朝、肌寒さで目が覚めるとポタポタと屋根に水が落ちる音が聞こえていた。
布団の中で寝返りを打つと腰に鈍痛を覚えた。
雨の日は怪我が疼く…。ゆっくりと起き上がりシャワーを浴びて軽く朝食を済ませる。
コタツの暖かさに身を委ね、中にいる猫を足蹴にしながらも横になり惰眠を貪った。
微睡みの中で夢を見ていた。ひどく懐かしい感じの夢だった。内容までは覚えていない…。
時計を見るともう時刻は昼に近くなっていた。おもむろに車に乗り込み走り出す。
高規格道路を走り女川ICから山道を通り抜け万石浦へと抜けた。
万石浦はなぜかノスタルジーな気持ちになる。初めて万石浦へ訪れたのは免許を取ってからからだったから既に青年期だ。特にこれといった思い出はないのに…。
初めて万石浦を見た時はその美しい景色に感動したのを覚えている。
女川に到達するとローカルスーパーの『おんまえや』に入る。
目の前を移動ラーメン屋『あらどっこい』さんが走っていく。あら…遅刻しちゃった…。
もっともにしてこの天候で営業していたのかは微妙なところではあるが…。最近話題になっているようなので食べてみたいと思っている。
日曜日定休なのでハードルは高いのだが…。
しばらくおんまえやの駐車場で悩んでいた。これからどうしよう…何となく女川に来てみたものの何もすることがない。ただ、何となく来たかった。
今でも昔の女川の街並みは覚えている。よく遊びに来ていたから。
震災前の女川の街並み。マリンパル女川の屋上から撮影。
今は女川駅や商店街がある方面。
レトロな雰囲気の居酒屋さん。ちょうどマリンパル女川の裏手にあった。
女川の魚市場。
一日だけでいいからあの日の女川に戻りたいと思った。あの日にいた人達と会いたい。あの日に感じた心をもう一度感じたい。
あの空気、風、音、空、景色全てが尊くてたまらない。
あの日、私はここに立っていたのだ。あの日の女川のこの場所に。
時が止まったまま今日まで生きてきた。あの日に感じた心は凍ったまま片隅に閉じ込めていた。
あの頃の女川の町を胸にこれからも生きていくのだろう。