11.紅い死の微笑み

リュックが目の前の石を避けると光が差した。
「ま、眩しい!外だ!出れたぞ!やったぁーっ!」
すると光の向こうから手が差し出された。
「リュック!!良かった!無事だったのね!地面が揺れてまさかと思って来てみたら落盤事故だったわ!みんなは!?」
キリコはリュックの手を握る。リュックの体はまだ大きな岩に挟まって出てこれなかった。

「みんなは怪我してるけど無事だよ!水と食料と薬を麻袋に入れて準備しててほしい。この腰に巻いてるロープに縛って中に届けるんだ!」
「わかったわ!とりあえず外に出て!」
キリコはリュックの体を引っ張るが微動だにしない。
「いてて!岩が邪魔で…ちょっと待って…体勢を変えれば…うぁっ!?」
突然リュックの顔色が変わる。

「リュック!?どうしたの!?」
「凄い力で引っ張られ…うぐぅ…」
リュックの顔が真っ赤になる。
キリコは全力でリュックの手を引っ張るがズルズルと引き込まれていく。

「いってぇ!体が千切れそうだぁ!!」
リュックが苦しそうに叫ぶ。その顔は真っ赤になった。

「リュック!頑張って!!ロープを解くのよ!!」
「ダメだ!体に食い込んで…うう…あああ!!」
リュックが少しずつ引き込まれてキリコも穴に引っかかる。

「いたたた!!」
キリコの顔に岩が押し付けられる。
「キリコ!は、離すんだ!」
「い、嫌よっ!せっかく外に出れるのよ!ここで離すもんですか!!」
「まだ…合図も送ってないのに!?ううっ!なんで…!?」
「あたいの手も千切れちまうよっ!!」
キリコの表情が歪む。

「キリコ!ファイトよ!」
ノスタルジアが周りを飛び回りエールを送る。

「あ、あんたも手伝いなさいよぉーっ!」
キリコが叫ぶ。

「あら、手があるなら手伝ってあげてもよくてよ」
ノスタルジアはキリコの服をクチバシでつまむと引っ張る。

それでもリュックはどんどん中に引き込まれる。

「キ…リコ…離せ…」

「嫌…よ!だってここで離したら…リュックは…」
「僕が…どうしたって?」
「あたいの…独り言…ああ…!?」
汗で滑り繋いだ手が離れた。

一瞬、リュックの表情に怯えた色が見えた。何かを喋ろうと口を開けた瞬間に体が引き込まれる。
「うあああぁぁぁ!!!!」
体が岩に激突する音が何度も聞こえてリュックは凄まじい早さで穴の闇に消えていった。

「リューーーック!!!」
「キリコ!こうなったらやるしかないわね!!」
ノスタルジアがキリコの周りを飛右肩に留まった。

「でも…リュックが…」
「キリコ、結果は変わらないの。わかってるでしょ?あなたの仕事を…」
「…そうね。やるしかないか…」
キリコが立ち上がる。