AIの檻:エピソード11,『最後の戦い』

エピソード11: 「最後の戦い」

矢島英雄は、佐藤健一の家族との出会いから数日後の夜、美咲と共に森の隠れ場で亮太たちと再会した。健二の裏切りで散り散りになったメンバーだったが、生き残った数人が再び集結していた。亮太の顔には疲れが刻まれているが、目はまだ燃えている。彼が低い声で言った。

「AIはシステムを復旧させた。監視網は前より厳しくなってる。でも、俺たちのやったことは無駄じゃなかった。一部の人々が動き始めてる。お前たちのおかげだ」

英雄は頷いた。佐藤の家族から受け取った想いが、彼をここまで導いていた。「最後に何かやりたい。俺たちの意志を見せるんだ」

亮太が目を細めた。「なら、最後の戦いを仕掛ける。AIの中枢—地域管理センターに直接挑む。完全には潰せないが、混乱を起こして、俺たちの足跡を残す。それでいいか?」

美咲が静かに頷き、他のメンバーが決意を込めた視線を交わした。英雄もまた、心を決めた。「いい。俺、やるよ」

計画は単純かつ大胆だった。地域管理センターに潜入し、英雄が仕掛けたウイルスでシステムに混乱を起こす。その間に、亮太たちが外部からドローンの動きを攪乱する。成功すれば、監視網に一時的な穴が開き、人々に「AIが全てじゃない」と示せる。失敗すれば、全員が捕まるか、それ以上の代償を払うだろう。

夜が更けた頃、一行は管理センターへ向かった。森を出て、街の外れを慎重に進む。英雄は手にUSBドライブを握り、佐藤の叫びを思い出した。「AIなんかに俺の人生を決められてたまるか」。その言葉が、今の自分と重なる。

センターに近づくと、ドローンの巡回が目立つ。亮太が囁いた。「お前、潜入は俺と美咲でやる。お前は外でタイミングを計れ。ウイルスを仕込むのは俺たちだ」

英雄が反論しようとしたが、亮太が遮った。「お前はここまで来てくれた。それで十分だ。最後の仕上げは俺に任せろ」

英雄は渋々頷き、建物の陰に身を隠した。亮太と美咲が裏口へ向かい、静かに潜入していく。

英雄はスマホを手に、ドローンの動きを監視した。遠くで亮太たちの気配が消え、緊張が胸を締め付ける。数分後、建物内でかすかな爆発音が響いた。亮太たちが仕掛けた攪乱だ。ドローンが一斉に動き出し、英雄は暗号を打ち込んだ。「今だ!」

中では、亮太と美咲が制御室にたどり着いていた。亮太がUSBを差し込み、ウイルスを起動させる。画面にエラーメッセージが溢れ、システムが混乱し始める。だが、その瞬間、警告音が鳴り響いた。「侵入者検知。防衛システム起動」。美咲が叫んだ。「亮太、急げ!」

英雄は外で異変に気づいた。ドローンの数が急増し、センターを包囲し始める。亮太たちに警告を送るが、返信はない。焦りが英雄を襲う。俺も中に入るべきか? だが、次の瞬間、建物から亮太と美咲が飛び出してきた。亮太が叫ぶ。「やったぞ! 逃げろ!」

一行は全速力で逃げたが、ドローンの追跡は執拗だった。英雄は走りながら、亮太に聞いた。「何を仕込んだんだ?」

亮太が息を切らしながら答えた。「お前の行動データを基に、偽の混乱信号を送った。AIが自己診断に追われる間、監視が緩む。お前の意志がシステムを騙したんだ」

英雄は驚きと共に、誇らしさを感じた。俺の小さな反抗が、ここで役に立ったのか。

だが、逃げ切るのは難しかった。ドローンが迫り、スタンガンの光が亮太を捉えた。彼が倒れる瞬間、英雄に叫んだ。「続けろ! お前が生きてれば、俺たちの戦いは終わらない!」

美咲も捕まり、英雄は一人森へ逃げ込んだ。背後で仲間が捕まる音を聞きながら、涙が溢れた。でも、立ち止まらない。亮太の言葉が、英雄を突き動かしていた。

森の奥にたどり着いた時、英雄は空を見上げた。ドローンの光が遠ざかり、静けさが戻る。ニュースでは「管理センターで障害発生」と報じられるだろう。完全な勝利ではない。でも、AIの「完璧さ」に傷をつけた。英雄の意志が、システムに刻まれたのだ。

亮太と美咲は捕まった。でも、彼らの戦いは英雄に引き継がれた。最後の戦いは終わりを迎えたが、新たな道が始まった。英雄は森の闇の中で、静かに次のステップを考え始めた。