【漆黒結社】戦闘員の憂鬱

-とある戦闘員キクオの日記より

ヒーッ!

俺は悪の漆黒結社に務める戦闘員だ。世界征服に向けて日頃から悪事を働いている。

この前は日曜日だってのに怪人が登場する時に使う煙幕のリハーサルで出勤させられた。

『煙と同時に登場したらボスっぽくね?』

なんてカニ怪人の野郎が発案したものだから俺ら戦闘員は日曜日の休みを返上してひたすら煙幕投げてた。もうふざけんなって休ませろよな!

俺はカニ怪人の野郎が大嫌いだ。横にしか動けねぇから前に動く時に神輿みたいに担がなきゃならねぇ。

『神輿やないねんから!』とか言いやがるがカニ怪人はカニ味噌どっさり詰まってるからクッソ重たいんだ。そのカニ味噌の本領を発揮することなく頭の悪いアイデアばかり出しやがって…!泡と共に消えやがれっ!

ちなみに日曜日出勤しても日曜出勤手当なんか出やしない。もう普通に日当貰って終わりよ。あんなカニ怪人野郎に向かって煙幕ぶん投げて貴重な人生の一日を終わらせてしまった戦闘員の悲しみなんてわからねえだろうなぁ。

そういや我ら漆黒結社にもコロナワクチンの案内が来ていたな。俺ら代わりがきく戦闘員にもワクチンを打って貰えるんだからありがたいものだ。

戦闘員の休日は上司の私用に呼び出されて無くなる事が多い。総統閣下のゴルフに付き合って『ナイッショ!』っていう仕事とか、怪人達の愚痴を聞く飲み会で散々飲まされて二日酔いで倒れてたり、せっかくの休みも正義の味方との戦いで負傷して寝たきりになっていたり…戦闘員ってやつは本当に辛いぜ…。

でも俺らにしか出来ない仕事があるんだよな。今度の仕事はマンボウ怪人を倒した正義の味方に向かって『奴は四天王の中でも最弱…今度は俺が相手になろう』というカニ怪人の隣で肩を揺らしながら嘲笑う仕事だ。

いつかはこんな漆黒結社辞めて普通の職場に入りたいぜ。