7.黒の少女

「ゲハーッ!!」
グレッグがハンマーを勢いよく振り下ろす。
ロウファはそのハンマーをハンマーで打ち返した。凄まじい轟音と共に強い衝撃がグレッグの腕を弾き飛ばした。
「ゲァッ!?この力はっ!!」
両手が痺れハンマーを手放した。
「ぐうぅぅぅ!許さなぁい!!」
グレッグは勢いよく前蹴りを繰り出す。ロウファはその蹴り足を蹴って勢いを利用し跳躍する。
「ゲァッ!?飛んだ!?」
ロウファのハンマーが振り下ろされグレッグの右肩の骨を粉砕した。

「ゲハッ!?がっ…!!」
着地と同時にグレッグの膝に水平にハンマーを打ち込む。
巨体が半回転し地面に倒れた。膝の骨が粉々に砕け、苦悶の表情を浮かべる。あまりの痛みか声すら上げられずに震えていた。

「グゲァ…あがっ…ひぎぃぃぃぃ!!」
グレッグは額から脂汗を流し、顎がガクガクと揺れ、カチカチと歯を鳴らしていた。ロウファがゆっくりと歩みを進めて近寄る。

「痛いか…?」
ロウファの目がクククとぎこちなく下がりグレッグを見下ろす。そのロウファの視線にグレッグは怯えた表情をする。

「げふぁ…あ…足が…あぁ…!!いでぇぇぇ!!」
歯がギリギリとなり亀裂が入るほど食いしばり立ち上がろうと左腕を立たせる。今度は肘にハンマーを叩きつける。
グレッグの腕はあらぬ方向に曲がり無造作に顔面が地面へと叩きつけられる。
「苦しいか…?」
ロウファはしゃがみグレッグの顔を凝視する。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ…また…殺される…何度も…何度も……!嫌だァーっ!!!もう殺さないで!!」
グレッグは大粒の涙を流し、たちまち涎と鼻水でグシャグシャの顔になった。
「カカカ!泣いておる!かの凶悪極まりない不浄もこのザマだ!カカカ!ロウファ!トドメを刺してやるのだ!!」

「泣く…?ワタシには無い感情だ…。」
ロウファはグレッグの脳天にハンマーを叩きつけた。
グレックの頭蓋骨が粉砕され脳が噴き出し、しばらく痙攣をしていたが息絶えた。

ブラックがロウファの右手から飛び上がりハンマーの変化を解いた。

「良くやった!あのノスタルジアめが苦戦した不浄をあっさり屠ったぞ!カカカ!」
ブラックは歓喜しクチバシを鳴らしている。
ルシファーは拍手し称えるとグレッグの死体に指を這わせる。するとグレッグの死体は徐々に小さくなり、光となって爆ぜて消えた。

「素晴らしい!実力は本物ですね。このデスドアに溢れる魂は3億を超えています。それに対し死神の数は4千余り…ソウルイーターに限っては100名程しかおりません。あなた方の活躍を大いに期待しておりますよ」
ルシファーはそう言うと廃墟の奥へと消えた。

「は!ありがたきお言葉!このブラック、粉骨砕身尽くします!!」
ブラックはルシファーを見送るとロウファと共にホールへと戻る。
「ロウファ、どうだ?死神の体に慣れたか?」
「ええ。しかし、ワタシが叩いたらあの男は痛がっていた。ワタシは痛みというものを知らない。蜘蛛に叩かれた時も何も感じなかった。あれはなんですか?」
「カカカ、貴様は知らなくてよい。痛みなど必要ないのだ。その苦しみも知らないままの方が良い。知れば今のままの強さではいられないからな」
「…そうですか」
ロウファは何となく腑に落ちなかった。確かに痛みというものは何も感じなかった。ただ頭の中に漠然と痛いという言葉だけが残っていた。
痛みを感じることで何かを思い出せるような気がしたのだ。