シュクレンとクリスは通路を走る。
「出口は…!?」
「このまま真っ直ぐ…ちょっと待って!」
クリスが足を止めて部屋に入る。そこは様々な衣服が飾られていた。
「さすがに裸のままじゃ逃げられないわね…シュクレン!これを!」
クリスは服を差し出す。
「…メイド」
シュクレンは渋々その服を着る。それは以前キリコに着せられたものと酷似していた。
着替えてすぐに廊下を走ると前に少女が一人立っていた。
そして右手を上げるとカラスが留まり黒い光を放ち大鎌へと変わる。
「お前達…不浄の魂」
少女は身の丈よりも大きい大鎌を構える。
「死神…」
シュクレンが呟く。
「死神?どういう事!?」
クリスは困惑して身構える。
「彼女達は…不浄の魂を回収してるの。このセカイを消すために」
「不浄の魂?この世界を消す?」
クリスが何かを考えている。そして拳を握り構える。
「クリス!?」
「シュクレン!私がこの死神とやらを足止めしておくから逃げるのよ!」
「それは…できない…無理。不浄の魂が…死神に勝てない…」
シュクレンは思わずクリスを不浄の魂と言ってしまった事を悔いた。
クリスはそれを聞き入れたかどうかは定かではなかったがシュクレンに微笑みかけた。
「大丈夫…大丈夫だよ。もし私が一瞬でやられても振り返らずに走るんだよ。わかった?」
「え…でも…」
「さぁ!行きなさい!」
クリスが死神に飛びかかる。同時にシュクレンは走り出した。
「愚かなり…」
死神が大鎌を振る。しかしクリスはそれをかわし、足払いを繰り出す。
死神は軽く跳躍しかわす。
「でやぁっ!!」
跳躍した死神を両手で突き飛ばした。
「でああああっ!」
クリスは床を蹴って飛ばした死神に追いつき追撃に出る。何度も拳を突き出し殴打する。そして力を込めた一撃を放つ。
死神はその攻撃を大鎌で受け止め一瞬の隙をついて柄でクリスの腹を打つ。
「ぐっ!!」
体がくの字に曲がる。一瞬にして後方へ回り大鎌がクリスの背中を斬った。
「うああぁっ!!」
血飛沫が噴き上がりクリスは倒れた。
「まだ…まだやられるわけにはいかない…」
クリスは震えながら立ち上がり両手を顎の前に構える。そして呪文を詠唱し両手を前に突き出すと眩しい光が放たれた。
「なっ!?こしゃくな!!」
一瞬死神の動きが止まりクリスは間合いを詰める。そして気のこもった両手を死神の腹部へと叩きつけた。
「ぶふぁっ!!」
後方へ吹き飛び床に転がる。そこへ跳躍し馬乗りになったクリスが拳を顔面へと叩きつけた。
「うああおおおおおおっ!!」
何度も殴打し死神の頭が左右にブレる。しかし突然胸から鎌の刃先が飛び出してくる。
「え?…嘘…」
死神の大鎌はクリスの背中から刺さり胸へと貫通していた。
鎌の刃先から血が流れ落ちて死神の顔へと流れていく。
「あああ…そ、そんな…」
死神はクリスから大鎌を引き抜くと上に乗っているクリスを蹴り飛ばす。
クリスは力無く倒れるが傷口を抑え立ち上がろうとする。しかし、立ち膝のまま立ち上がることは出来なかった。
「まだ…負けない…まだ倒れるわけには…」
死神がクリスの前に立つ。
「愚かな…不浄ごときが死神と戦おうなどと!」
再び大鎌がクリスの体に振り下ろされ左肩から右脇腹にかけて切断された。
切り落とされた上半身が無造作に床に落ちる。
「シュ…クレン…ご、ごめんね…」
クリスの体から光の粒が上がりその体は徐々に光に包まれていった。