4.ひとときの休日

「好きだから!あたいシュクレンの事大好きだから!だから何でもしてあげたくなるの!もっと仲良くなっていろいろ知りたいわ!」
キリコはシュクレンの両肩を掴み笑顔で答える。

…ドクン

(あんたなんか産まなきゃよかった)

…ドクン

(死ねバーカ!)

…ドクン

(親にも見捨てられたって…)

薄ぼんやりとした声が少しずつ鮮明になっていくような気がした。
何度も頭の中で聞こえていた声は現世の記憶なのだと確信した。
「…あぅ…スン…ああ…」
シュクレンの目から涙がこぼれ落ちる。とめどなく溢れる涙を止めようとしたが拭いきれなくなり泣き出した。
「あらあら、どうしちゃったの!?」
キリコはシュクレンを抱き締めた。

「うぅ…うあぁぁぁぁ!!ありがとう…ありがとうキリコぉ…!うわぁぁぁぁっ!」
シュクレンは大泣きした。どうしてなのか本人もわからなかった。ただただいろんな感情が心の中で溢れて綯い交ぜになってわけがわからず泣いた。
思えばこのデスドアで誰かに感情を出したのは初めてだった。

「うんうん、よしよし、今まで独りで頑張ってきたんだね」
キリコはシュクレンの頭を優しく撫でる。そして手を握り満面の笑みを向ける。
「あたい達は友達だよ!」
「…トモダチ…」
「うん!ずっと友達!!」
手を引っ張ると部屋の扉へと促す。シュクレンが扉を開けると背中を押す。

「シュクレン!」
キリコが手を差し出す。シュクレンはまたその手を握る。

「また会おうね♪」
「…うん、また」

二人の手はゆっくり離れた。

闇に向かって歩き出した。後ろで扉が閉まる音がして振り向くとそこには何も無く闇が広がっていた。

闇から羽ばたく音が聞こえた。それは肩に留まり言った。

「シュクレン!仕事だぜ!」
「…うん」

ここは上も下もないセカイ。
我欲に狂った不浄の魂が溢れるセカイ『デスドア』。

こうしてまた魂を狩る死神の仕事が始まった。

 

終わり