シュクレンの体は“く”の字に曲がり弾き飛ばされる。しかし痛みはさほど感じずにすぐに立ち上がり飛び込むと大鎌を水平に振る。ダン国王はそれを受け止め弾く。
「す、素手で…!?」
弾かれた鎌の勢いを利用し体を捻り返しの一撃を繰り出す。
大鎌の一撃は再び素手で受け止められた。
「この体に刃は効かぬっ!!るおぉぉっ!」
シュクレンの腹にダン国王の拳が突き刺さり吹き飛ばされた。
「が…げぅ…」
シュクレンはすぐに立ち上がるが息ができない。
間髪入れずにダン国王の追撃が来る。
「シュクレン!次が来るぞ!耐えろ!!」
大鎌を振ろうとするが腕が痺れて動かない。上から拳が振り抜かれ頭が激しく揺れた。
地面に叩きつけられた直後に蹴り飛ばされ滑るように吹き飛んだ。
「痛…うあぁっ!がはっ!」
転がりながらすぐに立ち上がり臨戦態勢をとる。
「ほう、今までの奴らとは比べ物にならんほどタフだな…」
ダン国王が歩み寄る。
「うあぁぁっ!!」
シュクレンが体ごと無様に鎌を振る。
ダン国王の顔面に当たるが刺さる事はなく皮膚で止まっていた。
「そ…そんな…」
「ふふふ…タフなのは認めるが随分非力だな。所詮は小娘の華奢な力だ!!」
ダン国王は両手でシュクレンの首を掴み持ち上げる。徐々に力を込めていく。
「あ…が…ぁ…」
相当な力で首を締められてはいたが息が辛うじてできていた。
「クリスーっ!!まだか!?早くしないとシュクレンがやられちまう!!」
大鎌に変化しているクロウは叫ぶ。
「まだですわ!あと少し時間がかかりますわ!」
クリスの詠唱と共に光の球は徐々に大きくなっていく。
「ふん、ただの時間稼ぎか。この小娘の首をへし折って貴様はゆっくりといたぶってくれるわ!!」
ダン国王は更に腕に力を込めるとシュクレンの口から血が噴き出した。
「くそっ!シュクレン!耐えろ!!」
その時、シュクレンの懐からセルビアの魂が入った袋が落ちる。
「ん?なんだこれは?」
その袋から魂が転がってくると徐々にセルビアの姿に変わっていった。
「セ、セルビア…!?」
「ダン国王…なんと嘆かわしいお姿に…」
セルビアの目から一筋の涙が流れ落ちていく。
「何を言う。これが俺が求めていた究極の姿だ。あらゆる生物の頂点に立つことができるのだ。必ず不老不死の力を得て世界を統一し必ずお前も幸せにしてやれる!!」
「ダン国王…もうよろしいのです…私は死にました。あなたも…ただ死を忘れていただけなのです。もう我々はあの世界の住人ではありません…どうか私と一緒に行きましょう」
ダン国王は不敵に笑い首を振った。
「ぐふふ…死んだだと?俺は死なん!!未来永劫人民の頂点に立ち世界を支配し続けるのだ!!俺は…ガギギ…」
ダン国王は大口を開けると頬肉が裂け歯が抜け落ちるとその下から鋭利な牙が生えてくる。金属繊維の筋肉は更に肥大化し目が大きく見開かれると爬虫類のような瞳に変化する。
「さ、更に妖化しやがった!?くそっ!シュクレンを離しやがれ!!シュクレン!動けるか!?おい!!」
「ク、クロウ…」
シュクレンは微かにクロウの呼びかけに応えるが手足は力なく垂れ下がっていた。
「ダン国王…いえ、父よ…あなたは既に人の姿だけではなく心まで醜く腐り果てたというのか…」
セルビアは肩を落とし腰の剣に手をかける。するとその姿は徐々に鮮明なものになり実体化した。
「バ、バカな!?魂から再び元の姿に戻っただと!?どうなってやがる!」
クロウは驚愕していた。
「セルビアよ。お前はその刃を父である俺に向けるのか?」
「その娘から手を離せ!!この化け物が!!!」
セルビアは床を蹴り一気に間合いを詰める。