8.学校

「キリコ!そろそろお遊びはおしまいよ!追い詰められた不浄は何をするかわからないわ!早くカタをつけるわよ!!」
ノスタルジアはキリコの周りを飛び回る。
「ノスタルジアーッ!」
キリコが右手を差し出すとノスタルジアが白金の槍へと姿を変える。
「そうね!窮鼠猫を噛むって諺(ことわざ)があるものね!あたいがこんな雑魚に不覚を取るとは思えないけど、万全を期して全力でコテンパンにしてあげるわ!!」
キリコの瞬速の突きが加奈の右肩を貫いた。

「うがぁっ!?」
それと同時に窓のガラスが粉々に砕け散った。
「結界が崩壊したわね?案外脆いものだわ!」
外からクロウが現れ倒れているシュクレンの周りを飛ぶ。
「シュクレン!大丈夫か!?おいっ!」
「…クロウ…大丈夫…夢…見てた」
シュクレンはゆっくり喋る。
「夢?…お前が?」
クロウは首を傾げる。
「…うん。もう忘れたけど…」
シュクレンは右手を差し出す。
「クロウーッ!」
クロウが右手に留まり大鎌へと変わる。
「シュクレン!チャラ娘に獲物を取られるなよ!だが、今のお前の魂の力はほとんど残されていない。手足も折れている。一振りだ。たった一振りで勝負をつけるんだ!」
「…うん、わかった」

加奈はキリコの敵ではなかった。圧倒的な力の差で軽く凌辱され片方の刃はもがれ体はボロボロだった。
「う…あぁ…嫌だ…嫌だよォ…消えたくないよォ…」
「なんだ~もっと抵抗してあたいを楽しませてくれないかなぁ?その大きな刃はただの飾りなわけ?」
加奈は残された片方の刃をキリコに向けて突き出す。しかし、簡単に捌かれ刃ごと腕が切り落とされた。
「うああああっ!!腕が…!?嫌ァァァァ!!」
加奈は両手の武器を失い、戦意を完全に喪失した。
「嫌っ!嫌だ!消えたくないっ!お願いだからもうやめて!!もうそっとしてて!誰にも迷惑かけないから!お願い!!あたしを助けて!!な、なんで死んでからもこんな目に遭わなきゃならないのよーっ!!」
加奈は怯えきっていた。体が小刻みに震え子犬のように丸くなっていた。

「あら?全く手応えないわね!もう命乞いするわけ?早いけどトドメ差しちゃうかしら!ちょっとは期待したんだけどな…あんたも結局つまらないわ!!」
槍を空中に放り投げるとノスタルジアが翼を広げ口を開け大きな銃へと変化する。

「こ、ここにもあたしの…居場所は…ないの!?あたしの、存在…なんて…どこにも……」
光が銃口に集中しエネルギーが増幅される。加奈は観念したように静かに目を瞑った。
「あ…嗚呼…」
「魂ごと砕け散りな!!」
引き金が引かれる瞬間、加奈の前にシュクレンが立ちキリコの銃を遮った。

「駄目…キリコ…やめて…お願い」

「な、なんなのよっ!危ないでしょ!それにどっちの味方してんのよ!早くそこを退いて!」
キリコは困惑し苛立った口調で話す。

「加奈…友達…だから」
「はぁっ!?」
キリコはわけがわからないといった表情でシュクレンと加奈を交互に見る。

「シュクレン…どうして?あたしはあなたを…傷付けたのに…殺そうとしたのに…」
加奈はへたり込み、目を涙で潤わせた。