第8話:魔法の秘密
数馬英人はコンビニを出て、仲間たちと共に闇に包まれた街を進んでいた。鉄パイプを手に持つ彼の横には、拓也がバールを持ち、彩花が懐中電灯を握っている。佐藤は軍用のナイフを手に、美咲は応急処置キットを背負い、由美子は拾った木の棒を震えながら持っていた。遠くで爆発音が響き、炎が空を赤く染めている。
「おい、数馬。国会方面って言っても、どうやって追うんだ?」
拓也が息を切らしながら尋ねる。数馬は足を止め、答えた。
「音と煙だ。あいつが動けば、必ず跡が残る。そこを辿るしかねぇ」
佐藤が頷いた。
「確かに。あの化け物、隠れる気なんてねぇみたいだしな」
一行は焼け焦げた商店街を抜け、大通りへと向かった。道には車が放置され、ガラスが散乱している。遠くで「トゥインクル♪ トゥインクル♪」という声が聞こえ、数馬たちは一瞬身構えた。
「あそこだ!」
美咲が指さす方向に、あの黒いゴスロリ風の少女が立っていた。血と埃で汚れたドレスが風に揺れ、傘を手に無表情で歩いている。彼女が傘を振り上げると、近くのビルが膨張し、爆発した。コンクリートが崩れ落ち、塵が舞う。
「何!?ビルまで壊すのかよ!」
拓也が叫ぶ。佐藤が目を細めた。
「ただの力じゃない。あの傘、何か仕掛けがあるな」
数馬は少女の動きを見つめた。彼女が傘で触れるたび、物体が膨張し、破裂する。そのスピードと威力は異常だ。だが、数馬の頭に一つの考えが浮かんだ。
「待てよ。あの魔法……何か科学的なもんじゃねぇか?」
美咲が振り返り、驚いた顔で言った。
「科学?どういうこと?」
「分かんねぇけど、ただの魔法って感じじゃねぇ。あの膨張、なんかエネルギーが急に増えてるみたいだろ?」
佐藤が頷いた。
「確かに。自衛隊の装甲車も一瞬でやられた。あんな力、自然じゃねぇよ」
美咲が目を輝かせ、言った。
「もしそれが科学的な技術なら、エネルギー変換か物質の加速反応かもしれない。圧縮されたエネルギーが解放されてるのかも……」
拓也が苛立ったように叫んだ。
「おいおい、頭いい話はいいよ!どうやって止めるか考えろって!」
その時、少女がこちらを向いた。彼女の瞳が数馬たちを捉え、一瞬だけ動きが止まった。だが、すぐに傘を構え、「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と呪文を唱えた。地面が膨張し、数馬たちは咄嗟に散った。爆発が起き、衝撃で由美子が吹き飛ばされた。
「由美子さん!」
彩花が叫び、由美子に駆け寄る。彼女は足を押さえ、呻いていた。美咲が応急処置を始め、数馬が少女を見据えた。
「くそっ、やっぱり近づけねぇ……」
佐藤がナイフを構え、言った。
「距離を取れ。あの傘に触られたら終わりだ」
少女が再び歩き出した。彼女の背後で、国会方面へ向かう煙が立ち上っている。数馬は歯を食いしばり、叫んだ。
「待てよ!お前、何がしたいんだ!?」
一瞬、少女の瞳が揺れた気がした。だが、彼女は答えず、傘を盾に広げて歩き続けた。拓也が数馬の肩を掴んだ。
「おい、数馬!無茶すんなって!死ぬぞ!」
「分かってる。でも、あいつの目的が分かれば……何か手があるかもしれない」
美咲が由美子を支えながら言った。
「数馬君の言う通りよ。あの魔法が科学的なら、弱点もあるはず。エネルギー源とか、制御装置とか……」
佐藤が頷いた。
「なら、観察だ。あいつの動きを追って、隙を見つけよう」
一行は距離を取りつつ、少女の後を追った。彼女は大通りを進み、逃げ惑う人々を次々と傘で触れ、破裂させていった。その無慈悲な姿に、由美子が涙をこぼした。
「何で……何でこんなことするの……」
数馬は答えられなかった。ただ、少女の行動に奇妙な一貫性がある気がした。彼女が狙うのは、特定の人物――政治家や権力者ばかりだ。だが、なぜ?
やがて、少女が立ち止まった。目の前には高級車が数台停まり、スーツ姿の男たちが慌てて乗り込んでいる。政治家か富裕層だろう。少女が傘を掲げ、「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と唱えると、一台の車が膨張し、爆発した。男たちの悲鳴が響き、数馬たちは息を呑んだ。
「やっぱりだ……政治家を狙ってる」
数馬が呟くと、佐藤が言った。
「あいつ、国会に行く気だな。そこで一網打尽にするつもりか」
美咲が目を細めた。
「もしそうなら、あの傘に何か仕掛けがあるはず。私たちで調べられないかしら?」
拓也が笑いもののように言った。
「調べる?どうやってだよ!近づいたら死ぬだけだろ!」
数馬が鉄パイプを握り直し、決意を込めて言った。
「なら、近づかねぇ方法を考えよう。俺たちは生き残るだけじゃねぇ。あいつを止めるんだ」
少女が再び歩き出した。彼女の背後に、国会のシルエットが闇に浮かんでいる。数馬たちは距離を保ちつつ、彼女を追った。魔法の秘密が解ければ、希望が見えるかもしれない。だが、その先にはさらなる恐怖が待っていることを、彼らはまだ知らなかった。