16.魔女狩り

「痛みを知らないのはお嬢ちゃんの方じゃなくて主の貴方の方ですわね?」
クリスはハンマーに変化しているブラックを指差した。
「なんだと?我を侮辱するのか?」
ブラックの言葉にクリスは笑みを浮かべる。
「ほほほ、力を求めた結果が従者の痛みを奪うとは実にあなたらしいですわね☆ブラック」
「貴様…どうして我の名を!?」
「あなたの従者がそう言っていたのを聞いていただけですわ。まぁ、全然知らないわけではありませんがあなたが知る必要はありませんわ。さて、どうするんですの?手詰まりのようですわね☆」
クリスは再び魔導書を開き頁をめくる。

「手詰まりだと?カカカ!我がブラックに敗北は無い!!ロウファ!我を力の限り振るうのだ。一撃でも当たればあやつとて無事では済まないはずだ、
魂の力を奮い立たせるのだ!!」
「りょ、了解しました」
ロウファはフラフラと立ち上がりハンマーを構える。しかし、その視界は半分奪われ呼吸も浅く足が震えていた。

「うう…」
ふらつくロウファの前に後から駆けつけてきた死神達が立つ。

「ふふ、ブラックよ。苦戦しているようだな?」
大鎌に変化しているカラスは不敵に問いかけるとブラックは鼻で笑う。
「ふん、苦戦などするものか。こんなものはただの準備運動に過ぎん」
「だが貴様の従者はだいぶ満身創痍のようだがな。我々に任せて貴様は家でミルクでも飲んでいるんだな!」
「カカカ!お前達にあの魔女が倒せるとは思えんが?」
ブラックの言葉に死神達が奮い立つ。
「我々とて簡単に貴様に手柄をくれてやるにはいかん!我が身を振るうがいい!!」
号令と共に死神達が一斉にクリスに飛びかかる。

「愚かですわ☆」
クリスは手をかざし光弾を放出する。死神はそれらを躱し間合いの中へと飛び込んだ。
「ほう…動きはなかなかですわ☆」
「もらった!!」
死神の大鎌がクリスの脳天に突き刺さるとそのまま体を二つに斬り裂いた。

「ははは!!やったぞ!!」
だが切断したクリスの体は消えてしまった。
「なんだと…!?」
「後ろですわ☆」
いつの間にか死神の後ろに回っていたクリスは右手を背中に押し付ける。
「ぐっ!!」
死神は跳躍して回避しようとするが右手から放たれた無数の光弾により四肢が吹き飛ばされた。
「ぐっ!おのれ!ここまでか!」
大鎌から変化を解きカラスの姿に戻り飛び立とうと翼を広げる。しかし、クリスは咄嗟にその足を掴んだ。

「は、離せ!お、お…おごぁぁぁ!!」
クリスに掴まれたカラスは再び大鎌に変化する。

「ぬぅ!?従者以外死神の大鎌を扱うことは出来ないはず!?」
「ほほほ!死神カラスごとき支配するのは容易なことですわ☆さぁ、これで私とあなた達は対等ですわ。魔法を使わなければ少しは楽しめそうですわね☆」
クリスは大鎌を構える。

「カカカ!だいぶ舐められているようだぞ?」
ブラックは高笑いし煽る。
「うるさい!黙れ!くそ!我々死神がこのような魔女に引けを取るとは…」
「魔女を狩るぞ!!」
一斉に死神が飛び出しクリスに向かって大鎌を振った。しかし、クリスはそれを全て受け止めて体ごと回転しながら大鎌を振るうと他の死神達は弾かれたように飛ばされる。

「くっ!」
「ほほほ!行きますわよ☆」
クリスは地面を蹴ると一気に加速し瞬時に間合いを詰めた。
大鎌を水平に振ると死神の体を腹部から真っ二つに斬り裂いた。

「な…」
驚愕している他の死神達に体当たりを食らわせ怯んだその隙間を縫うように走る。すると複数の死神の体が斬られ倒れていった。