「クロウ!」
シュクレンは右手を高く空に上げる。しかし空にいるクロウは降りてこなかった。
「…!?」
「何してるんだい?」
イルーヴォ王妃が鞭を振るう。
耳の鼓膜が震える音と共に背中に焼き印を押されたような激痛と衝撃が走る。
「うあぁぁぁぁっ!熱っ!熱っ!」
シュクレンはよろめきながら四つ足で逃げる。
「イラララララ!逃がさないよ!」
イルーヴォ王妃は追いかけもう一撃臀部に浴びせる。
「ぎゃおぅぅぅっ!!」
とてつもない痛みに頭が痺れ体が一直線に伸びて倒れて転げ回った。
「イラララララ!まだまだよ!」
シュクレンは耳を疑った。まだ打たれるのだ。
嫌だと思った。しかし体は痺れて動かず逃げる事が出来ない。
「や、やめて下さい!もうやめて!」
テレッサが制止に入りシュクレンの前に割って入る。
「邪魔だ!!」
イルーヴォ王妃はテレッサにも鞭を振るう。
「ああああぃぃっ!!!!」
テレッサの悲鳴が響き破裂音と共に服が破れて皮膚がみるみるうちに腫れ上がっていく。
「イラララララ!この者達を城へ!」
シュクレンとテレッサは兵達に抱えられていった。
裏口から暗い通路を通っていく。窓からはうっすらと外の光が漏れていた。
顔を上げて窓の外を見ると中庭があり、その奥にもう一つ部屋があった。
その部屋には大きな肖像画が飾られていた。
その姿はまさにイルーヴォ王妃ではあったが顔半分を覆った仮面は付けていなかった。
城の地下の一室に投げ込まれる。
その部屋は異様な雰囲気に包まれていた。悪臭が立ち込め、空気は澱んでいた。
床には大量の血が染み込んだ痕が見える。その中にはまだ新しいものもあった。シュクレンは立ち上がろうとするが手足が結ばれているために動けない。
「テレッサ…テレッサ…大丈夫?」
シュクレンが声をかけるとテレッサは身をよじる。
「いつつ…あんたは?」
「なんとか…ここは…?」
「拷問部屋ね…ここでリスティは…」
テレッサは歯を食いしばった。
リスティはここに押し込まれ拷問を受けた上に息絶えたのだ。
シュクレンの中に再び込み上げてくるマグマのような感情があった。
しかし両手両足は束縛され、頼みの綱のクロウが入ってくる窓すら見当たらなかった。現状は絶望的だった。
「イラララララ!お前達~」
イルーヴォ王妃が鞭を片手に現れる。
「私に抵抗した罪は重い。私がこの国の法律であり全てなのだ!」
鞭をシュクレンに振るう。それは腰に炸裂し体がエビ反りになる。
「うあっ!がっ!」
痛みに顔が歪む。前に叩かれた後は鬱血していた。
テレッサにも鞭を叩きつける。
「ぐああおぅっ!!」
テレッサは痛みでのた打ちまわる。
「イラララララ!」
イルーヴォ王妃は歓喜の声を上げる。
「快感!快感よ!!もっと痛みにのた打ちまわるがいい!その姿を私に見せて!!」
イルーヴォ王妃は歓喜に打ち震えながら鞭を振るう。テレッサもシュクレンも意識が混濁し動かなくなった。
「早いわね~もう少し楽しめるかと思ったのに!」
鞭を舐めながら壁の一部を押す。
すると壁が動き出し奥から何かがせり出てきた。