アレン・ベルル様
ばばあ

11.テトテト散歩~哀愁釜石編

~前回からのあらすじ~

 蓬莱島へ訪れて居酒屋の女将『有子さん』のことを完全に思い出した私。
 しかしそれは過去との決別を意味していた。


テト『思い出せないくらい…』

「ん?」


テト『実に君はバカだな。ボクが君を忘れるわけないだろう?思い出せないくらい遠い未来に行ってしまったとしても…ボクは君を忘れないお。君がボクを忘れたとしても…ボクは忘れないお。それでいいじゃないか!』

「テトさん…」


 テトは満面の笑みを浮かべた。

テト『だってボクらは友達じゃないか。これからも…ずっと』


 そして、蓬莱島へと歩いていく。嬉しいことも辛いことも忘れずに胸に抱いて前に進むのだ。
 過去に置いてきた思い出は人生の宝物。

 あの時代だけ好きになることを許された人がいたんだ。


「有子さん…ありがとう」

テト『ところでその有子さんはどこに居るんだ?』
 テトは階段を登っていく。その後ろをついていくがスカートの中が丸見えだった。


  なんていうか…とにかく絶景だった。

「さぁね?たぶんすごく幸せに過ごしているんじゃないかな。いや、そうだと思う。あの日、私は嫉妬してしまって声を荒げたが今は本当に幸せを願えるよ。今でもあの笑顔が思い出せる。寂しさと同居した笑顔をね」


 有子さんも何らかの苦悩を抱えていたのかもしれない。たぶんあの日、その話をしたかったんじゃないかな?
 もう二度と聞くことも会うこともないが…。

 有子さんとの思い出は綺麗なまま私の胸の中に大切にしまってある。


テト『憑き物が落ちたような顔してるぞ。ここに来て良かったな!』

「ああ、とても綺麗な所だね。あの日とはまた違う景色に見える。懐かしさと新鮮さが綯い交ぜになった感じ」


テト『なんだそれ?よくわからないお!帰ったら歌を作るお!』
 テトは張り切って拳を空に振り上げた。その拳の先にある空は高く秋の雲が広がっていた。

「嬉しいこともあるだろさ♪悲しいこともあるだろさ♪だけど僕らはくじけない♪泣くのはいやだ♪笑っちゃお♪進めーっ♪」

テト『おおーっ♪』

 人は誰しも語り尽くせない思い出がある。それは普段は忘れているようで、実は大切に胸の奥に仕舞っているのだ。

 失わないように、綺麗なまま、いつまでも輝く宝物として…。


 そうだよね?

次回、最終回!

10.テトテト散歩~哀愁釜石編

 有子さんとの間には岸壁に何度も打ち付ける波の音だけが聞こえていた。

 有子さんはまたあの寂しそうな笑顔を浮かべた。

 私は何も言えずに立ち尽くし拳を握りしめ震わせていた。
 そして思わず発してしまった自分の言葉に深く後悔したのだ。

 あまりにも稚拙だった。
 ただ感情を抑えることが出来なかった。

「あの…すいませんでした…」


有子『なにも謝る必要は無いわ。君はなんとなく昔の私に似ていたから。不思議ね、お互いに何にも知らないのに…。人生はこれからよ。いろいろあるわ。嬉しいことも。悲しいこともある。それでも前に進み続けなきゃいけないの』
 ふと高くなり始めた秋の空を見上げる。波音の合間に蝉の声が聞こえる。


有子『夏も終わりね…』

有子さんは空を見上げて呟いた。


 こうして私の恋も終わったのだ。あれから釜石での仕事を終えて釜石を離れた。
 その思い出を胸に秘めて、もう1つの故郷として胸の中にしまい込んだのだ。

 この遠い記憶と共に…。


テト『どうしたんだ?行かないのか?』

 テトは私の顔を覗き込み神妙な表情をしている。

「私は忘れていたんだ。ここに一緒に来た大切な人のことを…全て忘れていたんだ。そして、ここに来てようやく思い出したんだよ…」


 今からずーっと遠い昔にここに来てたんだ。
 有子さんと離れて私がしたことは有子さんのことを完全に忘れることだった。

テト『君はその人を大切に想っていたんだな』

「…そうかな?私は完全にその人のことを忘れていたんだよ?」

テト『大切なことから忘れていくんだよ、きっと…』

 テトは少しはにかんだ笑顔を見せた。そして数歩前を歩き振り向く


テト『でもこうして戻ってきたじゃないか。忘れていただけで失ったわけじゃないんだよ』

 体が震えた。私はこうして大切な記憶を忘れてきたのだ。たぶんもっと他にたくさんあると思う。

「テトさん…私は薄情なのかな?ずっと想い続けるのが辛くて…重荷になるのが嫌で…忘れて楽になろうとしていたんだ…たぶんだけど…テトさんと離れてしまったらきっとテトさんのことも…私は忘れてしまうのかもしれない」
 そう、自分はそういう奴なんだよ。どうしようもなくダメな奴なんだ。


