偏屈で有名な爺さんが亡くなった事は小さな田舎町ではセンセーショナルに報道された。
亡くなった状態が異常だったからだ。
頭部が亡くなっていたのだ。それも鋭利な刃物で切られたという訳ではなく千切れた感じだったらしい。
熊の仕業かと推察する者もいたが、偏屈で町で会う人に言いがかりをつけては『殺してやる!』と叫んでいたのだ。誰かに殺されたとしても不思議ではない。
当然町の人は疎ましく思い誰も爺さんの家に寄り付く人はいなかった。身寄りもなく、孤独に暮らしていた爺さんが孤独死しても葬儀に訪れる者はいなかった。
警察が無くなった頭部を探したが遂に見つかることはなかった。
49日も過ぎた頃から奇妙な噂がたち始めた。
死んだ爺さんの頭部が枕元に転がっており、それは目を動かし叫ぶのだ。
「殺してやる!」と。
すると何日目かに本当に亡くなったと言うものだ。しかも爺さんと同じように頭部が無くなっているのだ。
これは爺さんが自ら頭を体から千切り同じように町の人を殺しているのだと。
爺さんが町の人間を祟っていると噂が立ち、頭部が枕元に現れるのを恐れていた。
町に新しく出来た葬儀屋は毎日毎日忙しそうにしていた。
「祟り?そんなのあるわけないでしょう!もう勘弁してほしいですよ…!」
と葬儀屋の人は訝しんでいたが、爺さんの頭部が現れた家は必ず死人が出る事が偶然とは言えなかった。
夜中、トイレに目を覚ます。暗がりの中電灯の紐を探し立ち上がった瞬間、何か重い玉のようなものを蹴った。冷たく、ザラッとした感触。直ぐにそれは人の頭だと思った。
部屋の電灯を付けるとそこには何も無かった。あれは爺さんだったのか?だとしたら…。
突然、何かで頭を叩かれた。意識が遠のく。
「おい、早く頭を千切れ!田舎の人間は直ぐに迷信を信じるぜ」
それは葬儀屋の声だった。