デス・ドアーズ

4.死の迷走

どこからか現れたカラスが再びフロントガラスを叩く。「あの時…女は突然剃刀を出したんだ…それから…?それからどうしたんだっけ…ああぁ…」純一郎が頭を押さえて何かを思い出そうと激しく頭を振るとトラックは更に激しく蛇行を繰り返す。「そうだ…思い出…

3.死の迷走

「おかしいな…俺もお前みたいに記憶喪失かよ!何かおかしいな…疲れが溜まってるのかもしれないな」純一郎は運転席に貼られている写真を見る。子供を抱いて笑みを浮かべている女性が写っていた。「…それは?」シュクレンは興味深く身を乗り出す。「これは俺…

2.死の迷走

暗い道は曲がりくねり複雑な曲線を描いていた。ヘッドライトの先は真っ暗闇で鬱蒼とした森を照らしている。時折、ライトに照らされた木の影がトラックに合わせて動き不気味さを醸し出していた。「しかし変わった名前だな!ロシアあたりから来たのか?あんな所…

1.死の迷走

死して尚、無念の想いは強く残り迷える魂が不浄と化し妄想セカイを作りデスドアに幾多も存在する。荒涼とした斑(まだら)の大地が広がり暗く、光もない死者が辿り着く最後の場所。金属同士が激しく擦れ合い、甲高い音と重厚な音が混ざり合う。空気が一気に抜…

10.死神の棲む街

嗚咽を漏らすカイトの顔に手が当てがわれた。見上げるとそこにはアリッサがいた。首の切り傷も何もない。「カイト、もう大丈夫よ。ゆっくり休みましょう。」アリッサは優しい笑みを浮かべてシュクレンを見る。その笑顔に一瞬だけ息を呑む。「…なぜ…笑うの?…

9.死神の棲む街

「行けぇぇ!シュクレン!!」大鎌が青い光を放ち半円を描きながら加速していく。その風切り音はまるで断末魔の叫びのように禍々しい音を発し死神の体を胴から斬り裂いた。「アッ…ガッ!?」死神の上半身が床に落ちる。大鎌から放出した衝撃波は勢いを弱める…

8.死神の棲む街

「おかしいぞ!頭が再生してやがる!確かに斬ったはずだ!!」死神の手鉤が振り下ろされるがシュクレンは体を捻り回避する。だが足が縛られている逆さ吊り状態では圧倒的に不利な状況に変わりはなかった。「シュクレン!何とか縄を切れ!!」クロウの指示にロ…

7.死神の棲む街

「随分揺れる船だな!平衡感覚は大丈夫か?圧倒的に死神野郎の方が有利な状況だ。だが、それはいつもの事だろ?お前はいつものように戦い、勝利するだけだ!!」シュクレンの持つ大鎌が禍々しく黒光りする。死神はゆらゆらと陽炎のように歪んでいるが、その手…

6.死神の棲む街

ナイフが照明に反射し鋭い光を放つ。「ちょっと待って下さい!」男の怒号が部屋に響いた。死神の姿はなく、目の前には体躯の大きい男と恰幅のよい初老の男性が机越しに睨み合っている。よく見れば部屋も先程とは全く違っており、さっきまでいた部屋とは違う部…

5.死神の棲む街

「これは死神の仕業なんだ…死神が…死神がお母さんを…僕が…死神を殺す!!」震える声で精一杯絞り出しすように喋ると立ち上がる。その足元はおぼつかずフラつきながらどこかに行こうと歩き出す。「…カイト…やめて…駄目…」シュクレンがカイトの手を取り…

4.死神の棲む街

どこかで何かが動く音がする。部屋全体が軋み歪むような重苦しい空気に胸が苦しくなる。その音は徐々に激しく鮮明になり、微睡みの浮遊感から引き戻された。目を開けると暗い天井が見える。汗をかき服が肌に冷たく張り付いていた。「…気持ち悪い」ベッドを降…

3. 死神 の棲む街

深夜。シュクレンが微かな物音に目を開けると窓の外に黒いカラスが居て室内を覗き込んでいた。「…クロウ」ベッドから起きて駆け寄り窓を開ける。「シュクレン、どうやら死神気取りの殺人鬼がいるみてぇじゃねぇか?この陰気臭い”セカイ”も奴のものかは知ら…