21.魔女狩り

「現世とデスドアを繋げるですって?」
「そうだ。俺とお前が手を組めば可能になる。死の無い永遠の世界なのだ。誰もが生を謳歌できるのだ」
クリスは肩を揺らし笑いだした。
「ほほほ!本気で仰っているのかしら?あなたにそれが出来て?現世とデスドアを繋げるのはおそらく可能ですわ。しかしあなたには無理…」
「なんだと?」
クリスの言葉にダン国王の表情が険しくなる。

「世界をひとつに繋げたところであなたはその世界を支配することなど出来ないでしょう。あなたが死してから何百年経っているとお思いかしら?その間世界は様変わり致しましたわ。魔法とは比べ物にならない超科学兵器が生み出され権力を持てば指先1つで数万人の命を瞬時に奪うことが出来ますわ。そんな現世とこのデスドアを繋げたところであなたは道に迷った子猫と変わりませんわ」
「ほう、実に興味深いな。この俺が何もできないとでも思っているのか?」
「わたくしは不老不死の力を得てから何百年という時間を生きてきたのですわ。目を覆い尽くさんばかりの惨事も嫌というほど見てきました。人類の歴史は戦争そのものです。そんな世界なら無くなってしまえばいいんですわ☆」
クリスが両手を合わせダン国王に突き出すと小さな光球が発生する。
詠唱を続けると徐々に大きく膨らんでいく。

「ぬぅっ!?こしゃくな!!」
ダン国王は床を蹴り一気に加速してクリスとの間合いを詰める。
「ッッッ!?」
突撃を食らったクリスの体は弾かれたが光球はそのまま留まっていた。

「ククク…この俺の力を侮っていたようだな!!貴様が数百年生きている間、俺もここで数百年の時を過ごしていたのだ!!これで終わりだ!!」
ダン国王が拳を振り上げた瞬間、何かに弾かれて勢いが止まった。

「ちぃ!結局来ちまったよ!!」
「…クリス、私も戦う!」
クリスの目の前にシュクレンが立つ。
「シュクレン…あなた、あれほど逃げなさいと言ったのに…」
「全くこいつは面倒くせぇんだよコイツは。久しぶりだなクリス!」
クロウは大鎌に変化したまま声を張り上げる。
「あら?やはりクロウあなたでしたのね。化け物退治はわたくし一人で十分でしたのに」
「その割には苦戦してたじゃねーか!?」
「苦戦?作戦ですわ。あと少しで倒せそうでしたのに」
クリスは立ち上がり服に付いた埃を払う。
「まだ魔女がいたのか!!」
ダン国王が腕を振り払うとその勢いでシュクレンは弾き飛ばされた。身を翻し着地するとクリスの下へ駆け寄る。
「…クリス、私…」
シュクレンが話そうとすると人差し指で口元を抑えた。
「詳しい言い訳はあとで聞きますわ。まずは一緒にあの化け物を退治しますわよ☆」
「…うん」
「チッ…見ろ。俺様の刃を受けて切り傷一つ出来ちゃいねぇ。コイツは想像以上の化け物だぜ!」
ダン国王は歪んだ笑みを浮かべると歩を進める。
「我が身は人を超越した究極の肉体。刃では肉すらも切り刻むことはできん。覚悟しろ!!」
「シュクレン!あなたに手伝ってもらいますわ!わたくしが魔法を完成させるまで時間を稼いでいただきますわ!」
「…魔法?」
シュクレンが留まっている光球を見る。
「まだそれは未完成ですわ!あの化け物を葬り去るにはまだ力不足ですわ」
「…時間は?」
「30秒ほどかしら。あなたに出来て?」
「…やってみる」
シュクレンは大鎌を構えて向かってくるダン国王の目の前に飛び出す。
大鎌を振りかぶり肩へ目掛けて振り下ろす。しかしその刃先は刺さることなく皮膚で止まった。

「…ッ!?」
「効かん!!効かんなぁ!!」
ダン国王の拳がシュクレンの腹部へと叩きつけられた。