「わたくしは全てを破壊する魔女。言わばあなた達の敵ですわ。ルシファーが血眼になってわたくしを探しているはず」
「ああ、ルシファー様はお前の討伐をソウルイーターに命じている。以前なら俺達ハンターでも見つけ次第応戦するように言われていたが今は人手不足だ。俺達の仕事じゃない」
クロウは落ち着いた口調で話す。
「らしいですわね。今回の仕事で失った死神の数も相当ですわ。もはやデスドアは死神だけでは抑えきれない状況…もはやルシファーの体制は崩壊寸前ですわ☆」
「何が言いたいんだ?」
「クロウ、わたくしと組みなさい。そうすればこの膨張し続けるデスドアを抑え込み現世と結合させることによって第四次世界の構築に繋がるのです」
「第四次世界だと?」
クロウの言葉にクリスは頷いた。
「現世…つまり第三次世界はバランスが乱れ取り返しがつかないことになっていますわ。高度に発展し過ぎた工学、科学、医療は生と死の理すら破壊しようとしています。それはデスドアにも大きく影響しております。やがて死者しかいないはずのデスドアにも生きた者が堕ちてくる時がありますわ。妄想全てが形になる歪なデスドアには自我を持った者は危険なのです。ルシファーが恐れているのはデスドアが限りなく膨張し続けたらやがては現世の壁を突き破り生者が流れ込んでくることなのです」
「だからといってお前と俺様が組む理由はないだろう?」
徐々に城が砂のように崩れ始める。
「ありますわ☆それはわたくしがかつてのあなたの従者だった情けですわ」
「…え?」
シュクレンは思わず驚きクロウの大鎌を落としてしまった。
クロウは大鎌の変化を解くと翼をばたつかせて身を震わせる。そのまま羽ばたきシュクレンの頭へと留まる。
「…クロウ…クリスの…主?」
「元な」
「もう数百年前の話ですわ☆あなたがまだ平の死神のままだなんて驚いておりますわ。あれだけ出世に貢献してあげたのに」
「俺様はソウルイーターの仕事は合わねーんだよ。魂を滅するなんて殺伐としてやってられん。それに俺様はもうお前とは組まない!」
「それが答えですの?」
「ああ、俺様にはまた世話を焼かなきゃならない奴がいるからな!お前に構ってられねーんだよ」
クリスはシュクレンに視線を向ける。
「もし俺様がお前と組んだらこいつがデスドアの全死神を敵に回すことになる。そんな危ない橋は渡れねー」
「ではここでわたくしがあなた達と戦うことになっても?」
クリスは魔導書を開く。城の崩壊が進んでいく中でシュクレンとクリスは向き合う。
その光景を柱の影からダン国王の家臣ケイズは覗いていた。
「ダン国王はやはり敗れたか…だが妖の蒼月と銀麗の死神の情報を得ることが出来た。きっと“あの方”も喜ぶに違いない…」
不敵に笑みを浮かべると静かにその場を去っていった。
「お前は俺達とは戦わない」
「魔力を消耗しましてもあなた達をねじ伏せることなど容易なことですわ!」
「俺達がお前に勝つ見込みなんて少しもありゃしねぇよ!あんな化け物を倒しちまうんだからな!お前が俺らを倒してもなんのメリットもねぇからだよ!」
クロウの言葉にクリスは少し考える素振りを見せると静かに魔導書を閉じた。
「ほほほ、そうですわね☆今ここであなた達を倒してしまうよりも何かと利用価値がありそうですわ☆」
クリスはシュクレンに近付き手を握る。その手は温かく優しく感じた。
「…あの」
「クロウを頼みますわ☆あれでなかなか頑固者なんですの!」
シュクレンは頬を赤らめ頷いた。