11.鋼鉄の処女

「イラララララ!お前も私の血になれーっ!」
扉が勢いよく開くと中からただの肉塊となったイルーヴォ王妃の肉体が崩れてきた。すると部屋の空気が勢いよく吸い込まれる。それは鋼鉄の処女の中へ空気が流れていた。

「イラララララ!憎い!憎い!!憎い!!!」
体が鋼鉄の処女に吸い込まれる。
「おい!シュクレン!耐えろ!あの中に突っ込まれたんじゃ死神装束でもお前を護れない!」
「でも…力が強い…!」
徐々に体が引き込まれる。
「俺様を床に刺せ!!」
クロウの指示通りに床に大鎌を刺すが吸引力はますます強くなり体が浮き上がる。
「うう…ああああ!」
「シュクレン!絶対に俺様から手を離すなよ!こうなったら持久戦だ!いつまでも吸い続けるわけにはいかないだろうぜ!」
「うう…でも…」
シュクレンには体力が残されていなかった、
徐々に大鎌の柄を握る手が滑っていく。
「おい!シュクレン!力を振り絞れ!離すな!離すんじゃねぇ!!」
「クロウ…もう…駄目…!」
シュクレンの手が大鎌の柄から離れる。
その瞬間、テレッサが鋼鉄の処女の中に入る。
「テレッサ!?」
「シュクレン!!リスティの仇を…討って!!」
再び扉が閉まると吸引が収まりシュクレンは床に落ち、すぐに大鎌を手にして構えた。
「今だ!シュクレン!!ぶった斬れ!!」
「はぁぁぁぁっ!!」
シュクレンの足元から黒い光がほとばしり大鎌に宿る。

「イラララララーっ!このクソ女めぇぇぇぇ!!邪魔しやがってぇぇっ!!」
扉を開きテレッサを吐き出す。テレッサは糸の切れた操り人形のように無造作に床に倒れた。再び吸引が始まるが、その勢いに乗って黒い光を宿した大鎌を鋼鉄の処女をめがけて振ると刃先の空気が振動する。
死者の叫びのように禍々しい風切り音が発生して急激に加速し鋼鉄の処女を横一文字に斬り裂いた。上部が完全に切り離され床に落ちた。
「イギョオォォォォォォ!!!!」
断面から凄まじい量の血が噴き出し激流のように流れていく。
「ち…凄まじいな!過去にこれだけの血を吸っていたとはな!」
「…イルーヴォ…」
床に落ちたイルーヴォ王妃を見る。禍々しい表情とは打って変わって子供のように顔をしかめて泣いていた。
「私は…生まれてくるのではなかった…!」
シュクレンが手を差し伸べようとした時にイルーヴォ王妃の断末魔の叫びと共にそれは形を失い崩れ落ちた。

シュクレンの右手からクロウが飛び立つ。