初夏頃の話。
私はいつもの如くダイヤモンド日曜日を惰眠を貪ることで浪費していた。
「あ~いくら寝てもねみぃ…」
創作意欲もかき立てられることなく窓から流れてくる風に揺らぐカーテンを見つめていた。ぼんやりした頭を搔きながらリビングに降りていくとテトがいた。
テト「おい、もう昼だぞ!」
「いや~普段の労働で疲れててね…」
テト「君はいつも疲れっぱなしなんだな…ドラマ観ながらも寝てたろ?」
「ああ、草なぎ剛主演の『ペペロンチーノ』ね。途中までは観てたんだけどなぁ…」
テト「まったく…ラストはなかなか感動の展開だったお」
「感動か…そういえばあのドラマって牡鹿半島で撮影されたんだよね?」
そう、最後の舞台となった主人公のお店『パラディソ』は牡鹿半島が舞台だった。そして牡鹿半島には白い鹿がいるという話。
テナ「それ私も聞いたことあるよ」
「おお、テナさん!」
テナ「遠い島からずっと旅をしてきて今は誰も来ない半島で遠い故郷の空を眺めて佇んでるんだって」
テト「ロマンチックだお!」
「そうそう、なんかロマンチックだよねぇ。私も噂には聞いていたのだがなかなか行く機会が無くてね…」
テト「で?その白い鹿を探しに行くのか?」
「当然!テトさんも行くよね?」
テト「お、行くお!」
「テナさんは?」
テナ「私はすることがあるから二人で行ってください」
「…そっか」
こうしてまた家を飛び出し向かったのは宮城県の先端『牡鹿半島』だ。
牡鹿半島は宮城県屈指の自然豊かで人気の観光スポットだ。島にはいくつかの漁村(?)が存在しておりそれらを巡るのも楽しいし、なんと言っても目玉は半島を縦断するコバルトラインは走り屋に大人気のドライブコースとなっている。
牡鹿半島からの『万石浦』の眺望は最高だ。激しいアップダウンとタイトなカーブは車を運転する楽しさを与えてくれる反面事故のリスクもあるために安全運転で目的地に向かう。
着いたのはとある港。
テト「水が綺麗だお!」
「人家が少なくて生活用水を垂れ流しする量が少ないから汚染されてないんだろうね」
テト「君って時々いやらしい言い回しするよな…」
「まぁ、半分事実でしょ?んでこの港から徒歩で行くと白い鹿に逢えるらしいよ」
テト「ふーん…本当に何もないんだな…」
テトは辺りを見回しながら時々海を見ては泳いでる魚を指差した。あれ?なんだろう…この感覚…ずっと昔にこんな気持ちを感じたことがある。
そういえば私は幼少の頃にこういう港町で育ったのだった。周りにはいつも酒臭くしているおじさん達がいたなぁ。なんでふと思い出したのだろうか?ここは初めてきた場所なのにやたら懐かしく感じた。
-クレジット-
重音テト…ベ・ルル三錠様
アニメ調シェーダー…KAYA様