 抱え込むのが嫌で、大切なものを失うのが怖くて怯えていたんだ。

 突然無くなるのが怖くて…ならば自ら手放して忘れてしまおうと思っていたんだ。

 たぶんこれまでもこうして生きてきたしこれからもそうなのかもしれない。


 私はこの釜石に青春を忘れてきたのだ。

 夏も終わりに近付いた海や空を見て、涙が頬を伝った。

9.テトテト散歩~哀愁釜石編

~前回からのあらすじ~

遂に蓬莱島へ到着した。
その直後に全ての記憶を取り戻し女将の名前を思い出したのであった。


 前をテトが歩いている。あの歌を囁きながら。
 あの日も同じように有子さんが前を歩いていた。


有子『嬉しいこともあるだろさ♪悲しいこともあるだろさ♪だけど僕らはくじけない♪泣くのはいやだ笑っちゃお♪』
 か細い声で囁くように歌っていた。

「あの…その歌は?」


有子『ひょっこりひょうたん島の歌よ。あの島の風景は美しいでしょう。落ち込んだ時によくここに来るのよ』
 有子さんは振り向き微笑みを浮かべた。その表情は少し寂しさを思わせた。


有子『私ね、バツイチなんだ。子供もいるのよ。でもね、会えないの…親権を旦那に取られたから』
 有子さんに感じていた寂しさの正体はそれだった。店で客と会話し笑っている有子さんの裏の顔だった。

「あの…どうしてその話を僕に?」

有子『あなたは一人で釜石に来てるのでしょう?家族と離ればなれ…私とは違うだろうけど、なんとなく同じような雰囲気を感じたのよ。きちんと家族と会話してる?』

「いや…」
 はっきり言えば家族とは不仲でまともな会話を何年もしていなかった。

有子『あなたはまだ若いのに随分疲れた顔をしているわ。そういうお客さんも結構来るからすぐにわかったの』
 全て見抜かれていたような気がした。

 繰り返される労働の日々に辟易していたのだ。仕事が終われば部屋に戻り一人で過ごす。
 そして、朝がやってきて同じことを繰り返すのだ。
 何よりも人と深く関わることを避けてきたのだ。
 そういう生活をこれからも繰り返して生きていく事に退屈さと失望感に打ちひしがれていたのだ。

「有子さん…あの!」
 有子さんは一瞬驚いたような顔をすると再び寂しげな笑顔を見せた。私の言葉を待っているようだったが、出てくるはずの言葉が喉元でつかえ出てこなかった。

 ただ気持ちを伝えるだけでいいんだ。

 これからも繰り返される惰性の日々でも有子さんが居てくれたら…そんな想いが溢れてきたがその気持ちをどんな言葉に託したら良いのだろう?
 頭の中、胸の中、腹の中…ありとあらゆる場所から言葉を探すが見つからない。
 どうしたら有子さんの心に響く言葉をかけられるのか。
 あと少し…頭の中で漠然と浮かんでいた言葉が徐々に形になっていく。

有子『私ね、再婚するんだ。お店も頃合いを見て閉めるかもしれない…だから』
 突如として出てきた有子さんの話に口元まで出てきそうだった言葉が一瞬で壊れ形を失った。
 それはドロドロとしたものに変わり喉に嫌らしく絡みついてきた。

