8.鋼鉄の処女

壁の奥から現れたのはまるで鋼鉄の棺桶のようなものだった。上部には少女の頭部を模した鋳物が装飾されている。

「イラララララ!私の最高のコレクション『鋼鉄の処女』を見るがいいわ!」
壁についてるバルブを回すと徐々に棺桶のようなものが観音開きに開く。
すると中には無数の鋭い針が光っていた。

「あ、あれに…リスティを…」
テレッサが震えている。
「イラララララ!この中に入った者の恐怖と絶望の声を聞いただけで私は絶頂に達するのよ!」

「この腐れ女が!この醜女めっ!よくも!よくもリスティを!!殺してやるっ!!」
テレッサが声を絞り出す。
イルーヴォ王妃の頬がピクンと動く。

「決めた!お前からあの中に入ってもらおうか!」
テレッサを抱きかかえると鋼鉄の処女の中に叩き込む。背中に無数の針が刺さった。

「うがぁぁっ!ひぐぅぅ…」
テレッサの背中からは大量の血が流れ出した。

「テレッサ…ダメ…ダメ…」
シュクレンは動こうとするが紐が固く結ばれていて解けない。
「イラララララ!この悲鳴が私を絶頂に導くのよ!!」
徐々に鋼鉄の処女が閉じられていく。
「シュクレン…どうしてこんな…助け…」
テレッサは涙を流していた。

「テレッサ!」
扉が完全に閉じられる。
更に締まっていく。
「うげあぁぁぁ!!痛い!痛い痛い痛い痛い!あああああっ!!」
テレッサの絶叫が部屋に反響する。

「あひぃ…この声…この声…たまらないわ!!」
イルーヴォ王妃は身を震わせて歓喜の表情を浮かべた。

「く、狂ってる…!」
シュクレンは目を固く瞑った。

鋼鉄の処女が開かれると穴だらけになったテレッサが針に突き刺さっていた。
激しく手足が痙攣していた。

「あああああ…うううええ」
イルーヴォ王妃が頭の髪を引っ張り出すと膝から崩れてうつ伏せに倒れた。

「次…あなたよ!」
シュクレンを抱き起こす。

「嫌っ!嫌ぁ!嫌ぁぁぁぁ!」
シュクレンは暴れるがイルーヴォ王妃は意に介さず無理矢理押し込もうとする。その瞬間、閃光が目の前を包み体が解放される。

「これは…?」
今まで見た事がない程に美しい花畑が広がっており、そこで小さな女の子が花を詰んでいた。
女の子はとても可憐だった。
急速に時は流れ女の子は美しい女性へと成長した。

「イルーヴォ王妃の…心?」
シュクレンはそれらの場面をただ見つめることしかできなかった。
若き日のイルーヴォ王妃は美しく国民からも親しまれる存在だった。しかし、その美しさを疎む存在がいたのだ。
イルーヴォ王妃の義母とその娘の姉妹達だった。

「何度言ったらわかるんだい!!」
激しく娘を殴打する。その場面はまさにテレッサとリスティそのものだった。
「ごめんなさい!痛いよ!」
イルーヴォは震えるしかなかった。やがてイルーヴォは王に見初められ王妃として迎え入れられる事になる。
だがその幸せを全て台無しにしたのが義母達だった。
「どうしてあんただけ幸せになるんだい!?」
激しい怒りを露わにし、イルーヴォの顔面に熱湯を吹きかけた。美しい顔はみるみる焼けただれ左半分は醜い顔になってしまった。
後にイルーヴォは義母を拷問の末に殺害。その時に今までにない解放感と快感が一気に押し寄せて失神したのだった。
醜く焼けただれた顔面と同じように心まで歪んでしまっていた。