何日か前から歯に違和感を覚えていた。奥歯の内側…つまりは喉側の方だ。
何となく『いずい 』感じがする。
舌でホガホガと弄ってみるが特に何もなかったが歯の歯周ポケット？に何か詰まってる感じがした。
こともあろうに車で走行しているのでとりあえず下の先でホガホガと弄る程度で留めていたが、交差点の信号機が赤になったタイミングで指を口の中へ入れてみた。
微妙に爪先になにか繊維質なものが感じ取れる。これはなんかの食いカスだ。間違いない。その正体は何かと推測してみたが心当たりがない。繊維質なものなんて食べた記憶が無い。ここ最近は猛暑にて食欲が失せてゼリー状の物ばかり食べていたからだ。まるでカブトムシだ。
赤信号で止まる度に舌と指を駆使したが一向に取れる気配がない。その内車内で爪楊枝を探してみるが見つからない。普段はコンビニの割り箸に添付されてて使わないまま廃棄していたことを悔いた。時には指に刺さり憤慨したこともあった。
これは爪楊枝の呪いだ。必要な時に出てこない。
私は何とかしてこの奥歯の内側に挟まった繊維質の何かを取り除きたいという強い願望を持つようになっていた。とてもじゃないが指先だけではあまりにも太過ぎてキャッチ出来ないのだ。
細くて短いものを探したが爪楊枝がなければその代用がきくものなど存在してるはずがない。私は悩んでいた。どうしたらこの繊維質なナニかを取ることができるのか？
さっきまで考えていたことなど忘却の彼方へと消えてしまい私の頭の中は奥歯に挟まった繊維質なナニかに支配されていった。
赤信号で止まる度に口の中へ手を突っ込む私。ルームミラーに向かって大口を開けるが当然見えるわけがない。
仕方がないのでそのまま舌でホガホガしてたら先っぽが何やらピロピロしたものを引っかき出した。これは繊維質のナニかの先だ。ここを上手くキャッチして引っぱり出せばいいのだ。ひたすら顔を歪めてえっちらおっちら舌を駆使して少しずつ引き出す。だがすぐに限界を感じたので人指し指と親指を口の中へ突っ込みつまんだ。
ヌルヌルしてるが構わず引っ張り出すと奥歯からニュルニュルと出てきて5cm程の繊維質なナニかが出てきた。現物を見てもそれがナニかはわからない。ただ、猛烈な異臭を感じた。
とにかく凄まじくカビのような匂いがする。こんな悪臭を放つものが私の口の中へあったのだ。
あまりのショックにフロスを使うようになったが毎回隙間に入れたものの引き抜きに苦労している。いつかは一緒に歯も抜けそうだ。