「そ、そんな話をするために僕をここに連れて来たんですか!?」
 思わず声を荒らげた。期待していたことと大きく乖離した展開に精神が対応出来なかった。

 これは嫉妬だ。

 醜くて愚かな黒い気持ちだ。油を飲み干したような気持ち悪さが喉を通り過ぎて胸を締めつけた。

8.テトテト散歩~哀愁釜石編

~前回からのあらすじ~

蓬莱島へ向かう途中に過去の思い出に浸る私。
その記憶の中で蘇った居酒屋の女将との関係。
その全容を思い出すために島へ近付いていた。


『おい』

 テトの声に我に返る。
 ほんの僅かな間だったが遠い過去の記憶が鮮明に蘇っていたのだ。

 ただ、女将の顔だけは思い出せなかった。

「昔のことを思い出していたよ」

テト『頼むからきちんと前を見て運転してほしいな。頼むぞ本当に!』

 市街地を抜け出し山間部へ差し掛かる。確かにここは通った覚えがある。

「この道はいつか来た道だね」
 私がそう呟くとテトは私の顔を覗き込む。

テト『この旅は君のルーツを辿る旅だ。君が今まで生きてきて忘れてきたものを取り戻すんだお』

「忘れてきたもの?」

テト『ああ、人って大切なことから忘れていくんだお。それはとても残念なようだけど便利なものなんだ』

「どういうことだい?」

テト『大切にしていればいるほど記憶の奥底にしまってしまうんだ。その代わりふとした事でいつでも引き出しから出せるんだ。無くさないように。それは時に重荷にならないようにでもあるんだ』

 そうだ。
 大切な想いであれば忘却の彼方へと追いやられるのだ。
 どんな大切なものでもずっと抱え込んでいたら重荷になってしまう。新しいことを受け入れなくなってしまう。
 そうしたら人は前に進めなくなるのだ。

テト『君が完全に記憶から失われたと思っていたものはきっとそこに行けば必ずあるお!』

 蓬莱島へ近付けば近付くほど記憶が徐々に鮮明になっていく。もう少しだ!


テト『あった!あれだお!?』
 テトが指差した先に蓬莱島が見えた。その姿を見た時…落ちそうで落ちなかった雫が落ちて鏡のように張り詰めた静かな水面を叩くような音が聞こえた気がした。
 それと同時に波紋のように記憶の波が広がり胸の中一杯に広がった。

 港に車を駐車場し、蓬莱島へと続く岸壁に降り立った。

テト『今から遠い昔にここに来たんだろ?誰かと…』


「ああ…来たよ」
 私は笑っていたかもしれない、それとも泣いていたかもしれない。とにかく今の自分がどんな顔をしているかわからないぐらいに心が打ち震えた。


テト『行こう!あの島へ!』
 テトが意気揚々と歩き出す。このシチュエーションはあの頃と同じだった。


テト『左右で波が違うんだな!面白いな!』
 そう、この景色に感動したんだよ。そして、あの人はこう言ったんだ。


『諦めちゃダメよ。もっと自分から行動していろんな所に行かなきゃ』


「女将さん…いや…」
 何度も胸の中の壁を叩いていた。それが不意に扉が開いて飛び出した。
 その言葉はとても愛おしいと思った。その言葉を呟いただけで幸せな気持ちになれたんだ。

「そうだね…有子さん」
 それは女将の名前だった。

7.テトテト散歩~哀愁釜石編

~前回からのあらすじ~

 思い出の地に向かって走る私の頭の中に居酒屋の女将との思い出が蘇りつつあった。


 女将のことを気にかけるようになってからは店に通うのが楽しみになっていた。
 だが困ったことに女将が他の客と楽しそうに話しているのを見ると胸が苦しくなった。

 これは嫉妬なのだろうと理解はしていた。わかってはいても自分ではどうすることも出来なかった。
 ただ、女将の顔を見て声を聞くだけで良いと自分に言い聞かせていた。


 これが恋なのだろうか?

 他人との関わりを極力避けてきたのに誰かを想うだけでこんなにも狂おしくなってしまうものなのだろうか?


『今夜も飲み過ぎね。まだ若いんだから酒に溺れちゃ駄目よ』
 女将が不意に空のグラスに水を注いでくれた。
『これで最後よ』
 私は黙って頷くとグラスを傾ける。

 気が付けば周りの客は全て帰り店には私と女将だけになっていた。
 ああ、この時間が永遠に続かないだろうかと切実に願った。
 女将が店の暖簾を片付けている。

『雨が降ってきたわ。今夜送ってあげようか?』
 女将の言葉に嬉しくなり気持ちが昂るのを抑えることに苦労した。あくまで冷静を装っていた。

 今夜こそは女将の事を聞きたいと思っていた。

 女将の車に乗り込み、質問をしようと考えていた。
 次の交差点を曲がったら…。

 次の信号機が赤だったら…。

 何度も決意と挫折を繰り返す。気が付けば家との距離はあと僅かに迫っていた。

 今夜聞かなかったらずっと聞けない気がした。


「女将さん…あの…」

 結局その日は何も聞けなかった。世間話すら交わさず、私は頭を下げて女将の車を見送った。
 そのテールランプの光が見えなくなるまで雨の中佇み続けた。
 やっぱりダメな奴だった…。

