7.紅い死の微笑み

翌朝。
グレッグは憔悴しきり街を彷徨っていた。その様子をキリコとノスタルジア、リュックが見ている。
「気の毒ね…大切に育てていたウサギが殺されたのよ…」
「一体誰がそんな事を?」
リュックは怒りで拳を握り締めていた。
「さぁね、わからないわ。グレッグに恨みを持つ人間の仕業かしら?」
「グレッグに恨み?あいつは少し頭は弱いけど、人に恨まれる事なんてしないと思うけどなぁ…だからといって罪の無いウサギを殺すのは許せないよ!」
その時、例の3人組の男がグレッグに絡み出した。

「おい!グレッグ!何ボーッとして歩いてんだ!?」
「邪魔だから道の脇を歩け!」
3人組の2人が罵倒してグレッグの尻を蹴る。しかし、グレッグは全く意に介さずぼんやりとしていた。

キリコはすぐに3人の所に行く。
「ちょっと!あんた達!やめなさいよ!このガリ、デブ、ハゲの3人組!!」
キリコの剣幕に3人組は驚き後ずさる。
「ガリ、デブ、ハゲとはなんだ!!俺達はきちんと名前があるんだ!!名前で呼べ!!」
「はーん?名前なんて言うのよ?」
「俺はトン、あっちはティン、そっちはカンだ!」
「んじゃ、トンチンカン!やめなさいよ!」
キリコは再び言い寄る。
「チンじゃねぇ!ティンだ!」
少し太っちょのティンが怒る。しかし、キリコはその体躯差を感じさせない力でティンを突き飛ばした。
「あたいは弱い者イジメが大っ嫌いなのさ!寄って集ってグレッグを苛めて楽しいわけ?喧嘩の相手ならあたいがなってあげるわよ!あたいのゲンコツは超痛いんだから!!」
「なんだと!?女の癖に生意気だぞ!!」
ハゲのカンがキリコの肩を掴んだ。その瞬間にリュックがカンの耳を掴み引っ張る。
「いででで!や、やめてくれ!耳がっ!!」
「炭鉱の男が女の子に手を上げるなんて最低だぞ!」
痩せ型のトンがリュックとカンの間に入る。
「リュック!すまない!もう許してやってくれ!」
トンの説得にリュックが離すとカンは耳を抑えてしゃがみ込んだ。
「俺達三兄弟はいつも監督にこき使われてイライラしてたんだ…それで鈍臭いグレッグに八つ当たりしていた…済まないと思ってる…」
トンは頭を下げて謝る。キリコは肩を竦めた。
「八つ当たりするような男なんて弱っちぃだけよ。もう二度としない事ね!」
キリコがそう言うと3人は頭を何度も振り頷いた。
「ところで…あたい達グレッグのウサギを虐殺した犯人を探しているのよ!まさかあんた達じゃないわよね!?」
キリコが凄むと3人は今度は頭を横に何度も振る。
「ウサギを飼っていたなんて今が初耳だよ!なぁ?」
ティンが同意を求めるとトンとカンは頷いた。
「そう…謎が深まるばかりね」