6.ガラスの心

キリコはワニに連続攻撃を叩き込むが一向にダメージを与える事が出来ない。
「こんなに堅いの初めてよーっ!」
いくら突いても叩いても傷もつかない。ワニの攻撃を寸前で躱しすぐに攻撃を加える。シュクレンは戦い慣れているキリコの体捌きを美しく感じていた。

「キリコ…駄目…」

「はぁっ!?あんた目覚めてたの!?何が駄目なのよ!?」
「…あの体は想いの形…だから…いくら攻撃しても…魂には届かない」
シュクレンはキリコを遮るように前に立つとワニへと近付いていく。

「ちょ…危ないわよ!?あんた弱っちぃんだから引っ込んでなさいよ!!本当に死ぬわよ!?」
ワニは凄まじい勢いで突進をしてくる。

「…ジャック!思い出して!」
シュクレンが叫ぶとワニがその動きを一瞬止めた。

「…ジャック!」

(捨てられた…捨てられた!憎い!憎い!)

ワニが再び動き出しシュクレンに襲いかかる。

「今ね!ノスタルジア!!」
キリコが空中に槍を放り投げるとカラスに戻り、再び右手に留まる。
ノスタルジアが口を大きく開け翼を広げると大きな銃になった。
光の粒子が銃口に集まる。それに伴い水路全体が暗くなっていく。

(棄てられた…棄てられた…)

ワニがシュクレンを食らおうと大口を開ける。

「シュクレン!!今だ!!魂の力を全開に上げて俺様を振れぇ!!」
大鎌を後ろ手に構え力を溜める。そして大鎌が唸りを挙げて半円を描きワニの口から胴体まで一気に切り裂いた。

「…やった!?」
だが斬ったのは皮だけだった。露わになった筋肉が大きく脈打つと大口を開けて突進してくる。
「あの堅い皮膚を斬っただけでも十分だな!だが次は確実に肉を斬れるぞ!!」
「…ジャック…思い出して…」
大鎌を振り上げるがそれよりも速くワニは首を振りシュクレンを鼻先でかち上げた。

「あ!」
天井に叩きつけられると落下しワニの口の中へ入っていく。
寸前で大鎌を挟めて留まった。
ワニが口を閉じようと暴れ通路の壁に頭を何度も叩きつける。
「あ…ぅ!」
シュクレンは大鎌にしがみつき口の中で体を振られ牙に接触し傷付いていく。
「あ…が!」
「シュクレン!このままじゃジリ貧だぜ!いいか!よく聞け!俺様は一瞬だけ鎌の変化を解く。ワニの口は閉じるがお前は牙に挟まれないように注意しつつ口の奥へ移動するんだ!内側から切り裂いてやろうぜ!!」
「わ、わかった…」
クロウが大鎌の変化を解きカラスの姿へ戻るとワニの口が瞬時に閉じられた。

「シュクレン!?食べられた!?」
キリコが思わず叫び銃の引き金を引こうとする。
「待って!キリコ!あのままクロウがやられるわけないわ!今のままチャンスを待ちなさい!」
ノスタルジアの指示に従い銃の照準を合わせる。
「シュクレン!早く出てきなさいよ…!」

その時ワニの喉を突き破りシュクレンが飛び出した。

「シュクレン!下がって!」
キリコの声にシュクレンが下がると銃口から大きな光の帯が放たれた。
その光の中でワニは木っ端微塵に粉砕された。

「…すごい」

「やったわ!!」
キリコがガッツポーズをとり喜んだ。ノスタルジアが銃の変化を解き翼をばたつかせた。
「やれやれだわ。パワーは十分ではなかったわよ」
光が無くなると小さなワニがいた。

「これが本体ね!こんな小さいなら踏み潰してやるわ!」
キリコはズカズカと歩きワニの前に立った。