 部屋の中で明かりも付けずに天井を見つめていた。時折国道を通る車の明かりが天井を流れていく。
 路面の水を切る音がやけにやかましく感じた。

 ただ疑問だったのは、どうして女将は私によくしてくれるのだろうか?
 特別イケメンでもなくお金持ちでもない。どちらかと言えば人生の落伍者であり、店の隅で誰とも話さず背中を丸めて酒を呑んでいる暗い男なのだ。
 
 それがただの同情だとしたら恋心を抱くなんて勘違いも甚だしいものだ。その夜はただ自分を責め続けた。

続く

テトテト散歩~上品な珈琲ソフト

特に何の予定もない日曜日に無駄に早起きした。

これは習慣としか言わざるを得ない。

「腹減ったな…」

そこで向かったのは椿ラーメンショップ松山千石店の朝ラーメン。

岩海苔ラーメン…750円 ネギ丼…350円

朝からキリッと目が覚めるのだ。

朝6時33分から営業してるのも嬉しい。
実はここのラーショは私の自宅からは相当遠いのだが、旅気分を味わうためでもドライブがてらやってくるのだ。

さて、腹も満たされたしどうしようかなぁ??

ふと思い出したのが宮城でも人気が高い道の駅『上品の郷』だ。そこに向かおう!!

そこに何があるのか?

『珈琲ソフト』である。

他にも見所盛り沢山なのだが、今は単純にそれだけを食べたい!

高規格道路をビュンビュン飛ばし到着した頃には昼だった。


テト『よっ!待っていたぞ!』

どわぁ!テトさん!?どうしてここに!?

テト『実は後ろに乗ってきたんだ。君がコソコソと出かける準備してたからな!』

はぁ…全ての行動は筒抜けだな…で、今回は珈琲ソフトを食べに来たのだが…

テト『お金は君持ちな!』

やっぱす…。

テト『ところでこの道の駅はたくさんの人がいるな?』

うん、ここはすごく人気が高いからね。店の中も魅力ある商品が盛り沢山だよ!早速入ってみよう!


テト『本当だ!なんか美味しそうなのがたくさんだな!お酒もあるぞ!』

道の駅の名前が入った瓶がオシャレだよね。他にもスイーツもあるよ!


テト『花畑牧場とかあるぞ!?ミクも喜ぶな!』

本当だ!なんか企画ものなのかな?テトさんは結構甘いのが好きなのかい?

テト『フランスパンに塗ったりしたら美味しそうじゃないか』

なるほど、そういう手でくるか!なかなかフランスパンが合いそう!


テト『外には足湯があるんだな』

うん、ここは温泉を併設している道の駅なんだ。ここ『ふたごの湯』は三陸でも随一の名湯なんだよ。
鉄泉で貧血や肌荒れに効能があるとか。

テト『そうなのか。君は入っていかないのか?』

うん…実は休日料金は結構高くてね。750円なんだ。(消費増税にて50円値上げした)

テト『貧乏な君にとっては三日分のランチ代か…』

そ、そうだね…三日分というか1週間分だよ。
たまに贅沢で入るくらいかな!


足湯…無料
テト『すごく温くて気持ちいいぞ!』

テトさん足湯好きだよね?鳴子でも入ってたし。

テト『ニーハイ履いてると結構締めつけられるんだお。疲れも溜まるからな』

ほうほう、匂いとかも…

テト『これ!匂いを嗅ぐな!君みたいに下品な匂いはしないけどな!』

私なんか自慢じゃないけど秒速で臭くなるからね。

テト『本当に自慢にもならないじゃないか…』


珈琲ソフト…350円

そして念願の珈琲ソフト!!
私はこれ大好きなんだよね。珈琲の苦味とソフトの甘さがお互いに引き立てあって絶妙な味わいなんだよね。


テト『本当だ!これは美味しいお!』

はは、気に入って貰えたようだね。
道の駅って楽しいでしょ?

