朽ちた柱が何本も立つ長い回廊をしばらく歩く。夕日の眩しい光が柱の影を大きく伸ばしていた。
「我が主様は夕焼けがお好きなようでな。いつもここは夕方なのだ」
大きく空間が開けてホールのような広い場所に着いた。そこにはたくさんの死神カラスと従者達がいた。
丸い碁盤のようなものを取り囲むように群がっている。
碁盤の中にはいくつもの石が置かれており、それが赤く光ったり点滅していたりした。
点滅を繰り返してる石が光を失うとパキッという乾いた音と共に亀裂が入って2つに割れた。
「またもや不浄にしてやられたか…」
誰かがそう呟く。
「あら、ブラックじゃないの?また従者を変えたのかしら?」
首に白い縁があるカラスがブラックに声をかける。
「ふん、ノスタルジアか。我に相応しい従者に変えたまでよ」
ブラックはそう答えるとノスタルジアに不敵に笑いかける。
「あんたって本当に飽きっぽいわね!」
赤い髪にピアスを付けた少女がイタズラっぽく笑いながら言う。ノスタルジアの従者キリコだ。
「三流ソウルイーターがほざくがいい。このロウファは貴様よりも優秀で強い!」
「うちのキリコよりも強いの?こんなに小さいのに?」
ノスタルジアがロウファを見る。
ロウファは瞳孔を猫のように細め鋭い視線をキリコに向ける。
「あんまり小さいのに無理強いしてるんじゃないでしょうね?それともロリコン趣味?」
キリコがロウファの頭を撫でようとする。しかし、その手は勢いよく弾かれた。
「つっ…!?」
「気安くワタシの頭に触るな。触れていいのはブラック様だけだ!」
「何よー!ガキンチョが粋がるんじゃないわよ!痛ってーっ!」
キリコの手が赤く腫れていた。
「怒らせない方がいいぞ。先程お前達が戦うのを避けてきた死蜘蛛のゲゼルを葬ってきたばかりだからな!気が立っている…ふふ。」
ブラックが不敵に笑う。
「あの…ゲゼルを…ねー…」
キリコの額に汗が滲んでいた。
「そうだ!お前達でも適わなかったっであろうゲゼルを一蹴したのだ!カカカッ!そこをどけ!」
ロウファはキリコを押しのけ歩いて行った。
ノスタルジアとキリコは二人の後ろ姿を見送った。
「ゲゼルをやっつけたのね!すごいわ!」
ノスタルジアが感心しているがキリコは仏頂面だった。
「あたいあいつ嫌いだったのよね!蜘蛛は苦手なのよー!見ただけでゾワゾワ来ちゃう!別に弱っちぃ奴だから放っておいても誰かやると思ってたけどね!」
キリコはロウファに弾かれた手を見ると腫れて大きくなっていた。
「ただあのおチビちゃんの実力は本物ね…骨折れちゃったみたい!痛っっ…。可愛い顔しながら結構馬鹿力持ってるみたいね!ほら、こんなに腫れちゃったわ!」
「えぇーっ!?キリコ大変!」
ノスタルジアは驚き目を丸く見開いた。
「もしかするといつかあたい達の前に敵として立つかもしれないわね!」
キリコは手を擦りながら興奮気味に微笑んだ。
「そうね。私達死神は仲間であっても味方ではないから。昨日の友は今日の敵…ということね」
「中には魂だけを横取りする狡賢い死神もいるみたいだしね!シュクレンもそういうのに当たらなきゃいいんだけど…あたいは心配だわぁ」
キリコはノスタルジアをチラッと見る。
「あなたが心配するまでもなくクロウがついてるから大丈夫よ!」
ノスタルジアの言葉にキリコは口を尖らせた。