「思い出した？あんたは死んだのよ！何度も夢を繰り返す内に狂っていった。あんたはあたいが消してあげるわ！！ノスタルジア！！」
キリコが右手を差し出すとノスタルジアが留まり白金の槍へと変化していく。
「ぐ…ぐおおおっ！！」
グレッグは雄叫びを上げると立ち上がりハンマーを構えた。
「俺、このセカイで生き続ける！ずっと、ずっと！！」
「残念だけど、今日が最後に見る夢だわ。あんたの魂はあたいの手によって砕かれるのよ！！」
キリコの瞬速の突きが放たれグレッグの腹部に槍が深く突き刺さった。
「ゲゥッ！？」
すぐにハンマーを振り下ろすがキリコは素早く回避すると地面を蹴って跳躍するとグレッグの顔面に膝蹴りを叩き込んだ。
「ゴァッ！？」
「さらにいくわよ！！」
着地と同時に追撃に出るがグレッグはすぐに体勢を整えハンマーを振り上げる。キリコはハンマーを足で受け止め蹴り出すと空中へと放り出された。
「危ない危ない！」
グレッグはキリコが落ちてくるのを待ち構えている。キリコが槍を振り回すと帯電し始め電気が迸る。
「少し痺れるわよ！！」
「がっ！？」
帯電した槍をグレッグの頭に叩きつけると眩しい光がスパークし、電流が頭から地面へと迸った。
「があぁぁぁぁぁっ！！」
坑内に肉が焦げる匂いが立ち込める。グレッグからは体の水分が蒸発する湯気が立っていた。
「終わったわ。電気椅子は準備出来なかったけど、仕方ないわね」
「ギギ…」
「キリコ！まだよ！！」
ノスタルジアの声に身構えるとグレッグが突然動きキリコに向かってくる。
「あんたは本当は被害者なのよね。ウサギと静かに暮らしたかっただけ…知っているわ。ウサギを見ている時のあなたはとても優しい目をしていたから。純粋がゆえに歪みも大きかったのね。その苦しみからあたいが解放してあげるわ！！」
「ぐぅおおぉぉぉぉっ！！」
グレッグのハンマーが地面に何度も叩きつけられる。激しい振動と共に再び落盤が発生し崩れていく。
「キリコ！時間が無いわ！このままだと私達も生き埋めよ！！」
「そうね！一気にカタをつけるわ！ノスタルジア！！」
ノスタルジアは一度槍から変化を解きカラスの姿に戻ると大口を開けて翼を広げると銃の姿へと変える。銃口に光が集まる。
「ぐがああいっ！！」
グレッグは何度も何度もハンマーを叩きつける。坑内は大きく崩落し、岩が頭上から落下してくる。キリコはそれを回避しつつ銃の出力を上げていく。
グレッグの体が一瞬膨らむと焦げていた皮膚が裂け筋肉繊維が露わになった姿へと変化する。
そしてキリコ目がけて突進を始めた。
｢キリコ！気を付けて！完全に不浄化したわ！｣
グレッグのハンマーが振り回されキリコはギリギリ躱した。
｢これじゃ一撃食らっただけでゲームオーバーだわ！ノスタルジア！もっとパワー上げるわよ！｣
｢もう十分倒せるパワーは溜まっているわ！｣
｢一瞬で終わせるようによ！最後の最後まで痛みや苦しみを与えるなんて可哀想じゃない！｣
｢キリコ…あなたって人は…絶対に外しちゃ駄目よ！｣
｢わかってるわよ！｣
グレッグのハンマーが激しく回転し筋肉が引きちぎれていく。
｢いだい！いだぇぇ！いでぇぇぇぇああぁぁっ！！｣
遂にグレッグのハンマーを受けキリコの体が弾かれ、空中で半回転する。
だが、その銃口はグレッグを捉えた。
「魂ごと砕け散りなさい！！」
キリコが引き金を引くと銃口からは眩しい光の帯が放たれグレッグの体を突き抜けた。
徐々に光は大きくなり肉体が完全に包まれ消失していく。
グレッグの体が完全に消滅するとガラス玉のような魂が残された。それも光の中に消えて砕けていった。