テト『うん、駅毎に特色があって面白いな!鯖だしラーメンとかも気になるお!』

そ、それはまた今度かな…お金無いんだ…泣
またいつか来ようね!

テト『うん!』

こうして日曜日を満喫したのだった!

6.テトテト散歩~哀愁釜石編


~前回からのあらすじ~

断片的な記憶を取り戻し遂にその思い出の場所が『蓬莱島』ということを思い出す。
すぐさま向かうが蓬莱島で起きた事とは…!


 車を運転しながら過去の記憶を遡る。そこはいつか通った道。

 朧気だった記憶が徐々に呼び覚まされていく。

 あれは雨の日だった。

 その日の労働を終えて汚れた体のまま飲み屋に行った。
 繰り返される同じような日々。将来の展望も見えず、かと言って目標も無く惰性の暮らしだった。

 泥酔し、雨が降りしきる町に佇んだ。むせ返るような湿り気を帯びた空気が肌にまとわりついていた。
 自分にまとわりつくしがらみから抜け出すために働き自立していこうと決意していたのに、ただひたすら孤独に打ちひしがれていた。

 こんなはずではなかったと頭の中で自問自答を繰り返す。

 ただ怖かった。

 このまま老いていくことが。

 猫背になり、雨が降る町を歩いていると不意に雨が何かに遮られた。
 それは傘だった。後ろを振り向くと先程まで呑んでいた店の女将だった。


女将『風邪ひくよ』

「あの…」
 私は突然のことに驚き、なんと言葉を返していいのか戸惑った。
 女将とは会話らしい言葉を交わしたことは無い。ただ静かに酒を呑みながら物思いにふけっていることが多かったからだ。

 もとい人と会話をするのが苦手だった。

女将『車で送っていきますよ?』
「は、はぁ…」

 私は何かを期待していたわけではないが、女将の車に乗っていた。
 女将と言ってもまだ歳は三十前後だろうか。やや疲れた表情で憂いのある寂しさを感じた。

 車内の中で沈黙の重い空気を感じていた。私が饒舌に喋れればよいのだが、とりわけ話題などあるわけもなく左右に往復するワイパーを見つめていた。
 ようやく言葉を交わしたとしても右や左などの道案内だ。


 結局その日は何も喋らずに別れた。
 その夜、布団の中で情けない自分をどれだけ責めたかわからない。
 自分で自分をダメな奴と烙印を押し続けた。

 人と関わることを避けてきたことはなんと恥なのだろうと。不甲斐なさを感じて、再びその店に行く気が失せていたのだが気が付けば通っていた。

 女将は特に馴れ馴れしくするわけでもなく、女将の方から話しかけてくることもなかった。
 それで何となく気安さを感じていたのだ。

 だが居心地の良さと少なくとも女将の事が気になっていた。初めて他人を気にしていたのだ。

続く

5.テトテト散歩~哀愁釜石編

~前回からのあらすじ~

 かつて賑わっていた釜石大観音仲見世通りの閑散ぶりに絶望する私。
 そこから次の行動を起こそうとするがまたもや記憶が途絶え…。


 廃れていた釜石大観音仲見世通りの駐車場で歌ったひょっこりひょうたん島の主題歌のフレーズ。
 それに対してテトが興味を示した。

テト『その続きの歌詞は?』

「えーと…だ~けど僕らは挫けない♪泣くのは嫌だ♪笑っちゃお進めー♪かな…」

テト『いい歌だな。今の君には相応しい歌じゃないか。道に迷った狸みたいな顔して落ち込んでる場合じゃないだろ?君の…君の大切な何かを探しに来たんだろ?』

「…うん…でも…」
 その大切な何かが思い出せないのだ。
「テトさん、私を思いっきり殴ってくれないか?」
 私の提案にテトは目を細める。
テト『は?正気か?』

「ああ、殴られた衝撃で何か思い出すかもしれない!さぁ!思いっきり!」
テト『じゃ、思いっきりいくぞ!コークスクリュー…』
「あ、いや、やっぱりちょっと手加減して」
テト『ドリルパーンチ!!』

