仙台にひっそりと夜遅くまで営業している喫茶店がある。
純喫茶星港夜(シンガポールナイト)
である。
私は以前は毎週のように通いつめては作品の妄想をしたり物思いに耽ったりしたものだ。
音楽、美術などそれぞれに造詣が深いクリエイターが度々足を運ぶ喫茶店でもある。
だが一時期とある若者のTwitterでバズったことで認知度が高まり数多くのお客さんが足を運んでくれたがそれも一過性のブームに過ぎずに波が引くように客足が途絶え今は以前のようにひっそりと営業をしている。
以前は年中無休で営業していたのだが一日で客が5人とかいう日々が続いたのとコロナ禍の影響もあり今は不定休となっている。
私はもうマスターも歳なのでこれを機に店を畳むのかもしれないと危惧していた。ちょうど私は青森に出張に行っていたのと帰ってきた直後に交通事故で怪我をしてしまったがために訪れることは出来なかった…。
安心するな…この光…。マスターは光の表現に拘っている。絶妙に配置された照明は店を幻想的に演出し非日常的な趣きがある。
仙台の喫茶店は大体昼営業のみで夜やっている喫茶店は無いと思われる。でも星港夜は夜こそが本来の姿なのだ。
星降る夜に訪れると店内に客はおらずマスターがニッコリ笑って出迎えてくれた。
いつもの席に座り、いつものメニューを注文する。
三浦春馬さんの追悼コーナーがありました。そういえば三浦春馬さんはこの店に訪れたんだ。
この店に一緒に訪れた人達がいた。今はそれぞれ違う道へと進みお互いに遠くなっていった。
でもこの店は変わらずここにひっそりと存在していることが安心感があるというか…時間が止まっているような気さえする。
運命とたい焼き。
マスターは他の客が帰ったテーブルを拭いていた。そして小さくため息を吐いた。
疲れてるんだなぁ…。
実はマスターはこの喫茶店経営だけで生計を立てているわけではないのだ。
店の営業が終わると他の仕事をして家賃を稼いでやっとこ店を維持しているのだ。普通なら儲からない店など畳んでしまうだろう。売れなきゃ家賃だけで債務が膨らんでいく。
でもマスターには熱い想いがあるんです。
仙台から昭和の純喫茶文化を絶やしたくない!
という熱い想いがマスターに宿っているのです。
傍から見れば気楽な喫茶店経営かもしれない。でもその裏側では通常では考えられない努力をもってしてお店を維持しておられるのです。
一人か二人しか来ない客のためにお店を開けて待っててくれる…。
私は10年来マスターのファンなので最後の最後まで応援したいと思っている。
しかし、マスターもよる年波には勝てないらしく時々疲れた顔をしている。できることならばこの星港夜だけで生計を立てられるくらいに繁盛してほしいと思っている。
私にできることはこうしてブログに書くことだけ…いや、もっとできることはあるかもしれないがアイデアが浮かばない。
目まぐるしく変化する産業において上手く立ち回り変化していかなければ自然に淘汰されていくのは仕方ないのかもしれない。
それでも無くしてはいけない、失ってはいけないものがあるのではないだろうか?
一杯の珈琲から始まる夜もある。
星降る夜に運命と出逢う小さな喫茶店。
私はこれからの人生においてこのお店を忘れることはないだろう。
私が仙台が好きなのはこのお店があったからなのです。
純喫茶星港夜は来年12月27日をもちまして閉店致します。
でもお客様がたくさん来てくれたらマスターはきっと考え直して営業を続けてくれるかもしれません。
なので一度は行ってみてください。