1.ひとときの休日

ドクン…

(お前なんか産まなきゃよかった)

ドクン…

(死ね!バーカ!)

ドクン…

(親にも見捨てられたって…)

突然眩しい光に目を覚ます。
そこは光溢れる部屋だった。そして柔らかいベッドの中にいた。

「…ここは?」

頬に突然何かがへばりついた。

「うぁっ!?」
無理矢理引き離すとキリコが口を尖らせていた。
「あ…キリコ?」
「んー…あ、オッハヨー!シュクレン!」
目を覚ましたキリコが満面の笑みで再びシュクレンに抱きつく。

「…キリコ…!」
「よく眠ってたわね!あまりにも起きないから寝てる間にいろいろしちゃった!」
キリコは舌を出しておどけて見せた。
「…いろいろって?」
シュクレンは目を細めて問う。
「傷の手当よ!もちろん手当のために服を脱がせたりしたけどぉ~」
キリコはシュクレンの両頬をつまみ引っ張るとおどけてみせた。

「…ねぇ、ここは?」
シュクレンは改めて見回す。白いカーテンが微風に揺らぎ、窓からは光が差していた。
白い壁と高い天井の広い部屋だった。窓から外を眺めると青々とした大地に遠くには雪を被った山が見えていた。その麓に湖も確認できる。
「…外がある?」
「ああ、あれは作り物よ。本当は真っ暗なのよ。ここはデスドアよ。妄想が形になるの」
「…そう、この部屋は?」
「ここはあたいの部屋!あたいくらいの上級死神になるとね、こういう部屋が貰えるのよ!シュクレンも頑張ればきっと貰えるよ!」
「…よくわからない」
「暖かいベッドで寝た方が体力の回復も早いわよ~!あたい達死神は寝ないと怪我も治りにくいし、死神カラスとのリンクも上手くいかなくて鎌の切れ味も悪くなっちゃうのよ!」
「…そう」
「もっともシュクレンはなんかクロコに大切にされちゃってるみたいだし、疲弊するまでこき使われないでしょ?」
シュクレンはふとクロウの事を思い出した。
「…クロウは?どこ?」
「そっか、シュクレン寝てたものね!クロコから休暇を貰ったわよ!だからその怪我が治るまできちんとお休みするといいよ!」
「…うん、ありがとう」
キリコは満面の笑みで頷くと立ち上がり服を着替える。
「お腹空いたでしょ?ご飯作るわ!」

「ルンタッタ~♪ランチャラポ~ン♪」
キリコは鼻歌交じりにキッチンで食事の準備をしている。その手さばきは慣れたもので次々と料理が出来上がっていく。
シュクレンはぼんやりとそれを見ていた。
「あたいさぁ、料理が趣味なのよね!仕事が休みの時はきちんと自分で料理して食べるのよ。なんて言ったって不浄セカイの料理なんて味がしないのが多いんだから。不浄は食べることには無頓着なのが多いのよね!」
「…そうなんだ?」
「あたいの役職柄ってのもあるけどね!ソウルイーターなんてカオスな不浄を相手にしてるから殺伐としてるのよ。ハンター時代は結構緩い仕事してたのにね!」
「…ハンター?」
シュクレンは首を傾げる。
「ハンターはシュクレン達の一般職よ。腐敗が進んでない魂や不浄になって間もない新しい魂の回収をして浄化するの。攻撃性も低くて比較的安全ね。最初は誰でもハンターから経験を積んでソウルイーターに昇進するのよ」
「…知らなかった」
シュクレンの様子にキリコは微笑んだ。
「クロコは昇進には興味無さそうだからそういう話はしていなかったのね」

「さぁ、たんと召し上がれ♪」
食卓には色とりどりの豪華な食事が並んだ。