結局、一日探してもウサギ殺しの犯人の手がかりは見つからなかった。
「ウサギを殺した奴が不浄…なんて事あるかしら?」
キリコがノスタルジアに訊くとすぐに否定した。
「そんなのでこんな大きな不浄セカイを作り出すとは思えないわ。もっと強く純粋な想いが無いとここまで緻密なセカイは出来ないわね!」
「ふーん、そう…」
リュックとグレッグは黙々と仕事に励んでいた。
「おい!!グレッグ!何をしている!サッサっと土を運べ!!」
親方の怒号が坑内にこだまする。
「あい…」
グレッグは緩慢に動きトロッコに土を運び出す。それからグレッグは何度もミスを繰り返し親方に酷く叱られた。
「おい!グレッグ!今日のお前おかしいよ!少し休んだら?」
リュックは心配し声をかけるがグレッグの耳には届いていなかった。グレッグはそのまま炭鉱の奥へと消えていった。
そして、突然地震のような揺れと共に轟音が坑内に響いた。
「な、なんだ!?」
炭鉱夫達が驚きお互いに顔を見合わせている。すると凄まじい粉塵が視界を遮る。
「ぐっ…落盤だ!!どこだ!!」
「親方!!完全に出口が塞がれちまった!!」
「な、なんだと!?」
何らかの原因で落盤が起き閉じ込められたのだ。
「落盤はこの区間だけか!?」
「わからねぇ…少し調査しないと」
男達は困惑しながらも冷静になろうと声を荒げる者はいなかった。
「とりあえず状況を把握しよう。リュック、入口を確認してきてくれ!」
親方はリュックに指示する。そして、周囲を見回し一人一人の顔を確認する。
「ん?人数が足りないぞ!トン達はどうした?またあいつらサボってやがるのか?」
男達はお互いに顔を徴収見合わすと肩を竦めた。
トン、ティン、カンの三人はというといつものように影に隠れてタバコを蒸していた所に爆音が轟いたものだから驚き慌てていた。
「おい…もしかして…俺のタバコが原因か?」
「まさか!そうしたら俺達が死んでいるだろう?」
「そうだな…んじゃ落盤か?」
三人は顔を見合わせて目を左右に泳がせていると奥にグレッグが立ち尽くしているのが見えた。
「おい!グレッグ!一体何が起きたんだ!?説明しろ!!」
ティンが近付き膝を蹴飛ばすが微動だにしない。その手には大きなハンマーが握られていた。
「お前…まさか、そのハンマーで柱を叩いて落盤を起こしたんじゃないだろうな?」
「お前達、ウサギ、殺した」
「はぁっ!?俺達がウサギを殺したって?何を証拠にそんな事を言うんだ!」
「ウサギ、体に、この坑道の、土が付いてた」
グレッグは三人の手を指差す。
「おいおい、俺達が殺したって証拠はそれだけか?ここの土が付いてたならお前の手にも付いてたかもしれないじゃないか?それに三匹とも土が付いてたってわけじゃないだろ?」
カンがそう言うとグレッグは首を横に振った。
「俺、ウサギ、触らない…お前、どうして3羽だってわかった?」
グレッグの言葉に三人は顔をそれぞれ見合わせて一瞬の焦りを隠せなかった。
「お前達、絶対に許さない!」