23.魔女狩り

セルビアの剣はダン国王の牙によって防がれた。
「そ、そんな!?」
ダン国王の鋭い突きがセルビアの腹部に突き刺さる。
「ぐふぉっ!!」
その衝撃は凄まじくセルビアの背骨を粉砕した。激しく口から吐血し滝のように流れ落ちる。

「セ…セルビア…」
シュクレンは何とか体を揺らし脱出を試みるが首が強く締め付けられ視界が赤く見えてくる。
「シュクレン!!今は魂の力を防御に全振りしている!今俺様を振ったところでこいつには傷一つ付けることはできねぇ!お前は身を守ることに専念しろ!!」
「ク、クロウ…セルビアが…」
セルビアは力なく手足を垂らしていた。ダン国王はセルビアの口から流れる血を飲んでいる。

「ちっ!完全に魂が腐ってやがる。もう自我も無いみたいだぜ!とんでもねぇ化け物だ!」
突然ダン国王に向かって光弾が放たれた。思わず身を屈ませた拍子にセルビアが解放され床に落とされた。
「仕方がありませんわね☆こちらに向かってきなさい!ドラキュラ伯爵☆」
クリスは右手で光球を増幅させながら左手で光弾を放つ。

「クリス!!無茶するな!!」
「クロウ、わたくしを信じなさい!さぁ!魔女の血を飲めるものならば飲んでみなさい!!」
クリスは誘導するがダン国王は大口を開けシュクレンに咬み付こうとする。

「う…うあああっ!!」
シュクレンは大鎌を振ろうとするが腕が思うように動かない。
「意地汚いお口はこうですわ☆」
クリスはリング状の光を放つ。それはダン国王の口元に回り込むように嵌ると顔面を締め付け始めた。
ダン国王は苦しくなり思わずシュクレンをクリスに向かってに放り投げる。

「あら☆レディは丁重に扱うことを知りませんの?」
素早く左手を動かすと魔法陣が空中に描かれた。それが光と共に大きくなるとシュクレンをクッションのように受け止めた。

「ク、クリス…ありがとう…」
「どうってことはありませんわ☆」
「クリス!早くやっちまえ!!」
クロウの言葉にクリスは頷きダン国王に向かって右手をかざす。
「るおおおぉぉぉっ!!」
ダン国王は咆哮を上げながら突進してくる。徐々にその体は筋肉がひび割れ強固な鱗のようなものに変わっていく。

「さぁ、化け物退治の時間ですわ☆」
クリスは溜めていた光球を放つ。それは赤く瞬くと瞬時に加速しダン国王へ向かっていく。
「ガアァァァァッ!!」
ダン国王はそれをまともに両腕で受け止める。
その衝撃で床がめくれ上がりダン国王の背後を残し吹き飛んだ。

「ぐ…まだですわ☆」
光球は徐々にダン国王の体を押し出す。空気が激しく振動し壁を揺らして粉塵を舞い上がらせる。
「…クリス…頑張って…」
「一気に決めろーっ!!」
震えるダン国王の腕の筋肉がつぎつぎと断裂していく。その度に鱗が剥がれ落ち激しく出血を伴った。背中の筋肉が隆起すると一気に膨らみ破裂する。血がまるで噴水のように噴き出した。

「グ…ガァァァァーーーッ!!!」
ダン国王の怒号と共に光球は爆散し消えてしまった。轟音が何度も部屋の中で反響し徐々に収まると小さな瓦礫が崩れ落ちる音だけが耳に残った。

「あ…」
「お、おい、消えちまったぞ!?」
シュクレンとクロウは呆然とクリスを見つめた。魔導書を持ったまま立ち尽くしている。ダン国王の姿が徐々に人間の面影を取り戻した。

「凄まじい魔法ではあったが俺を滅ぼすには弱かったようだな。さぁ、伝説の魔女の血をいただこうか!!」
クリスの両肩を掴み持ち上げるとそのまま壁に叩きつけた。
「ぐ…もう少し優しく出来ませんの!?」
「俺はこれで不老不死だ!!永遠の王になるのだ!!がァァァ!!」
大口を開けクリスの首元へ牙が刺さろうとした時に動きが止まった。

「うぬぅ!?」
ダン国王の腰にシュクレンの大鎌が突き刺さっていた。
「…クリス、離して!」
「この小娘がァ!!」
無造作に腕を振り抜きシュクレンを弾き飛ばした。