24.魔女狩り

「ははは!!終わりだーっ!!」
ダン国王が再び牙を向けたその時、強烈な赤い光がダン国王の下半身を突き抜けた。

「チェックメイト…ですわ☆」
光は魔導書を持っていたクリスの左手から放たれていた。

「な、なんだと…あの光球は…」
「あれはただの囮ですわ☆見せかけだけの威力のない魔法…本命はこの左手に溜めていたのですわ☆」
ダン国王の下半身は完全に消失していた。クリスの両肩から手が離され上半身が床に落ちた。

「ぐ…」
倒れたダン国王をクリスが見下ろす。

「現世での肉体が滅び、このデスドアで魂が滅ぶ…つまりあなたの存在は完全に滅ぶ事になりますわ。最期に言い残す事はありませんの?」

「ぐふ…まさか数百年の時を経て再び同じ相手に滅ぼされるとは…な」
シュクレンは立ち上りフラフラと近寄る。

「セルビア…最後に…あなたを止めてと言っていた」
セルビアは再び魂へと戻り床に転がっていた。

「セルビアが…お前がセルビアを救ってくれたのか…そうか…あいつは俺の妾の娘だ。俺の正妻は子供ができない体だった…その事に妻は嫉妬し妾を投獄し拷問の末に子供を生むことができない体にしてしまった…だが俺の唯一の娘…一人の人間として人生を歩んでもらいたかった…」

「よくある痴情話ですこと☆」
クリスがため息をつく。

「だがセルビアは自分の運命を呪い続けたはずだ…どうにかしてやりたい気持ちでいた時に伝説の魔女の力を知ったのだ。伝説の魔女の血を与えればセルビアは一人の女として生きる事ができるのではないか…と」

「だからと幾多の魔女を殺し、お母様や叔母様を焼き殺す必要はありませんでしたわ!!あなたはただの暴君と化し歪んだ愛情に狂った化け物ですわ!!」
クリスは激昂し右手をダン国王に向ける。

「あの…クリス…お願い…話を聞いてあげて…」
シュクレンが恐る恐る感情的になったクリスを諭す。

「俺はこのセカイに墜ちてから繰り返される日々を目の当たりにしていた…そして俺は徐々に自我に目覚めていったのだ…気の狂いそうなほど繰り返される時間の中で…俺は再び魔女の力で境界線を破壊しこの狂気の世界と現世を繋ごうとしたのだ…全ては我が愛しき娘…セルビアが再び現世で生きるために…」
ダン国王の顔から険が取れ目から一筋の涙が流れた。

「でも…このセカイは…変わらない…だってあなたは…」
シュクレンはその涙を指で拭う。

「例えわたくしの血を飲んだとしても不老不死にはなりませんわ。ましてや損失した内臓が元に戻るわけもありません。全てはあなたが勝手に盲信して暴走した結果ですわね」
クリスが腕組みをし吐き捨てるように語気を強めた。

「ケイズからお主の通り名を聞いた時は因果を感じた…俺の命を奪った小さなナイフはこんなにも大きなものに成長していたのだなと…」
ダン国王は目を瞑る。

「セルビア…あなたの事…優しい父だったと言ってた」
シュクレンの言葉にダン国王は驚いた顔を見せた。

「優しい…父か…生きてる内に娘に言われてみたいものだな…」
ダン国王が一瞬だけ笑ったように見えた。

「言いたい事は以上ね☆ではとてつもない苦痛と共に消えてもらいますわ☆」
クリスが詠唱を始める。するとシュクレンがそれを制止した。

「…待って!」

「な、なんですの!?」

シュクレンが大鎌をダン国王の胸に突き刺す。

「あああああっ!?」
クリスは思わず叫び魔導書を手元から落としてしまった。

「この…俺の魂でさえも転生させるというのか」
ダン国王は光の粒となり徐々に形を失いガラス玉のような魂になった。

「クリス…ごめん…セルビアとの約束なの」

「はぁぁぁぁ…」
クリスが特大のため息をつき肩を落とした。だがすぐに笑顔をシュクレンに向ける。
その笑顔を見てシュクレンは安心した。

「ま、仕方ないですわね☆でもね、何億と点在する不浄セカイから見つけるのにどれだけ苦労したかわかるかしら?この罪は重いですわよ☆しっかり償ってもらいますわ!」
クリスはシュクレンを指差す。

「え…と、どうするの?」
シュクレンが不安そうに訪ねる。するとクリスは唇を舐めて言った。