17.紅い死の微笑み

トンとカンの体が小さくなり、ガラス玉のような魂が残された。キリコはそれを踏み潰し粉々に砕いた。
「本当に滅するべきはあんた達だったんだわ!!」

鉱山が轟音と共に砂のように崩れていき、街に溢れていた人達も建物も砂となり闇の中へ解けていく。
「また一つのセカイが消えていくわ…」
「キリコ、あなたの心に去来するものはなんなのかしら?達成感?それとも喪失感?」
ノスタルジアの問いにキリコは肩を竦めた。
「さぁね、あたいにはそんな感情はないわ。ただ一つの仕事を終えただけの事よ。このデスドアにはまだたくさんの不浄セカイがあるんだから!」
目の前には瓦礫が溢れるデスドアの世界が広がっていた。

「ふふ、あなたらしいわ。今回の仕事も何の落ち度もなくこなしたわね!」
「当然よ!あたいだもの!」
キリコは左腕に巻かれた赤いバンダナを絞め直す。そして、ノスタルジアを見る。
「ノスタルジア、あたいとの約束覚えるわよね?」
「覚えているわ。そのためにあなたの感情の大部分を残したのよ」
「あとどれくらい頑張ればいいのかしら?」
キリコの問いにノスタルジアは少し考える。
「まだまだ先は長いわ。でもルシファー様に認められればより大きな仕事がいただけるの。そうすればより目標達成まで早く近付くわ。それはあなた次第よ」
ノスタルジアの言葉にキリコは頷き左腕のバンダナを撫でる。
「早く会いたい…そのためにあたいは頑張るの。こんなセカイから早く脱出するわ!」
「そうね…私も応援するわ」
ノスタルジアはやや視線を逸らしながら言った。
「ノスタルジアも一緒に来てくれるわよね?」
「え?」
突然の言葉にノスタルジアは虚をつかれたように目を丸くする。
「あたい達は主従関係だけど、もう友達同様じゃない!これからもずっと一緒にいたいわ!」
キリコはノスタルジアのクチバシを突っつく。ノスタルジアは体をビクつかせるとそっぽを向いた。
「わ、私は死神カラスよ!ルシファー様にお仕えする死神なの!あなたを見送った後も別な従者を従えて働き続けるのよ!」
ノスタルジアは翼をばたつかせながら話すが少し考えた。
「ルシファーの支配下から脱出できたら?もう自由になれるわよ!あたい達が力を合わせればそんな事も出来るんじゃないかな~?」
「まぁ、別にそれも悪くはないわね。そろそろ引退を考えてもいい頃だし…」
「ふふ、決まりね!あたい達の前途は明るいわよーっ!本気で頑張っちゃうんだから!」
キリコは駆け出し、ノスタルジアはその後ろ姿を追った。

デスドアには幾多の魂が堕ち、現世への未練からそれぞれの不浄セカイを作り出す。
それは我欲と妄想に満ち、都合の良い夢を見続ける。繰り返された魂は狂い腐っていく。

その魂を狩る者と滅する者がいる。魂を滅する者を『ソウルイーター』と呼んだ。

終わり