魔法少女デッドオアアライブ 第5話『崩壊する秩序』

第5話:崩壊する秩序

数馬英人は煙と埃にまみれた大通りを抜け、拓也と彩花を連れて裏路地へと逃げ込んだ。背後では自衛隊のヘリコプターの残骸が燃え上がり、隊員たちの叫び声が遠く響いていた。あの黒いゴスロリ風の少女が去った後も、街は静寂を取り戻すどころか、さらなる混乱に飲み込まれていた。

「おい、数馬……どこ行くんだよ……」

拓也が息を切らしながら呟く。彩花は涙を拭い、震える足でなんとか歩を進めていた。数馬は周囲を見回し、答えた。

「避難所だ。テレビで言ってたろ、安全な場所があるって」

「安全?こんな状況で安全なんてあるわけねぇだろ!」

拓也の声は苛立ちに満ちていたが、数馬には他に選択肢がなかった。

「とりあえず動こうぜ。じっとしてても死ぬだけだ」

彩花が小さく頷き、三人は再び歩き出した。

路地を抜けると、そこは普段なら賑わう商店街だった。だが今はシャッターが閉まり、ガラスが割れた店が並び、荷物を抱えた人々が慌ただしく走り回っている。遠くで車のエンジン音が響き、数馬が目を凝らすと、高級そうな黒いセダンが猛スピードで通り過ぎていくのが見えた。後部座席にはスーツ姿の男が乗っていた。

「あいつら……政治家か金持ちだろ。自分だけ逃げやがって」

拓也が吐き捨てるように言う。数馬も同じ思いだった。街が崩壊している中、我先に逃げる者たち。だが、彼らを責める余裕すらなかった。

「気にすんな。俺たちは俺たちで生き延びるしかねぇ」

数馬の言葉に、拓也が小さく頷いた。

その時、商店街の奥から叫び声が聞こえた。「トゥインクル♪ トゥインクル♪」というあの声が続き、爆発音が響く。数馬たちは一瞬凍りついた。

「まさか……また来たのか!?」

拓也が叫び、数馬が振り返ると、黒いドレスの少女が商店街の中央に立っていた。彼女は傘を手に、逃げ惑う人々を次々と膨張させ、破裂させていた。血と肉が飛び散り、悲鳴が空気を切り裂く。

「逃げろ!」

数馬が叫び、三人は商店街の反対側へ走り出した。だが、道は人で溢れ、進むのもままならない。少女は淡々と傘を振り、まるで掃除でもするように殺戮を続けていた。

やっとの思いで商店街を抜けると、そこには避難所を示す看板が立っていた。「公民館へ500m」と書かれた矢印を頼りに、数馬たちは走った。背後では爆発音が続き、少女が近づいてくる気配がした。

「早く!もう少しだ!」

数馬が叫ぶと、拓也が彩花の手を引いて急いだ。公民館が見えてきた瞬間、遠くで新たなサイレンが鳴り響いた。テレビの音声が漏れ聞こえてくる。

「臨時ニュースです!国会が緊急会議を招集しました。異常事態に対応するため、自衛隊の増援が……」

だが、その声は爆発音にかき消された。数馬が振り返ると、少女が商店街を抜け、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。彼女の傘が夕陽に光り、黒いドレスが血でさらに赤黒く染まっていた。

公民館にたどり着いた時、そこはすでに人で溢れていた。自衛隊のトラックが停まり、隊員が避難民を誘導している。数馬たちは群衆に紛れ、建物の中へ入った。

「おい、数馬!家族は!?」

拓也が叫ぶ。数馬は周囲を見回したが、両親や妹の姿は見当たらない。

「分かんねぇ……はぐれたんだ」

胸が締め付けられる思いだったが、今はそれどころじゃない。彩花が震える声で呟いた。

「国会が動くって……止めてくれるよね?」

「さぁな。でも、自衛隊がやられたの見ただろ。簡単じゃねぇよ」

数馬の言葉に、拓也が拳を握った。

「くそっ、何なんだよあいつ!何でこんなことすんだ!」

その時、公民館の外で爆発音が響いた。窓から見ると、少女がすぐ近くまで来ていた。「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と呪文を唱え、自衛隊のトラックが膨張し、爆発した。隊員たちが銃を構えるが、少女は傘を盾に弾丸を防ぎ、次々と彼らを殺していった。

「ここもダメだ!逃げよう!」

数馬が叫び、拓也と彩花を連れて裏口へ向かった。だが、裏口にたどり着いた瞬間、扉が開き、数馬の目の前にあの少女が立っていた。

「トゥインクル♪ トゥインクル♪」

傘が数馬に向かって振り上げられた瞬間、拓也が彼を突き飛ばした。傘が地面に触れ、爆発が起きた。三人は衝撃で吹き飛ばされ、公民館の壁に叩きつけられた。

「数馬!彩花!」

拓也の叫び声が響く中、数馬は朦朧とする意識で少女を見た。彼女の瞳が一瞬、数馬を捉えた気がした。だが、すぐに背を向け、公民館の奥へと進んでいった。

耳鳴りが響き、視界が揺れる。数馬は這うように立ち上がり、拓也と彩花を確認した。二人は無事だったが、公民館はすでに崩壊し始めていた。

「おい、数馬……どうすんだよ……」

拓也の声に、数馬は歯を食いしばった。

「分かんねぇ。でも、まだ死ねねぇよ」

三人は瓦礫の中を這い出し、少女の去った方向とは逆に逃げ始めた。遠くで、国会が動き出したというニュースが虚しく響いていた。