4.魔女狩り

「このセカイの不浄の魂はおそらくは国王、そしてその家臣達だ。多くの魂を一気に回収できるが国王の魂は他の死神にくれてやってもいいだろう。そっちはソウルイーターの仕事だ。国王を倒せば他の魂は解放されるはずだ。俺達はその魂を回収すればいいだろう」
クロウの言葉にシュクレンは頷くが不自然にそわそわしている。目が左右に泳ぎ頬が赤い。
「どうしたんだ?怖いのか?」
「…キリコ…キリコも来てる?」
シュクレンは身を乗り出して訊くとクロウは頭を捻った。

「ああん?あのチャラ娘か?お前なぁ…なんかますます怪しい関係になってきたな!あいつらは来てないはずだ。他に大きな仕事しているはずだからな!ソウルイーターの中でもあいつらは出世しているからな。このデスドアではなかなか会うのは難しいぜ!」

「…そうなんだ…」
シュクレンは落胆し目を伏せる。
「ちっ…そんなに落ち込むか?とにかく他のやつに出遅れないようにするぞ。それと…国王の他に危険な奴がいる」
「危険…なの?」
「妖の蒼月という魔女だ。あいつは俺達と同じように不浄セカイに出入りしては不浄の魂を集めている。なぜ集めてるかは知らんが手段を選ばない奴だ。絶対に遭遇しないようにするんだ。奴にとっては俺達死神も標的だからな!!」
「その…魔女の特徴は?」
「見た目は不浄セカイによって姿を変えてはいるはずだ。性格はとにかく嫌な奴だ!それだけだ!」
クロウは首を左右に激しく振った。

「…知り合い?」
「俺ら死神の敵だからな!」
「これから…どうしたらいい?」
「城に入らない事に話は始まらない。上手い具合に捕まって城に投獄されるんだ。あとは俺様が侵入し城の中で合流する」

「でも私が捕まったらクリスは…?」
「ん?クリス?今クリスって言ったな?」
「うん…クリス…」
クロウは考えていた。
「あいつ…いや、何か考えが…いや、まさか…もしかすると…なんでもない!」
クロウはブツブツと独り言を呟いている。
「前にも言ったと思うがこの不浄セカイは変わらないんだ。結果は何一つな。仮にお前があの女を救った所で死ぬ事に変わりはない。そもそも死んでるんだ。死の記憶を失っているだけなんだ。魂を解放するしかできないんだ。お前の任務を果たせ!」
そういうとクロウは夜空に飛び立った。

「…変わらない…変えられない…セカイ…」
シュクレンは静かに窓を閉めた。

翌朝。

クリスとシュクレンは身支度をする。
髪を束ねて男の身なりをし、家を出て慌ただしい街を駆け抜ける。

「おい、どこへ行く!?」
一人の男が声をかける。
「シュクレンは喋らないで」
クリスは指で喉に印を施す。小さな魔法陣が喉の中へ入っていく。

「国王の命令だ!国境に監視に立てとの仰せだ」
クリスは野太い男の声で答える。

「う、そうか。わかった」
男は呆気なく騙されて歩いていった。
「ふぅ…国境まで後少しだわ!急ぐわよ!」
クリスが歩き出す。
シュクレンが空を見上げると無数のカラスが空を支配していた。

「…クロウ…」
シュクレンはクロウの姿を確認した。国境に近付くと何人かの兵が立っていた。

「おい、待て!この国から出る事は許されない」
兵達が二人を一斉に囲む。

「俺達は隣国の者だ。自分の国に帰るのだ。何か?それに商人である証の手形も持っている」
クリスが再び男の声で答えるといつの間に準備していたのか手形を兵に渡す。
「ふん、隣国の商人か。ケイズ殿の命令で何人たりとも国から出してはならないとの命令だ。引き返してもらおうか」
「それは困る。商品が仕入れられないのでは糧に困るというもの。そこを何とか通して欲しいのだが…」
「ならんものはならん!だが、どうしても通りたいのならば一つだけ方法がある」
「ほう、それはどんな?」
「お前達が死体になれば物として扱ってこの国から出してやろう!」