水が無い!
これは深刻だった。
だが、ご近所に生活で使っている井戸があったのでそちらを借りれば良いかと思っていたが夜の内にたくさんの人が訪れ水を汲んでいった。
翌朝には井戸が枯れて水が無くなっていたのだ。
深夜になれば幾分人は減るがひっきりなしに訪れる。
今までこんなに人が訪れる場所ではなかったし、井戸があるなんて知らない人も多かったはず。
とりあえずその日は寒くて体力も回復していなかったので家の中に引きこもっていた。
前の日に購入した豚肉は雪の中に隠していたのだ。
それを石油ストーブの上に置いたフライパンでジリジリと焼いて食べた。
時折揺れはしたが体の疲れはピークに達していてその場で横になった。
目が覚めると外は既に暗くなっていた。結構長い時間寝ていたようだ。
ペットボトルを持ち井戸に向かうがまだ多くの人がいた。
もう1箇所山の湧き水が出ている場所がある。そこは飲める水だが噴出量が少なくてペットボトル一つ貯めるにも時間がかかる。それでも背に腹はかえられぬと向かうと誰もいない。
幾つかペットボトルに汲み家に持ち帰り喉を潤した。
たったコップ一杯の水がこんなにありがたいとは…。
その日はまた横になり体力の回復を待つことにした。
翌日には役場に出かけ情報収集してると給水車が来るという情報を得たが肝心の場所がわからない。役場の人もわからないという。
これにはやや混乱したが多少の水の蓄えがあったので焦らずに済んだ。夜になればまた水を汲みにいける。
だがどこから情報を得たのか夜になるとその湧き水が出ている所に長蛇の列が出来ていた。
ペットボトル一つ汲むにも何時間と待たねばならない。
だが異変が起きていた。肝心の湧き水が濁って泥水になっている。余震で水脈が変わったのかもしれない。
しばらくは水無しの生活だったが頭は洗いたいとシャンプーで泡立て近くの小川で流した所頭の血管がブチ切れるのではないかと思うくらいに冷たかった。
あれから何かをしていれば気持ちも落ち着くだろうと水を高齢者宅に届けるボランティアをしていた。
自分にできることはこんなに小さいことだが高齢者には大変感謝された。
「神様のおかげだァ…神様に感謝せねばぁ」
って水を運んできたのは私なんだけどね…。
それから復興事業に関わり8年目にしてその役割を終えたが復興はまだ終わってはいない。
あれからもう10年…
まだ10年…
そしてこれからも…。