8.死神の棲む街

「おかしいぞ!頭が再生してやがる!確かに斬ったはずだ!!」
死神の手鉤が振り下ろされるがシュクレンは体を捻り回避する。だが足が縛られている逆さ吊り状態では圧倒的に不利な状況に変わりはなかった。
「シュクレン!何とか縄を切れ!!」
クロウの指示にロープを切ろうと試みるが死神の攻撃を防ぐだけで精一杯だった。
「このままじゃジリ貧だぜ!」
徐々に死神の攻撃の速度が増し追い込まれていく。
「ごめんね…ごめんね…」
腕、肩に攻撃がヒットしていく。
「あ…がっ!」
衣装が破れ肌が露出していくにつれて出血を伴っていく。
「ちっ!装束を貫通してきやがったな!シュクレン!防御に徹しろ!どうもこっちの隙を見て攻撃してくるようだ。確実に防御して奴の攻撃の隙をつくんだ!!」
「うん…わかった」
クロウの言葉に頷いたが死神の攻撃は激しさを増し体が大きく振られる。
そして手鉤が大鎌の柄に引っ掛けられると体ごと引っ張られ空いた脇腹に強烈な一撃を受けた。
「げ、はっ!」
息が止まり、体がよじれる。猛烈な痛みが体の中まで浸透していく。

「シュクレン!動きを止めるな!!」

死神の刃がシュクレンの首筋に迫った瞬間、突然軌道が外れて死神が倒れた。

カイトが死神の足元に飛びついたのだ。

「もう…やめて!お願いだから!」
カイトの喉が張り裂けてしまうような叫びが響くと死神の手鉤が小さく震え出す。そして船が崩れて海が消滅し、最初に居た部屋に戻る。
それと同時にシュクレンを縛っていたロープも消滅し解放されて床に叩き落とされた。

「つっ…!」
すぐに立ち上がり死神に大鎌を叩きつける。
大鎌はいとも容易く死神の体を切り裂き胴体を真っ二つに両断した。

「やめて!!」
瀕死のカイトが叫ぶと死神が再び立ち上がり刃を構える。
「そうか、わかったぜ!シュクレン!本当の不浄はあの少年だ。あいつを斬れ!」
「…カイトが?」
「ああ、この死神には実体がない。つまりだ。あの少年が作り出した妄想だ。そしてあの少年があの死神野郎に殺されるとセカイが巻き戻る!」
「巻き戻る…?」
カイトを見ると小さく震えており、その表情は恐怖で歪んでいた。蒼白な顔は赤い血で染まってはいたが、目はギラギラと異様な光を放っていた。

「僕は…どうして…しまったんだろう…」
カイトがゆらりと立ち上がると死神は大きく両手を広げた後手鉤を構えた。
「シュクレン!戸惑うな!躊躇うな!これがお前の“仕事”なんだからな!」
クロウの言葉に頷くと大鎌を構える。
「…うん、わかった」

「カァーッ!少年!思い出せ!!自分の死を受け入れろ!!」
「自分の…死を…?」
一瞬だけカイトは微笑んだ。そして、何かを投げつけるように手を振ると死神が飛びかかってくる。
大鎌を持つシュクレンの両手に力が込められ軸足を捻る。