第11話:遥かなるエデン
火星の血が俺を突き動かしていた。俺はアレン、17歳。火星生まれの船員見習いだ。月のクレーター都市で、ルナを連れ出す計画が動き出した瞬間、管理者のエリスに捕まったあいつを救うため、俺たちは走っていた。ドームの着陸場は混乱に包まれ、火星の仲間たちが管理者たちを足止めしてる。その隙に、俺とルナは宇宙船へ向かっていた。でも、エリスの冷たい声が背中に突き刺さる。
「逃がさんぞ、ルナ!」
ルナの手を握り、俺は全力で走った。彼女の白い髪が月の光に揺れ、息が切れてるのが分かる。
「アレン、私…!」
「喋るな! とにかく船までだ!」
隠し部屋にたどり着けば、火星へ逃げられる。トムが教えてくれたルートを信じて、俺たちは格納庫に飛び込んだ。船の扉が目の前に見えた瞬間、エリスが追いついてきた。彼女は警備員を従え、俺たちを囲んだ。
「終わりだ。お前たちに未来はない」
エリスの目が冷たく光る。俺はルナを背に庇い、拳を握った。
「未来はお前が決めるもんじゃねえ。ルナは俺と一緒に生きるんだ!」
その時、格納庫の端から叫び声が響いた。トムと火星の仲間たちが、管理者たちを押しのけて突入してきた。工具や棒を振り回し、混乱を引き起こす。トムが俺に叫んだ。
「アレン、今だ! 船に乗れ!」
俺はルナの手を引き、扉を開けた。隠し部屋に飛び込み、彼女を押し込む。扉を閉める直前、エリスが俺の腕を掴んだ。
「貴様…!」
彼女の力が強かった。でも、ルナが俺の背中を押した。
「アレン、行って! 私、大丈夫!」
その声に力をもらい、俺はエリスを振り払い、扉を閉めた。船内が静かになり、俺とルナは息を整えた。
船が動き出す音が響いた。トムが操縦室にいるはずだ。隠し部屋の小さな窓から、ドームが遠ざかるのが見えた。ルナが震える声で呟いた。
「私、初めて月を出た…アレン、ありがとう」
俺は彼女の肩を抱き、笑った。
「まだ終わってねえよ。火星に着いたら、新しいスタートだ」
ルナは頷き、俺の手を握り返した。彼女の白い血が、初めて自由を手に入れた瞬間だった。
その時、船のスピーカーからトムの声が響いた。
「アレン、聞こえるか? 月の連中が追ってくるぞ。覚悟しろ!」
俺は目を細め、ルナを見た。彼女は小さく笑って言った。
「私も戦うよ。アレンと一緒なら、何でもできる」
俺は立ち上がり、隠し部屋を出た。操縦室に着くと、トムが焦った顔で操縦桿を握っていた。後方モニターには、管理者の追跡船が映ってる。
「ちくしょう、しつこいな!」
俺が叫ぶと、トムがニヤッと笑った。
「火星の風を舐めんなよ。あいつらに勝てるさ」
船は加速し、追跡船との距離を広げた。ルナが操縦室に入ってきて、俺の隣に立った。彼女は窓の外を見上げ、呟いた。
「赤い地球…でも、私には希望に見えるよ」
長い追跡の末、追跡船が引き下がった。月の支配から逃れた瞬間だった。ドームの外、宇宙に浮かぶ赤い地球が輝いていた。俺たちはそれを見つめながら、初めて自由を感じた。ルナが言った。
「これが、私たちのエデンだね」
俺は頷き、彼女の手を強く握った。
「ああ。遥かなるエデンだ」