魔法少女デッドオアアライブ 第2話『魔法少女の襲来』

第2話:魔法少女の襲来

数馬英人は地面に叩きつけられた衝撃で目を覚ました。耳鳴りがまだ頭の中で響き、視界がぼやけている。鼻をつく血と土の匂い。顔を上げると、目の前に拓也の慌てた顔があった。

「おい、数馬!起きろって!死ぬぞ!」

拓也が数馬の腕を引っ張り、無理やり立たせた。数馬はよろめきながら周囲を見回した。正門はすでに瓦礫の山と化し、コンクリートの破片が散乱している。遠くで悲鳴が響き、煙が立ち上っていた。

「何だよ……あれ……」

数馬が呟くと、拓也が校庭の方を指さした。

「あいつだよ!見ろ!」

そこにいたのは、あの黒いゴスロリ風の少女だった。フリルのついたドレスが血と埃で汚れ、長い黒髪が風に揺れている。彼女は傘を手に持ち、無表情で歩いていた。校庭にはすでに何体もの生徒や教師の遺体が転がり、血溜まりが桜の花びらと混じり合って異様な模様を描いていた。

「トゥインクル♪ トゥインクル♪」

少女の声が再び響いた。彼女が傘の先で地面を軽く叩くと、そこから膨張が始まり、次の瞬間、爆発が起きた。土と草が飛び散り、近くにいた生徒が巻き込まれて悲鳴を上げた。数馬は目を疑った。あの傘一本で、こんな破壊が起こせるのか?

「逃げようぜ、数馬!」

拓也が叫び、数馬の手を引っ張って走り出した。だが、校舎の裏手へ向かう途中で、数馬は足を止めた。

「待てよ、みんなは!?」

「知るかよ!生きてる奴は勝手に逃げるだろ!」

拓也の声は震えていた。数馬も同じだった。心臓が早鐘を打ち、足が震えて思うように動かない。それでも、二人は校舎の裏に続く細い通路へと逃げ込んだ。

背後でまた爆発音が響いた。振り返ると、少女が校舎の壁に傘を突き立てていた。「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と呪文を唱えると、壁が膨張し、コンクリートがはちきれんばかりに膨らんで破裂した。破片が飛び散り、数馬たちは咄嗟に地面に伏せた。

「何なんだよ、あいつ!何でこんなことすんだ!?」

拓也が叫ぶ。数馬は答えられなかった。ただ、少女の瞳が脳裏に焼き付いていた。あの無機質で冷たい視線。そこに感情は一切感じられなかった。

通路を抜け、校舎の裏庭にたどり着いた瞬間、二人は立ち止まった。そこにはクラスメイトの彩花がいた。彼女は膝をつき、肩で息をしていた。制服が血で汚れ、足に擦り傷ができている。

「彩花!大丈夫か!?」

数馬が駆け寄ると、彩花が顔を上げた。彼女の目は涙で濡れていた。

「数馬……拓也……良かった、生きてて……」

「何があったんだよ!?」

拓也が尋ねると、彩花が震える声で答えた。

「あの子が……教室にいたみんなを……傘で触って……爆発して……私、窓から飛び降りて……」

彼女の言葉が途切れると同時に、校舎の裏口からあの少女が姿を現した。黒いドレスの裾が地面を擦り、傘を手に持つ姿はまるで死神のようだった。

「トゥインクル♪ トゥインクル♪」

少女が傘を振り上げ、彩花に向かって突き出した。数馬は咄嗟に彩花を突き飛ばし、自分も横に転がった。傘が地面に触れた瞬間、そこが膨張し、爆発した。土が飛び散り、数馬の頬に熱い痛みが走った。

「彩花!拓也!走れ!」

数馬が叫び、三人は裏庭のフェンスへと向かった。だが、少女はすぐ後ろに迫っていた。彼女が傘を広げると、それは盾のように風圧を防ぎ、数馬たちの逃げる速度を鈍らせた。

「くそっ、何だよこれ!映画じゃねぇんだぞ!」

拓也が叫びながらフェンスにしがみつき、必死に登り始めた。彩花も震える手でフェンスを掴む。数馬は二人を先に登らせ、自分が最後尾に立った。

少女が再び傘を構えた。「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と呪文を唱え、フェンスの下部が膨張し始めた。数馬は慌ててフェンスを登り、拓也と彩花が手を伸ばして彼を引っ張り上げた。爆発が起き、フェンスが吹き飛び、三人は反対側に転がり落ちた。

「痛ぇ……」

数馬が呻きながら立ち上がると、フェンスの向こうに少女が見えた。彼女は傘を手にじっとこちらを見つめていた。だが、追いかけてくる様子はなかった。

「何だ……?追ってこねぇのか?」

拓也が息を切らしながら呟く。彩花は泣きながら地面に座り込んでいた。数馬は少女を見据えた。彼女の瞳が、再び数馬を捉えた気がした。

その時、遠くでサイレンが鳴り響き始めた。警察か?自衛隊か?分からない。ただ、数馬には一つだけ確信があった。あの少女は、ただの異常者じゃない。何か目的がある。

「行こう、数馬。あいつがまた来る前に!」

拓也の声で我に返った数馬は、彩花を支えながら走り出した。背後で、少女が傘を閉じる音が小さく響いた。