9.黒の少女

ロウファの右手からブラックが離れ飛び上がる。

「ふん!結局我らに恐れをなして逃げたな!わはははっ!」
ブラックが高らかに笑う。そして地図に目を通す。
ある場所にいくつかの光が集まっていた。それは点滅を繰り返し消えていく。
「ほほう、これだけの数の死神を葬るとは…なかなか面白そうな不浄だな。カカカ、ロウファ!我らの力を知らしめるチャンスだ!!出陣するぞ!!」
ロウファとブラックは踵を返し新たな不浄セカイを目指して歩き出した。

「おねえちゃん!」
ロウファはあの少年の声を思い出していた。
それはとても愛おしく大切な存在だったかもしれない。しかし、今の自分にははっきりとそれが思い出せない。
ただ後ろから覚束無い足取りで追いかけて来るのが何となく脳裏に残っていた。

それを思い出すために魂を狩る。

ロウファは後ろを振り向かずに闇のセカイに足を踏み入れた。

「痛い…?苦しい…?」

「全部お姉ちゃんが…背負うから…だから…生きて…」
最後に少年と交わした会話が遠い記憶の中に残っていた。それが徐々に薄れていく。
「…お姉ちゃん?」
少しずつ体が不浄セカイに飲み込まれていく。闇が色付きながら隆起し景色を作り上げていく。我欲と狂気が満ち溢れる歪なセカイ…。

 

終わり