【宮城の不思議な話】『鹽竈の潮音』


 あれは数年前、俺が友達と一緒に鹽竈神社に初詣に行った時の話だ。
 元旦の夜遅く、参拝客も減ってきてた23時頃。202段の表参道の石段を登り切って、冷たい風に震えながら拝殿でお賽銭を投げた。


 その時、ふと耳に変な音が届いたんだ。
「ザザッ…ザザッ…」って、波が寄せるような音。でも、神社は松島湾を見下ろす丘の上にあるから、海は結構遠い。風の音にしては規則的すぎるし、不思議に思って友達に「聞こえる?」って聞いたら、「何が?」ってキョトンとしてる。俺だけ聞こえてるみたいだった。
 気味が悪くて、早々に帰ろうと裏参道の七曲坂を下り始めた。
 そしたらまたあの音。

「ザザッ…ザザッ…」


 今度ははっきり聞こえてきて、音の合間に何か声みたいなものが混じってる気がした。


「…しお…つち…」


 聞き取れないけど、確かに人の声っぽい。振り返っても誰もいない。
 七曲坂の木々が風で揺れるだけで、暗闇に赤い鳥居がぼんやり浮かんでるだけだ。
「塩土老翁神…?」って頭に浮かんだ。鹽竈神社の主祭神だ。
 まさかね、って笑いものにしたかったけど、背筋がゾクゾクして仕方なかった。
 友達は全然気づいてなくて、「早くコンビニ行こうぜ」なんて呑気に言ってる。
 でも俺は、もう我慢できなくて、スマホで録音を始めた。
 後で冷静に確認しようと思って。
 家に帰ってから再生してみた。


 最初はただの風の音。
 でも、途中から「あの音」が入ってる。


「ザザッ…ザザッ…しお…つち…おぢ…」


 明らかに「塩土老翁」って聞こえる。
 ゾッとしたのは、それだけじゃない。
 録音の最後、俺が「やっと坂下りた」って友達に言った声の後、女の声で「…次はお前が…」って小さく入ってた。
 友達は一緒に聞いてたけど、「何も聞こえないよ?」って。
 俺の耳がおかしいのかと思ったけど、録音にはハッキリ残ってる。


 次の日、気になって鹽竈神社のことを調べた。
そしたら、昔から「塩土老翁神が海から現れて参拝者を導く」って伝説があるらしい。
 特に元旦の深夜、潮の満ち引きが強くなる時間に、神社の境内で不思議な音を聞いたって話がちらほら。


 地元の古老によると、「あれは神様が海の声を連れてくる音だ。聞こえた奴は何か試されてるのかもしれん」だって。
 試されるって何だよって思ったけど、それ以来、風呂に入る時とか、海辺に行く時とか、妙に背後が気になるようになった。
 首筋に冷たい風が当たるたび、あの「ザザッ…」って音が頭をよぎるんだ。
 去年、実家に帰った時、母ちゃんにこの話したら、「お前、昔鹽竈神社で迷子になったことあったろ。あの時、お前を連れてきたおばさんがいたんだよ。首に変な赤い線があったのを覚えてる」って。
 俺、そんな記憶ない。
 でも、母ちゃん曰く、そのおばさんは「海の近くで拾った」って言ってたらしい。
 今でも録音ファイル残ってるけど、聞く勇気がない。
 鹽竈神社にはもう行きたくないけど、なんか呼ばれてる気がして落ち着かないんだ。


あとがき

いやぁ、鹽竈神社って地元では霊験あらたかな神社として有名です。掘り下げればもっと不思議な話が出てくるのではないでしょうか?

海に纏わる話はたくさんありそうですね!

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