ふと懐かしい人を思い出した。最後に別れて13年になる。あれから身の回りは変化していったが、私だけは何も変わらず以前と同じ暮らしをしている。歳を取った分つまらなくも感じるが…。
あの日に帰りたいと思う瞬間がある。決して懐かしむようないい思い出があるわけでもないが、みんな若くて活発だったあの頃。今よりもずっと自由で好きな場所に何時でも行けた。好奇心もあって、いろんな場所や事柄に興味を持てた。
何よりも『未来はきっと良くなる』と思っていた。
嗚呼、現実は辛いものだ。ただ歳を取っただけでこんなにも気持ちが落ち込むのか。歳を取れば悩みなど無くなると思っていたが歳を取ったら取っただけ新たな悩みが出てくる。未来のことなど誰にもわからないのに来るのかどうかわからない老後のことを考えてしまう。
何よりも…自分を取り巻く環境がどんどん変わっていくのに自分だけが時が止まったように変化の無い毎日に辟易している。それを幸せと取るかどうかは別にして…。
あの人は今、どこで何をしているだろう?誰と暮らしてるのだろう?きっと今頃笑っているだろうか?
もう声も届かない場所にいるあの人が幸せに暮らしていると信じつつ孤独に昼飯を平らげて初夏の空を見上げていた。
…あの人の心の中にほんの一片でも私のことを思い出す瞬間はあるのだろうか?
その人と語り合ったのは時間にして30分程度だったと思う。その人のことを知るにはあまりにも短い時間ではあったが私にとって何年も忘れられない時間となったのだ。
初夏のぬるい風が車内を吹き抜けていった。午後も頑張ろう…。