 突然、ふと何かが頭の中を過ぎった。懐かしい声で同じように誰かが励ましてくれたのだ。病的なまでの記憶喪失の鍵が開いた気がした。


 もう時間は残されていない。

「ひょうたん島だよ!やっぱりあそこに行くしかないんだ!」

テト『その場所は?この近くか?』
 テトの言葉に私はハッとした。漠然としか覚えていない。景色は朧気に覚えている。
 しかし、そこに辿り着くまでの経路が失念してるのだ。

「そういえば…自分でそこに行ったんじゃないんだよ…誰かに…誰かに連れていってもらったんだ。なんのために…だっけ?」


 まるで夢の中から目覚めたように思い出しては忘れていく。何故なのかはわからない。


テト『ふ…君が失ってる思い出はとても大切なものなんだな』

「え?」

 テトは少し微笑んだかと思うと空を見上げた。
 すっかり夏は過ぎて秋の空が近付いていた。空が遠く高くなっていく。

テト『大切な思い出ほどなかなか思い出せないんだよ。忘れてるだけで無くしたわけじゃない。きっとその場所に行けば思い出すお』

 とりあえず場所を思い出さなければ意味がない。私は頭を振ったり掻いたりして記憶を探るが全く思い出す気配がない。

テト『地元の人に聞けばわかるだろう?』

「そうだ!早速聞いてみよう!」

 偶然通りかかった人にひょうたん島について尋ねる。


女の子「もしかして…蓬莱島の事かしら?」

「ほうらいじま?」


女の子「ええ、地元の人はみんなひょうたん島って言ってるから本当の名前は馴染みがないの」

「ありがとうございます。蓬莱島か…すぐにナビに入れれば迷う事はないだろう!」

 車に乗り込みナビに入力する。

テト『良かったな。あと少しだぞ!』

続く
 

4.テトテト散歩~哀愁釜石編

 次に向かった場所は駅から車で数分の所にある。

『釜石大観音』

 駐車場に着くと車は1台も停車しておらず閑散としていた。

「今日は休みなのかなぁ?」

 私がキョロキョロと辺りを見回しているとテトが鳥居の方まで歩いて行く。


テト『誰もいないぞ?』

「え?そうなの?」

 この釜石大観音仲見世通りは朧気ながらたくさんの店が連なり多くの人が行き交い賑わっていた覚えがある。
 テトについていき仲見世通りを見ると愕然とした。


 そこはもうだいぶ昔に店を畳みシャッターが下ろされ閑散としていたのだ。

 錆びて汚れてしまっている看板に何か悲しいものを感じた。


テト『本当に賑わっていたのか?商売するには立地的に厳しいだろ?それに何にも無いぞ…』

 テトが言うのももっともな話で大観音像以外何も無いのだ。一度来れば飽きてしまう。
 昔の賑わいからは想像出来ない。それも大震災の問題云々ではなく、それよりも前に廃れていたのだ。

「確か仲見世通りを蘇らせるプロジェクトが発動されたとか話を聞いたことがあるけど…」
 クラウドファンディングで資金を集めてかつての賑わいを取り戻そうとする動きだったけど、この景色を見る限りは成功しているとは言い難い。


テト『見事に失敗しているみたいだな。辛うじて喫茶店が一件だけあるようだけど…これじゃ商売も厳しいお』
 テトはため息をつくと前へと進んでいく。


テト『全く人の気配が無いな…』

 振り向いても誰も来る気配が無い。釜石大観音の受付けだけがあってなんともシュールな感じがした。


テト『釜石大観音を見ていくのか?』

「いや、いいよ。もう陽も傾いて来たし…とても観光気分じゃないや」
 既に太陽は山の方へと傾き始めていた。踵を返し仲見世通りに戻る。焦る気持ちが先行し無意識に早歩きになっていた。
 ここまで来てもまだハッキリと思い出せるものが無いのだ。
 そして確実に時間だけが進み、どうしたものかと途方に暮れていた。

「嬉しいこともあるだろさ♪悲しいこともあるだろさ♪」
 曖昧な記憶を頼りにここまで来たが、完全にそれは膨大な記憶の片隅へと追いやられ思い出せるものでは無くなっていたのだ。

テト『その続きは?』

「え?」


テト『ネルが歌っていたのはそのワンフレーズだけだろ?その続きの歌詞はなんだ?』

 私はふと違和感を覚えた。そこだけがやけに頭に残っている。
 そして歌っていた声も朧気ながら記憶がある。
 これは誰なんだ?

 優しい誰かの声が聞こえたような気がした。


??『諦めるにはまだ若いでしょ』