17.魔女狩り

シュクレンは走って城の出口に向かう。
すると通路の先に女剣士セルビアが立ちはだかる。鋭い眼光がシュクレンを捉えた。

「待て!ここは通さない!!」
セルビアは既に剣を抜いている。
「はぁ…はぁ…そこを通して」
「ここを通すわけにはいかん。まさかあの娘達が本物の魔女だったとはな…こうなったらネズミ一匹たりともこの城から出すわけにはいかない!」
シュクレンに光る刃が向けられた。一瞬訪れた静寂。時間が止まったように見つめ合った。

「お前はどこからやってきたのだ?なんのためにこの国へやってきた?名はなんと申す?」
「…私は…シュクレン…」

するとセルビアの背後からカラスが飛んでくる。

「シュクレーンッ!」
「クロウ!」
シュクレンが右腕を差し出すとクロウが留まり黒い光と共に大鎌へと変化する。
黒い光はシュクレンにまとわりついて黒い紋様として浮かび上がると頭の三本の毛束が立ち上がる。碧眼がセルビアに向けられた。

「お前…!?」
セルビアはただならぬ雰囲気に思わず数歩下がり剣を構える。

「シュクレン!お前が回収する不浄の魂はあの女剣士だ!迷うな、思いっきりやれ!」
クロウが叫ぶ。

「うん…わかった」
シュクレンは大鎌を振るい構えた。その姿を見てセルビアは小さくため息を吐いた。

「なんとなく今の世界が何なのか理解していた…ここは私が生きていた世界ではないのだな。時折感じていた既視感の正体がなんとなくわかった。だが私はここでやられるわけにはいかない!!」
シュクレンとセルビアが武器を構え再び対峙する。
その光景をケイズは物陰から覗いていた。
「あれは…銀麗の死神…もはやこの国もこれまでか…ククク。噂にたがわぬその戦いぶりを拝見させてもらうとするか」

「私はダン国王をお守りせねばならん。お前はダン国王を狙っているのだろう?お前を倒しダン国王の下へ参る!!いくぞ!」
セルビアが踏み込み剣を突き出す。
シュクレンは大鎌でその剣を横に払い退け更に踏み込み間合いを詰める。

「ぐっ…!」
シュクレンは大鎌の柄でセルビアの腹を叩いた。体勢が崩れる。
そしてガラ空きになった体に大鎌を下から振り上げる。
しかしセルビアは素早く後方に飛び回避した。

「なかなか速いわね!だがその程度の攻撃では私は倒れん!」
「…セルビア…思い出して…」
「思い出す?何をだ!思い出すことなど無い!」
セルビアは叫び飛び出すと剣を振る。

「…このセカイは…不浄のセカイ…あなたがここにいるという事は…」
シュクレンは脱力し大鎌を持ちかえる。

「う…私は…」
セルビアの額に汗が滲み剣を持つ手が震えていた。

「私は生きているんだーっ!!」
セルビアは渾身の突きを繰り出すとシュクレンは大鎌を振り上げる。
大鎌によって剣が斬れた。

「うぁっ!?剣を…斬って…」
セルビアが斬られた剣先に気を取られる。

シュクレンはその隙に振り上げた大鎌を返し振り下ろした。
それはセルビアの胸に深く突き刺さった。

「がはっ!!う…」
傷口から光の粒が上がる。
「そ、そんな…私が…」
シュクレンは倒れかかるセルビアを抱き留めた。

「…セルビア…もうゆっくり休んで…」

「私は…ダン国王の隠し子…優しい父だった…私は血筋を知られるのを恐れ女としての生き方を失った…その私に剣を教えてくれたのだ…ダン国王を止めてくれ…あのままではダン国王は…」
セルビアの目から涙が流れ落ちる。

「…うん…わかった…」
シュクレンが頷くとセルビアは微笑んだ。

「ずっと…お守りしたかった…ダン国王…」
セルビアの体が光の粒になりガラス玉のような魂になった。