漆黒結社の総統がありがたい訓示を述べている。
「え~、この通り暑いので~、熱中症に~、ならないように~してください。であるからして~…うんたらかんたら…」
足元は鉄板である。我々戦闘員はまるでたい焼きくんだ。
頭からつま先まで真っ黒なスーツを着て立ち尽くしてるしかない。せめて総統の訓示が終わるまでじっとしていなければならないのだ。
「ちくしょう…くそ長ぇなぁ…」
前の戦闘員が愚痴をこぼす。これは私も感じていた。とにかく無駄に話が長いのに内容はさっぱり入ってこない。
「水分の~、摂りすぎによる~、体調悪化など~うんたらかんたら…」
さっきから言われなくてもわかっていることばかり繰り返し言葉を変えて喋っている。
正義の味方なんて気まぐれなものだ。我々が働かなければ彼らは動く必要がないのだ。
我々が用意周到に準備をして、さぁ!これからだ!!という時に待ってましたとばかりに登場して邪魔をするのだ。
こっちは土日祝日関係なしにタダ同然みたいな賃金で準備してきたのに…何が悪は許さん!だ。こっちが許せねぇつーの…。
「我々の働きが~、社会への~、制裁となり~、世界征服への~、第一歩として~、うんたらかんたら」
よくもまぁ次から次へと言葉が出てくるものだ。
「昨日のワイスピ見たが?」
隣の戦闘員は完全に飽きて上の空だ。いつかはあんな主人公になって活躍したいとも思うが我々は所詮モブキャラに過ぎないのだ。
無難にコソコソとダンゴムシのように生きるしかないのだ。
「というわけでございまして~、今日も一日頑張ってください!」
「ヒーッ!!」