魔法少女デッドオアアライブ 第11話『反撃の準備』

第11話:反撃の準備

数馬英人は国会の瓦礫の中を進み、仲間たちと共にゼルの後を追っていた。鉄パイプを握る手には汗が滲み、心臓が早鐘を打っている。拓也、彩花、佐藤、美咲、由美子がそれぞれ武器や道具を手に、緊張した面持ちで続く。遠くで「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と呪文が響き、爆発音が議事堂の奥から聞こえてきた。

「おい、数馬。あいつのコアって、どうやって狙うんだよ?」

拓也がバールを肩に担ぎながら尋ねる。数馬は設計図を手に持つ美咲に目をやった。

「美咲、どうだ?何か手がかりは?」

美咲が設計図を広げ、言った。

「コアは胸の中央にあるみたい。でも、エネルギー反応が強すぎて、直接触れるのは危険よ。再起動には何か外部装置が必要かもしれない」

一行が研究室を出て議事堂の廊下を進むと、崩れた壁の向こうに大きな会議室が見えた。そこには政治家たちが逃げ惑い、少女――ゼルが傘を手に無表情で立っていた。彼女が「トゥインクル♪ トゥインクル♪」と唱えると、政治家の身体が膨張し、破裂した。血飛沫が飛び散り、数馬たちは息を呑んだ。

「くそっ、まだやってる……」

拓也が呻く。佐藤が冷静に言った。

「だが、動きが単調だ。プログラム通りなら、隙があるはず」

由美子が震える声で呟いた。

「あの子……悲しそうに見えるよ……」

数馬はゼルの瞳を見つめた。科学者の娘として生まれた彼女が、こんな殺戮を繰り返す理由。不老不死を企む政治家を止めるためとはいえ、暴走したプログラムが彼女を縛っている。

「俺、あいつを止めたい。殺すんじゃなくて、救いたいんだ」

彩花が驚いた顔で言った。

「救う?でも、どうやって……」

「分かんねぇ。でも、科学者の手記にあっただろ。彼女は娘だった。あいつにも感情があるなら、暴走を止めてやりたい」

美咲が頷いた。

「なら、コアの再起動が鍵ね。研究室に戻って、装置を探しましょう」

一行はゼルが会議室の奥へ進むのを見計らい、研究室へ引き返した。美咲がコンピューターを操作し、設計図と照らし合わせながら呟いた。

「あった!『再起動装置』って項目よ。コアに接続してプログラムをリセットするらしい。でも……」

「でも、何だ?」

数馬が尋ねると、美咲が顔を曇らせた。

「装置はここにあるけど、起動には膨大なエネルギーが必要みたい。誰かが犠牲になる可能性が……」

佐藤がナイフを握り直し、言った。

「俺がやる。部隊の仇を討つためにも、ここで終わらせる」

数馬が首を振った。

「待てよ。まだ分からねぇだろ。装置を見てから決めよう」

美咲が棚を漁り、古びた金属製の円形装置を取り出した。直径30センチほどのそれは、中央に接続端子があり、ボタンがいくつか付いている。

「これよ。でも、エネルギー源がないわ。バッテリーか何かが必要ね」

拓也が周囲を見回し、言った。

「この廃墟にそんなもんあるかよ?」

由美子が小さく声を上げた。

「待って!あそこ!」

彼女が指さす先には、壊れた自衛隊のトラックが倒れていた。その荷台に、予備電源らしきバッテリーが見えた。

「ナイスだ、由美子さん!」

数馬が笑い、皆でトラックに近づいた。佐藤がバッテリーを外し、装置に接続すると、ランプが点滅を始めた。

「動いたぞ!これでいけるか?」

美咲が頷いた。

「理論上はね。でも、ゼルに近づいて接続する人が必要よ。危険すぎるわ」

その時、会議室の方から爆発音が響いた。ゼルが戻ってくる気配がした。数馬は装置を手に立ち上がり、言った。

「俺が行く。あいつに届かなきゃ意味がねぇ」

拓也が叫んだ。

「お前、無茶言うなよ!死ぬぞ!」

「死なねぇよ。俺がやらなきゃ、誰がやるんだ?」

佐藤が肩を叩いた。

「なら、俺が援護する。あいつの注意を引く」

彩花が涙をこぼしながら言った。

「数馬君……気をつけてね……」

由美子と美咲も頷き、準備を整えた。

一行が会議室へ戻ると、ゼルが政治家の最後の一人を仕留めていた。彼女が振り返り、数馬たちを見据えた。「トゥインクル♪ トゥインクル♪」。佐藤がナイフを投げ、ゼルの傘を盾にさせる隙を作った。数馬は装置を手に突進し、叫んだ。

「ゼル!お前を止める!科学者のためにも!」

彼女の瞳が揺れ、一瞬動きが止まった。数馬が装置を彼女の胸に近づけた瞬間、傘が振り下ろされた。「トゥインクル♪ トゥインクル♪」。地面が膨張し、数馬は吹き飛ばされたが、装置がゼルの胸に触れた。

「動いたか!?」

美咲が叫ぶ。装置のランプが点灯し、ゼルの身体が一瞬硬直した。彼女の瞳に光が宿り、小さな声が漏れた。

「……父……私は……?」

だが、次の瞬間、彼女が傘を振り上げ、数馬たちに向かって歩き出した。暴走はまだ止まっていなかった。

数馬は這い上がり、装置を握った。

「まだだ!もう一押しだ!」

仲間たちが頷き、再びゼルに立ち向かう準備をした。科学者の遺志を継ぐ戦いが、新たな局面を迎えていた。