12.魔女狩り

ダン国王は死神の魂を口にした事で絶大な力を手に入れていた。
元々逞しかった肉体は更に大きくなり筋肉が隆起している。太い血管が露わになり目は血走っていた。
4人の死神がダン国王と対峙していた。
「ちぃ!たかが不浄ごときに我々死神が苦戦するはずもない!デスドアにおけるヒエラルキーが崩れるはずはないんだ!!食らえっ!!」
死神は大鎌を振るうがダン国王の素早い動きを捉えきれない。
「くっ…あの体躯でその速さは!?」

「ふははは!これが魂の想いの力とやらかっ!」
ダン国王は死神の左腕を掴むと無造作に引きちぎった。
「いぎゃあぁぁぁっ!!」
肘から先が引きちぎられた死神は痛みにのた打ちまわる。

ダン国王は引きちぎった死神の左腕を口に運び肉を食いちぎる。
「ふはは!新鮮な肉は美味い!実に美味だ!」
「お、鬼め…!」
他の死神が恐れ始め後退し始めた。

「この世界が変わる!!決して終わる事のない無間地獄のようなこの世界を我が手中に治める時が来るのだ!!」
ダン国王が歩み始める。
それに気圧され死神が更に距離を取る。
「どうした?かかってこんのか?」
「ぐっ…!」
死神の足はガクガクと震えてすくんでいた。

すると突然大きな扉が勢いよく開き背後から一人の少女が現れた。一斉に死神は視線を送る。
「誰だ!?お前は!?」
その少女が右手を上げるとカラスが留まる。カラスは黒い光を放ち大きなハンマーに変化した。それと同時に黒服に炎の紋様が浮かび上がる。

「ぬぅ!?」
今までの死神とは全く違う事にダン国王は気付いた。

「はははは!貴様など我が滅してくれるわ!我の名はブラック!そして従者はソウル・イーター、ロウファ!」
ロウファは黒く長い髪をツインテールに結んだ可憐な少女だった。
身の丈より大きなハンマーを軽く振ると地面へと叩き下ろした。その振動で床全体が震える。

「お前達は下がっていろ…邪魔だ」
ロウファは冷たい視線を死神達に送る。そして腕を引きちぎられ意識が混濁している死神に近付きしゃがむ。

「痛いか…?」
ロウファは問いかける。

「あ…ああ…」
死神は涎を垂れ流し意識ははっきりしていない。

「苦しいか…?」
ロウファは再び問いかけると立ち上がる。

「ワタシには無い感覚だ…」
ロウファはハンマーを死神に振り下ろす。死神の体が潰れて四散した。

「お前!?仲間を!!」
他の死神が叫ぶ。

「仲間…?いつからだ?ワタシはお前達を仲間と思った事はない…」
ロウファは無表情のまま猫のような目を向ける。

「くっ…」
「わはは!ロウファはまさにデスドア最強の死神となるのだ!貴様らでは足でまといだ!消え失せい!!」
ブラックが高笑いするとロウファはハンマーを振り回し周りの死神を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた死神達は意識を失い大鎌の変化を解いた死神カラスが飛び立っていく。

「ふふん、従者を置き去りにするとはな!ロウファ、思う存分我を振るうがいい。この不浄はかつてない強敵。お前の力を全て引き出して戦う必要がある。我々の力を見せつけルシファー様からの信頼を勝ち取るのだ!」
「わかりました。ブラック様」
ブラックの指示にロウファは頷くとハンマーを引きずりながらダン国王へと近付いていく。

「くくく、ただのガキだと侮っていたがその力はなかなかのようだ。だが俺に勝つことはできない。世界に王は一人でいいのだ!!」
ダン国王は両手を広げてまるで熊のような構えを取った。
ロウファとダン国王の周りの空気が陽炎のように乱れ歪み始めた。